【6月27日付社説】ドローン特区/産業を大きく育てる好機だ

 福島ロボットテストフィールド(RTF、南相馬市)と、その周辺のロボット関連企業にとって、ほかの都道府県にはない新たな強みとなる。追い風を最大限に生かし、ドローン産業を本県の主要産業に育てていくことが重要だ。

 政府がきのう、規制緩和を地域限定で先行実施する「地域課題解決連携特区(連携絆特区)」に本県・長崎県を指定した。両県ではドローンのレベル4飛行と呼ばれる「有人地帯の目視外飛行」について、これまでルートごとに許可が必要だったのを、エリアごとの許可で可能とする。市街地などでのドローン配送の実用化につなげるのが狙いだ。

 RTF周辺ではこれまでも、ドローンを使った実証事業などが行われてきた。しかし、現行制度は、ドローンが飛行コースを変える度に国の許可を得なければならず、実用化にはそぐわない制度となっている。

 物流業では人手不足が深刻化しており、個別配送を効率化、省力化できるドローンへの期待は大きく、成長の見込まれる分野だ。今回の規制緩和により、物流での実用化に向けて、必要な技術や社会制度のより具体的な検証が可能となることの意義は大きい。

 県などは規制緩和を受けて、エリアごとの許可でも安全に飛行するために必要なルールの検討に着手する。具体的には、運用の時間帯や、ドローンが近くを飛行していることを光や音などで知らせる仕組みの必要性などが議論されるとみられる。

 規制緩和は飛行の安全性の担保が前提となるため、国の諮問会議は本年度中に安全対策を検討するよう求めている。ドローンに限らず、社会に大きな変革をもたらす装置などが登場する際には、そのルール策定が重要となる。例えば、自動車は事故の可能性をゼロにするのは難しいが、利便性の大きさから、安全確保のルールを定めながら普及が進められてきた。ドローンを巡っては、その役割の一端を本県が担う。安全確保に万全を期しながら、実用性の高いルールを打ち出してほしい。

 本県と一括で特区に指定された長崎県との連携も重要だ。本県にはドローンに関して技術面の知見が集まる一方、長崎県では、離島間の物流に長距離飛行の可能な機体が既に運用されており、地域社会でドローンを受け入れる際のノウハウには一日の長がある。双方の知見を活用し合うことで、ドローンを開発途上のインフラから、実際に社会に役立つ存在へと転換していくことが大切だ。

© 福島民友新聞株式会社