新社長/西松建設・細川雅一氏、挑戦と変革で現場力継承

創業150周年を迎えた節目の年に就任。時間外労働上限規制の適用や世界的な物価高騰など建設業を取り巻く環境が大きく変化する中、「挑戦、変革することが使命」と前を向く。西松建設のDNAと自負する築き上げてきた現場力を継承しながら、企業の持続的成長を目指す。
--就任の抱負を。
「創業150周年の節目の年に就任したことは意味がある。いくつもの危機を乗り越えられたのは、顧客と築いてきた信頼関係があったからだ。世界的な出来事が国境を越えタイムレスに影響する混迷の時代に、前を向いて挑戦・変革していくことが使命と考える。持続的に成長しながら企業価値を高め、社会やステークホルダーにとって価値あるものを提供していく」
--経営環境の現況と見通しについて。
「2025年3月期の連結業績は前期から微減となる減収減益の予想だが、24年度の期首から大型案件の受注も含めて状況は悪くない。国内市場を見ると、土木は防災・減災、国土強靱化対策を中心に今後数年は堅調だろう。建築は物価上昇の影響もあり、長期的な需要動向は不透明だが悲観的には捉えていない。海外はバングラデシュやフィリピンなどを対象に一定の利益が見込める政府開発援助(ODA)案件に注力する。新分野としてオーストラリアで環境関連などのPPP案件を視野に入れる。投資も含めて伊藤忠グループと積極的に連携していく」
「成長に向けた取り組みの一環で、土木分野は高速道路の床版取り換え技術を蓄積し、既設トンネルの覆工更新に関する技術も確立しつつある。建築は物流施設やデータセンターのほか、清掃工場など環境関連施設に注力する。中長期的には中高層木造の市場で当社の存在感を高めたい。提案型PPPによる事業展開も進める。利回りが厳しくなっている開発不動産は短期的に不透明だが、エリアを絞って取り組む。エネルギーや脱炭素関連のツールを持ってまちづくりなど関連事業にも関わっていきたい」
--働き方改革や生産性向上の取り組み状況は。
「時間外労働上限規制を順守するため、地道に職員の意識改革から進めてきた。現場ではDXの取り組みやICTの活用などにより、作業や移動にかかる時間削減の効果が少しずつ出ている。効率化を進める一方、豊富な経験や技術力を持つ人材の育成も不可欠。リスクを見定め、困難を乗り越える現場力は、西松建設が一番大事にしてきたDNAだ。省人化や遠隔化により現場のコミュニケーションが薄れる流れの中、伝承すべきものを明確にしながら、全社を挙げて考え備えていく」。
(6月26日就任)
(ほそかわ・まさかず)1987年横浜国立大学工学部卒、西松建設入社。2019年執行役員新規事業統括部長、21年同環境・エネルギー事業統括部長、23年常務執行役員地域環境ソリューション事業本部長、24年執行役員副社長などを経て現職。「全員経営」の考えを重視し「挑戦しないことがリスク」と攻めの姿勢を貫く。神奈川県出身、60歳。

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