今季初勝利のロッテ中森俊介…母が語っていた「おばあさん救出劇」「教育方針」「プロ入りの経緯」

初勝利をあげた中森俊介(C)共同通信社

26日の楽天戦でロッテ中森俊介(22)が今季初勝利を挙げた。

2020年ドラフト2位でロッテに入団。一軍デビューした昨季は13試合(2先発)で3勝2敗。3年目の今季はさらなる飛躍が期待されている。

日刊ゲンダイは中森が明石商3年秋、プロ入り直前に母・美幸さんを取材。そこで語られた中森の素顔とは。今季初勝利に際し、当時のインタビュー記事を公開する。(本文は2020年9月16日に掲載)

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進学か、それともプロか――。進路を決めかねていたといわれるドラフト1位候補、明石商(兵庫)の中森俊介(3年)が10日、プロ志望届を提出した。1年の夏から3季連続甲子園出場。昨年はチームを春夏連続4強に導いた右腕に対しては、プロもその進路に注目していた。8月の甲子園交流試合では群馬の桐生第一戦に先発。2失点で完投勝利を収めたにもかかわらず、「完封できればプロでできるという自信になる。そういう気持ちでマウンドに上がったが、9回2失点。まだまだ実力が足りない」と話していた。早くから大学進学が濃厚とされ、明大が獲得に熱心だったといわれる中、プロ志望届を出した裏に何があったのか。進学に未練はないか。母・美幸さんに話を聞いた。

――大学進学が濃厚とされていたが、なぜプロ志望届を出したのか。

「小さい頃からプロ野球選手を目指して、自分で計画を立ててやっていました。『(進路を)迷っている』とは言っていましたが、やはり、プロへの気持ちの方が強かったのだと思います」

――結論に至るまでどのような経緯があったのか。

「今月の頭くらいに『結局どうするん?』という話をしたら、『自分的には(プロに)挑戦してみたい』と。主人も、『大学は行きたいときに行ける。プロの世界は4年後だとどうなるか……。チャンスがあるときに行ってみたらどうか』と後押しをしました。それで本人も意思が固まったようです。それに、前々から明石商の狭間善徳監督に、『おまえは体がホンマ硬いし、大学よりも設備の整ったところで、良いトレーナーにケアしてもらいながら挑戦したらどうか』と言ってもらっていたこともあります」

――いくつかの大学、特に明大から熱烈オファーを受けたそうだが。

「私たちの方には来ませんでしたが、本人や狭間監督には話があったようですね。熱心に誘ってもらったようで、それで悩んだというのもあります」

――ご両親としては子供の進路について、大学とプロのどちらを望んでいたのか。

「正直、どちらでも構いませんでした。俊介が望むところに進んでほしいという思いだけです。私たちはそれを応援します」

――ドラフト1位候補の子供を持つ、中森家の教育方針とは。

「小さい頃から『プロに行きたい』と言うので、『それなら私生活と勉強はちゃんとやりなさい』と言ってきました。俊介も勉強は好きみたい。論理的にものを考える子なので、得意科目は数学らしいです。私たち夫婦は共働き。家には私の祖母も一緒に暮らしていますが、家事は家族全員の当番制にしているので、俊介も家のことなら全部できますよ。いつでもお嫁さんに出せます(笑い)」

――中学時代から成績優秀で、県内のどこの学校にも合格できたと聞きます。なぜ明石商を選んだのか。

「ええ……。まぁ、そうですね(笑い)。当時の進路相談では担任の先生から『明石商業で本当にいいのか。もっと上(進学校)を目指さないか』と何度も言われました。ですが、『プロになるためには』と、本人が逆算して考えたときに、明石商業に決めたようです。このときも私たち両親は迷うことなく、俊介の意思を尊重しました」

――大阪桐蔭からもスカウトされたという話がある。

「いえ、大阪桐蔭さんからはありませんよ(笑い)。報徳さんや神戸弘陵さんなどから声を掛けていただきましたが、明石商業の狭間監督の熱量は他校とまったく違っていた。大会や練習試合はもちろんですが、放課後の練習にも顔を出してくれるんです。だんだんと俊介も明石商業に興味を持ちはじめて、練習を見学に行って……」

――実家を離れ、下宿生活でした。

「あるとき、道の向こうから乳母車を押しながらこちらに向かって、ゆっくり歩いてくるお母さんがいたそうです。その横を高校生たちが自転車で通り過ぎていくのを見て、危ないなと思った俊介は(親子が自分のいる場所を)通過するまで自転車を降りて待っていた。そして会釈して部活に向かった。このお母さんが感激して学校にお礼のメールを送ってくれたので、それが監督にも伝わり、私も知ることになったんです。本人は普通のことをしているつもりなので、全く私には教えてくれません。明石はこっち(丹波篠山市)よりも断然都会なので、それまでの“当たり前”が通じず、『(周りは)知らん顔しているからビックリする』と、こぼしていました。そういえば、中学時代にも単車で倒れたおばあちゃんを助けたことがあったのですが、それも学校経由で伝わりましたね(笑い)。本当に教えてくれないんです」

――進学への心変わりの可能性はあるか。

「絶対にないと思います。もうプロの世界でやっていく覚悟ができたみたいなので。育成でも呼ばれたら行くんじゃないですか(笑い)」

(聞き手=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)

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日刊ゲンダイで毎年恒例の人気企画「ドラフト家庭の事情」(2020年版)では、ロッテから中森をピックアップ。そこで改めて美幸さんから語られた「衝撃の血統」とはーー。

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