【高校バスケ】九州大会は強豪・福岡勢を他県が苦しめ白熱の展開に!

6月15、16日の2日間にわたり、鹿児島県のサンアリーナせんだいほかにて「令和6年度全九州高等学校体育大会 第77回 全九州高等学校バスケットボール競技大会」(九州大会)が開催された。最終的に男子は福岡大附大濠(福岡)、女子は精華女(福岡)が優勝。夏に地元インターハイを控える福岡県勢が今年も強さを発揮したとはいえ、他県のチームも福岡県勢を大いに苦しめた大会となった。

福岡第一が逆転勝ちで決勝に進出も

福岡大附大濠が冷静に強さを発揮

男子は1回戦から熱戦が相次いだ。前年九州王者の福岡第一は、初戦で延岡学園(宮崎)と対戦。前半は相手の激しいディフェンスにミスが出る苦しい状況だったが、後半からギアを上げ、3Qで31‐4と突き放してそのまま逃げ切った。続く2回戦も、開催地の応援を背に奮闘する鹿児島工を振り切りベスト4に進出。そのほか、大濠、九州学院(熊本)、柳ヶ浦(大分)という昨年からの主力が多く残る3チームが準決勝に進出し、4強は3月の全九州春季選手権大会と同じ顔ぶれになった。

試合終盤までディフェンスの運動量が落ちない福岡第一の宮本兄弟

準決勝では、柳ヶ浦と福岡第一、大濠と九州学院が対戦。このうち創部初の決勝進出を目指す柳ヶ浦は、福岡第一相手に前半から互角の展開を演じた。昨年は全国不出場の悔しさを味わった柳ヶ浦だが、今年はキャプテンを務める#43ボディアン・ブーバカーブノワ、エースシューター#18山下凛生、ガードの#5塩谷泉ら、各ポジションに経験豊富な選手がそろう「勝負の年」(中村誠コーチ)。1年生に即戦力の#34ファデラ・ママドゥ(207cm)が加わって#43ブノワとタイムシェアできるようになったことも大きく、37‐33と福岡第一相手にリードして試合を折り返した。

柳ヶ浦の得点源の一人・山下は福岡県出身

だが、福岡第一も苦しい時間帯をディフェンスで我慢しながら、大きくは離されずに食らい付く。インサイドでは#34シー・ムサが体を張り、代わる代わる出てくる#43ブノワと#34ママドゥに対抗。試合終盤には疲労の色も濃かったが、井手口孝コーチの「ムサ、リバウンド1本頑張れ!」との励ましや、#39藤田悠暉らのリバウンドでのフォローで何とか持ちこたえる。そして、試合の後半にこそ強さを発揮する宮本聡&耀兄弟が、無尽蔵の体力で激しいディフェンスを仕掛け、柳ヶ浦のミスを誘った。結局、後半のスコアだけ見れば38‐22と福岡第一が優位に立ち、71‐59で逆転勝利を収めた。

高確率のジャンプシュートで九州学院を引っ張るキャプテン・津村壮亮

逆側の準決勝では、九州学院が「大人と子どものような、別格の強さだと思いますので、どこまでやれるかチャレンジしたい」(田中洋平コーチ)と大濠に挑んだものの、69‐103で完敗。こうして決勝は、今年も福岡同士の対決となった。その決勝戦では、立ち上がりこそスタメン起用となった宮本兄弟を起点に福岡第一が流れを奪ったが、大濠は#8渡邉伶音がインサイドやドライブで得点を量産し、1Qで22‐12とリード。その後、福岡第一に追い上げられる場面もあったが、3Qで再び立て直した福岡大附大濠が69‐54で勝利。九州大会を制し、インターハイの第1シードを手に入れた。

春先の交歓大会等と比較して、各々が落ち着いたプレーを見せていた福岡大附大濠。特別指定や代表活動でしばらくチームから離れていた#8渡邉も徐々にチームの動きに順応し始め、ケガでブランクのあった#14髙田将吾も復調しつつある。片峯聡太コーチは「これまで良くないときには個がバラバラの点になってしまうことが多かったんですが、徐々にその連なりができてきたと思います。ただ、まだまだ最低限ですし、たたみ掛けるような強さがまだないので、そこは苦難を乗り越えながら磨いていきたい」と話していた。

2年生になりフィジカルもアップした大濠・榎田は片峯コーチからの信頼も厚い

準決勝・決勝と小林が奮闘したが

逃げ切った精華女が栄冠獲得

女子で準決勝に勝ち上がってきたのは、福岡勢の精華女と東海大付福岡、長崎2位ながら慶誠や延岡学園を下した島原中央、3月の全九州春季選手権で3位だった小林の4チーム。

島原中央は長崎県2位でインターハイには出場しないが九州ベスト4の躍進を見せた

準決勝も白熱した展開になり、特に東海大付福岡と小林の試合は、最後まで勝負の分からない展開になった。互いに譲らぬ中で、最終的に流れを手にしたのは小林。前から当たる激しいディフェンスに加え、168cmのサイズでPGを務める#8古田千夏を起点に、#7桝田緋莉の3Pシュートや#4工藤吏紗のドライブなど、“5アウト”のオフェンスで東海大付福岡を翻弄し、80‐77で競り勝った。

準決勝で東海大付福岡に勝利し歓喜を爆発させる小林

惜しくも敗れた東海大付福岡は、1年時から経験を積んできた大黒柱の伊東友莉香が予選の直前に前十字じん帯断裂で戦線を離脱し、チーム作りを大きく見直さなければならなくなった。今大会はさらに2年生の#9東口紅愛もケガで出場時間が限られ、「得点源の2人が抜けている中で、ここ1本を決め切る力が必要だと痛感させられました」と宮﨑優介コーチ。ただ、「良い形で打てている場面はあったので、そこを決め切る強さをインターハイまでに身に付けていきたい」と収穫もあり、インターハイに向けて「福岡代表として、男女ほかの出場校に負けじと、うちも地元を沸かせられるように頑張りたいです」と意気込んでいた。

東海大付福岡はケガ人もいる中で2年生を中心に貴重な経験を積んだ

女子決勝戦は、精華女と小林の対決。1Q、精華女は司令塔の#5中釜光来が負傷退場するアクシデントに見舞われたが、エースの#4清藤優衣や、新人戦からのスタメン起用でブレイクしつつある#8宮崎陽向の活躍でリード。1Qを23‐9とすると、2Qもディフェンスから速攻に走って一時は20点以上のリードを奪った。

だが、小林も諦めない。18点ビハインドで入った後半、疲労はありつつも決死のディフェンスを仕掛け、#4工藤や#9橋元きららのシュートで怒とうの反撃。点差をみるみる縮め、4Q残り2分半には67‐67と試合を振り出しに戻した。そこから手に汗握る展開が続き、精華女は#4清藤の得点で抜け出そうとするが、小林も#7桝田が3Pシュートを決めて終了間際に同点に。ただ、残り5秒で「集中していてあまり覚えていないのですが(笑)、『行くしかない!』という気持ちでした」という#4清藤がシュートをねじ込み、最後は76‐72でタイムアップ。4Qだけで33点決めた小林の追い上げを振り切り、精華女が優勝を果たした。

試合終盤に値千金のシュートを決めて喜びをかみ締める精華女・清藤

苦しい大接戦を勝ち切った精華女。大上晴司コーチは「今まで困ったときに頼ってきた中釜のアクシデント(負傷退場)もあり、しかもプレスされたことで戸惑いがありました」と反省の弁を述べたが、「去年から経験を積んできた選手も多いので、県予選に続いて良くない試合を勝ち切れたことは評価できると思います」と話していた。ここでの収穫を持ち帰り、日本一を目標に地元開催でのインターハイに臨む構えだ。

一方、悔しさもありつつ今大会で大きな手応えを得た小林。橘裕コーチは「小林高校のスタイルとして自分たちに矢印を向けることを大事にしています。相手どうこうではなく、自分たちがどう在りたいのかを、バスケットのプレーとして表現できたと思います」と話していた。

写真・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

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