【感染症ニュース】夏の感染症『手足口病』急増全国定点4.73 21府県で警報基準5.0を超える 医師「お子さんの脱水症状などに注意」

手洗いは流水と石けんで十分に

手足口病の患者が急増しています。国立感染症研究所の2024年第24週(6/10-16)速報データによると、手足口病の全国の定点当たり報告数は4.73。12週連続増加中で、前週(第23週)と比較すると約23%増加しています。都道府県別では群馬県9.94・石川県10.59・三重県10.91・大阪府7.54・兵庫県8.61・奈良県8.85・鹿児島県10.41などが多く、21の府県で警報基準である5.0を超えています。

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手足口病とは?

手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発しんが出る、ウイルスの感染によって起こる感染症です。子どもを中心に流行し、例年報告数の90%前後を5歳以下の乳幼児が占めています。病気の原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)で、その他コクサッキーウイルスA10などが原因になることがあります。

感染経路は?

感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染です。特にこの病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは、子どもたちの同士の生活距離が近く、濃厚な接触が生じやすい環境であることなどから、注意が必要です。また、乳幼児では手足口病の原因となるウイルスに感染した経験がない者の割合が高いため、感染した子どもの多くが発病します。

主な症状は?

感染してから3〜5日後に、口の中、手のひら、足底や足背などに2〜3mmの水疱性の発しんが出ます。発熱は約3分の1にみられますが、あまり高くならないことがほとんどであり、高熱が続くことは通常はなく、ほとんどの発病者は数日間のうちに治る病気です。治療のための特効薬はなく、対症療法になります。しかし、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症や、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状が出ることがあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「手足口病の患者報告数が、全国で急増しています。国立感染症研究所の調査では、CA6型・CA16型が検出されており、CA6型の流行がやや優勢です。CA16型は、口内や手足に2-3ミリほどの水疱性発疹が出現します。対して、CA6型による症状は、発疹が大きく、体幹部にも表れることがあり、発疹の部位によっては、痛みやかゆみを伴うこともあります。手足口病が流行すると、『水ぼうそう』の患者報告数が増えることがありますが、これは、CA6型による 手足口病の誤診の可能性も考えられます。医療関係者の方も知っておいて頂ければと思います。夏に流行する代表的な感染症の一つで、例年であれば7〜8月にピークを迎えますので、同属性ウイルスのヘルパンギーナと共にまだまだこれから増えていくのではないかと予測しています。手足口病・ヘルパンギーナ罹患時に、気がかりなのは、口腔内の水疱が破れ、痛みが伴うことです。お子さんは、痛みが生じることで、食事や水分補給を嫌がる場合もあります。夏に向けて気温が高くなる時期ですので、脱水症状を起こさないよう、保護者や周りの方は、じゅうぶん気を付けてあげてください」としています。

「ヘルパンギーナ」も同じ属性のウイルスが原因の感染症

また、医療機関で「ヘルパンギーナ」という病名で診断されることがあります。このヘルパンギーナも手足口病と同じエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって起こる感染症です。ヘルパンギーナの患者数も現在増加中です。安井医師は「手足口病もヘルパンギーナの主な違いは症状で、手足口病は手足と口に水疱ができますが、ヘルパンギーナは口の中だけに水泡ができます。かつては原因がよくわからなかったので、症状で分類されています。症状は違いますが、原因となるウイルスの属性は同じです」としています。

手足口病の予防は?

手足口病には有効なワクチンはなく、発病を予防できる薬もありません。治った後も比較的長い期間、便などからウイルスが排泄されることがあり、小さな子どものおむつの交換などから感染することがあります。一般的な感染対策は、手洗いをしっかりすることと、排泄物を適切に処理することです。保育施設などの乳幼児の集団生活では、子どもも職員も流水と石けんで十分に手を洗うことが重要です。また、タオルの共用はしてはいけません。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第24週、ヘルパンギーナとは
厚生労働省:手足口病に関するQ&A

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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