【ビールを通じて感じる韓国㉕】東海岸の江陵でクラフトビール<後編> カンヌンブルワリー(Gangneung Brewery)での濃い時間

今回の記事は、「【ビールを通じて感じる韓国㉔】東海岸の江陵でクラフトビール<前編> ポドゥナムブルワリー(Budnamu Brewery)を再訪」の続きになります。

ポドゥナムブルワリーから江陵駅へ

ポドゥナムブルワリーを出た私は、徒歩で江陵駅へ向かいました。途中、観光名所と言われるところはほとんどなく、海岸からも離れてはいましたが、それでも初めて歩く道は新鮮で見どころもあり楽しめました。
歴史を感じる江陵七事堂周辺を見学し…

廃線路を利用した散歩道の月花(ウォルファ)通りを抜け…

幸い途中に坂道がほとんどなかったので、直線距離で3キロほどの距離を1時間ほどかけて最後まで歩きました。

江陵駅からバスに乗る

観光名所に行くことをメインで江陵を訪れると、方向が違うタップルームまで足を運ぶ時間は取れないかもしれません。でも、江陵駅の構内に、ポドゥナムブルワリーのポップアップストアがありました。瓶ビールなら駅で購入することができる可能性があります。

さて、江陵駅に着いたのは午後3時過ぎ。ここからどうするかは、3つの選択肢を考えていました。
➀KIXに乗ってソウルに帰る
翌日もソウルでの予定が決まっていたので、早めに戻ってゆっくりするのが一番楽…
➁夕方から開店する別のブルワリーのタップルームへ行く
駅から直線距離で約2キロ離れた場所にカンヌンブルワリー(강릉 브루어리・Gangneung Brewery)というブルワリーがあるようなので行ってみたいけれど、午後5時にならないと開かないので、次の機会に江陵で一泊してのほうがいいかも…
➂海岸方面などどこか観光名所へ向かう
主な観光名所は自転車で回ったことがありましたが、かなり前のことなのでもしバスの時間がうまく合えば再訪してみてもいいかも…

とりあえずバスの時間を確認してから結論を出そうと駅の前のバス乗り場へ行ってみると、観光地方面へのバスはもうないか、あっても最終バス。行っても帰るのが大変になる可能性が大きいのでまず却下しました。
続いてタップルーム方面へのバスの時間を確認していたら、ちょうどそれらしい番号のバスが! バスの本数が少ないので、これを逃すとタップルームへ行くという選択肢も捨てなくてはならなくなるかも…と慌てて乗ることを決めました。

カンヌンブルワリー(Gangneung Brewery)

バス停から歩く

バスに20分ほど乗って、地図上ではブルワリーから一番近いバス停に到着。団地の中にありました。

バス停を2つほど戻って、裏通りにあるカンヌンブルワリーの位置をまずは確認。まだ開店までに時間があったので、その周囲を歩いて雰囲気を味わったり、近くの大通りに出て桜を眺めたりして時間調整をしました。

外観と店内

開店の少し前に、カンヌンブルワリーに戻りました。

店内は広々としていて、右側に醸造設備が見えます。

BTSのファンだと思われた…

「B…のビールを飲みにきたのですか?」と出迎えてくれたのはオーナーの方。最初のB…のところがわからなかったら、持ってきてくれたのはiPad。翻訳機能を使って、聞かれたのは「BTSのビールを飲みにきたのですか?」だったとわかりました。以前にBTSのメンバー3人がここで醸造体験をしてビールを味わうロケをしたためにロケ地巡りの一環としてBTSファンが訪れることが多く、最初私もそのひとりと思われたようです。
ファンというわけでななかったのですが、オーナーの勧めに従ってBTSの3人が座ったという席を使わせてもらいました。

会話しながらビールなどを味わう

私が注文したのは、Sampler Beer 3 +Refind Rice WineというBTSのメンバーも味わったというセット。ビールはピルス(アルコール分5%)、ペールエール(アルコール分5%)、ブラックIPA(アルコール分7.5%)の3種類で、それに加えてアルコール分12%というマッコリの飲み比べができます。15000ウォン(約1650円)でした。ビールは全体的に、苦みが穏やかで優しい味わいでした。
ビールもよかったのですが、それ以上にゆずを使ったマッコリが爽やかな味わいでとても美味しかったです。(オーナー曰く、「日本のゆずも美味しいけれど、韓国のゆずもいいのがあります。」とのことです。)

BTSファンではなくビールを味わいに訪問したことがだんだんと伝わり、早い時間で他にお客さんがいなかったこともあり、かなりの部分を翻訳機能に頼りつつオーナーとの会話はずっと続きました。ブルワリーの特徴なども翻訳機能のおかげで聞いたことがきちんと理解できて、あまり予備知識がないまま訪問したのでとても助かりました。
そのほかにも「日本で美味しいと思うビールはどこか」「韓国ではどこに飲みに行ったか」など次々に質問されたり、まだ知らなかった韓国のブルワリーを教えてもらったり…ホームページなどのデータは、LINEで翻訳機能を含めたグループを作ってやり取りしました。

改めてカンヌンブルワリーとは…

カンヌンブルワリーは、自然の豊かな恵みをビールという形で伝えることを目標にしているブルワリーです。乾燥した柿、松葉、梨などの地元の材料から酵母を培養して、ビールやマッコリを造っています。日本だと日本酒メーカーがビールも造っているのはよくあることですが、韓国ではビールとマッコリが同じ醸造所で造られているのは珍しいそうです。ビールは缶、マッコリは瓶での販売をブルワリーでは行っていますが、外には流通しておらず、現地でなければ購入できません。
すべてのビールを野生酵母で造っているのは、韓国ではカンヌンブルワリーが唯一だそうです。日本では、鳥取にあるタルマーリーがビールを野生酵母だけで造っており、カンヌンブルワリーのオーナーもタルマーリーは2回訪問したことがあるそうです。

こんな珍しいブルワリーとは知らず、もう少しでここに寄らずにソウルに戻ってしまうところでした。

ゆっくりしたかったでのですが今回は日帰り。今日中にソウルに戻ることを伝えると、「タクシーをもう呼んでいいですか?」と聞かれお願いしました。帰り際に、缶ビール、ステッカー、コースター3枚を購入しようとしたら、コースターは「プレゼントします」ということでありがたく受け取りました。

まさかの待ち時間…

呼んでいただいたタクシーで再び江陵駅へ。バスは遠回りをしていましたが、タクシーは団地の中を抜ける近道を走ったので5分程度で到着しました。タクシー代も4900ウォン(約540円)と安く済みました。
あとはソウルに戻るだけ…と思っていたのですが、6時には駅に着いたのに、次のソウルへ戻るKTXは7時発ですでに満席! その次の8時半発も、優等席がわずかしか空いていなかったので、急いで31000ウォン(約3640円)で優等席を押さえました。バスターミナルまで行くことも考えましたが、場所が離れているので行ってバスも満席だったらさらに事態は悪化するのでやめて、2時間半待つことにしました。時間はあっても今さらどこか遠出してくる気にはまったくなれず、駅の構内で軽食を取ったり、ブラブラしたりして何とか時間をつぶしました。
事前の予約まではしないとしても、3時間前に江陵駅に一度来たのだからせめてその時に帰りの時刻と状況を確認してから次の行動に移ればよかったのですが、平日だったので混まないだろうと油断していました。うまく行動していれば、カンヌンブルワリーでもっと時間も取れたのに残念です。

出発30分前になって列車が入線し、ようやくホームへ行けたときにはかなりほっとしました。

優等席は1号車。個人画面付きで居心地のいい座席でした。初めてこの車両に乗ることができたので、今回の失敗もいい経験になったと思います。

最後にハプニングはありましたが、ソウルからの日帰りで江陵にある2か所のブルワリーを訪問することができて、とても充実した1日でした。どちらのブルワリーも地元の素材を生かしてビール醸造を行っていてました。そして、とても温かく丁寧に応対していただきました。これは、地方ならではだと感じました。
今回は少し駆け足になってしまったので、次回があれば江陵に泊まってもっとゆっくりビールを味わいたいと思います。
ソウルでもし1日以上時間ができたら、江陵まで足を延ばしてみてはいかがですか? ソウルとは違う景色が見えてくること請け合いです。ただし、交通の便がソウルとは全く違うので、行動はゆとりをもって計画的に…をお勧めします。

◎カンヌンブルワリー(강릉 브루어리・Gangneung Brewery)
所在地:Gangwon-do, Gangneung-si, Yulgokchogyo-gil 11beon-gil, 9 KR
営業時間:17:00~23:00
定休日:日曜

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています

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