普段の爽やかさはどこへ? 松坂桃李や妻夫木聡も…漫画実写化作品で“ダークヒーロー”を演じたイケメン俳優

『不能犯』BD豪華版 [Blu-ray]( エイベックス・ピクチャーズ)

独自の正義感や価値観から悪と対峙する“ダークヒーロー”は、正統派ヒーローとは異なる妖しい魅力で人々を魅了する。数々の作品に登場するダークヒーローだが、なかには普段のさわやかな雰囲気から一変、闇を纏った意外な姿で彼らを演じた俳優も。今回は、普段のイメージからは考えられない、“ダークヒーロー”役に抜擢された俳優たちについて見ていこう。

■怪演によってより黒く生まれ変わった犯罪の天才!『不能犯』松坂桃李

2013年から『グランドジャンプ』(集英社)で連載された『不能犯』は、原作:宮月新さんと作画:神崎裕也さんのタッグが贈るサスペンス作品だ。依頼を受けた相手を完璧な手口で殺害する“不能犯”と呼ばれる男を中心に、彼が殺害しようとする人間たちを取り巻く環境や、それを追う刑事たちとの駆け引きが描かれていく。

本作の“ダークヒーロー”といえば、なんといってもタイトルにもなっている“不能犯”こと、主人公の宇相吹正(うそぶき・ただし)だろう。黒スーツを着こなす謎多き男なのだが、ひとたび依頼を受ければ卓越した心理操作で人々をコントロールしてしまう。

自身は手を下すことなく、人間を巧みに誘導することによってショック死や自殺に追い込む、あるいは非道な犯罪に手を染めさせるなど、あくまで間接的に人々を破滅の道に誘い込む手口は一般的な“殺し屋”とは異なる点だ。

本作はのちに実写版の映画、ドラマが展開されているのだが、本作を象徴する“不能犯”・宇相吹を演じたのが、俳優の松坂桃李さんだ。

松坂さんといえば特撮作品や大河ドラマなど、真面目で堅実な役柄が多いイメージなのだが、実写版を手掛けたプロデューサーは原作の宇相吹のビジュアルを見て、真っ先に松坂さんの配役を思いついたのだという。

原作では随所でコミカルな一面を見せる宇相吹だが、実写版ではこういった要素を撤廃し、“ダーク”な雰囲気がより強調されることとなった。

とくに、ターゲットに対して見せる松坂さんの“黒い笑み”は強烈。自身も「人生でここまで口角を上げたことはない」と述べており、その迫力は視聴者を圧倒してしまう。

立ち方一つとってもどこか“幽霊”のような不気味な雰囲気だったりと、より一層、“闇”を深く纏ったその姿はまさに実写版オリジナルといえるだろう。普段の爽やかなイメージから一変、怪演によって新たな“不能犯”像を作り上げた実力派俳優だ。

■よりイケメンに? クールに描かれる“妖怪人間”の姿『妖怪人間ベム』亀梨和也

1968年から放映されたテレビアニメ『妖怪人間ベム』は、人間になることを夢見る三人の“妖怪人間”たちの活躍を描いたホラーアクション作品だ。悪と戦う存在でありながらも妖怪人間という存在ゆえ、ときには人から迫害を受ける影の存在たちの苦悩や葛藤も描かれており、その重厚なテーマ性や緻密なストーリーからファンも多い作品である。

そんな本作だが、時を経て2011年に実写版ドラマが放送され、新たな妖怪人間たちのビジュアルも話題を呼んだ。なかでも原作と異なった“ダークヒーロー”像を確立したのが、妖怪人間の一人・ベムを演じた亀梨和也さんである。

アイドルグループ「KAT-TUN」のメンバーとしても有名な亀梨さんだが、本作では銀髪に黒いハットをかぶったスタイリッシュなビジュアルを披露している。

ドラマ版のベムはとにかくクールな一面が強調されており、仲間であるベラやベロに比べ口数も少ない。しかし、その根底には悪を許さない強い意志と優しさを秘めており、まさに“ダークヒーロー”といった立ち振る舞いで視聴者を虜にした。

原作アニメに比べるとかなり若めの印象を受けるドラマ版ベムだが、妖怪人間としての自身に悩んだり、他者に熱い思いを打ち明けるシーンがあったりと、より人間味の強い存在として描かれている。

ビジュアル面や演技はもちろん、亀梨さんは激しいアクションシーンにも挑戦しており、ときにはワイヤーやCGも駆使した迫力満点のシーンが展開された。演者の“イケメン”っぷりとキャラクターの持つ“闇”の一面が化学反応を起こした、見事な配役といえるだろう。

■絶妙の演技で再現される孤独に戦う少年の心…『どろろ』妻夫木聡

1967年から『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載された手塚治虫さんの『どろろ』は、主人公が数々の魑魅魍魎と戦いながら、奪い取られた自身の肉体を取り戻していくダークファンタジー作品だ。

2007年には同名の実写版映画が公開されているのだが、本作の主人公の一人であり、妖怪に48カ所の肉体を奪われた少年・百鬼丸を演じたのが妻夫木聡さんだ。

数々の映画やドラマに出演する妻夫木さんだが、普段演じる爽やかな配役から一変、魑魅魍魎に奪われた肉体を取り戻そうと奮闘する百鬼丸の無感情かつミステリアスな雰囲気を見事に表現している。

作中では妖怪を打ち倒し百鬼丸が肉体を取り戻す場面も描かれるのだが、その際には原作通り百鬼丸に苦痛が襲い掛かり、あまりの苦しさから悶絶するシーンも。妻夫木さんの迫真の演技は、百鬼丸に襲い掛かる苦痛の凄まじさをまざまざと伝えてくれる。

原作の百鬼丸が14歳ということから、映画版ではかなり大人びた雰囲気のキャラクターとして描かれたのだが、妻夫木さんの持つ格好良さと孤独に戦う百鬼丸のイメージが見事に融合し、殺伐とした世界を生きる新たな“ダークヒーロー”像を作り上げている。

もちろん相棒として活躍する柴咲コウさん演じるもう一人の主人公・どろろとの掛け合いも健在で、どろろとのやり取りを通じ徐々に人間味を取り戻していく百鬼丸の内面も、妻夫木さんは絶妙の演技で再現していた。

名作漫画の“ダークヒーロー”を圧倒的な実力によって具現化してみせた、実力派俳優といえるだろう。

ときに邪悪に、ときに孤独に……実写化された“ダークヒーロー”たちは原作漫画とは一味違うテイストに表現されたものも多い。俳優たちがスクリーンに描く新たな“ダークヒーロー”たちの活躍を、是非ご自身の目で確かめてみてほしい。

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