パリ市街から子供含むホームレス1万2500人超が追放…麻薬中毒者や売春婦にも「社会浄化」進行中【五輪現地発 パリは今日もクレージー】#4

パリのホームレスや移民のデモ(C)Telmo Pinto/NurPhoto/共同通信イメージズ

【五輪現地発 パリは今日もクレージー】#4

ボンジーア&ボンジュール! 今日もオリンピックのクレージーなネタをお届けするよ。

開幕まで1カ月、パリでは大会に向けた最終的な準備に大忙しだ。なんでもこの期間中には、32競技、329種目に出場する1万人以上の選手と1530万人の観光客がやってくるって言われているからね。みなさんはその陰で、多くのホームレスが街から追い出されているのをご存じだろうか?

昨年4月以降、パリと周辺の地域では、ホームレスのキャンプ村の解体や建物を不法占拠していた人たちの追放が激化しているんだ。大会の顔となるセーヌ川の橋の下にも多くの人が住んでいたんだけど、突然「洪水の危険があるから」との理由で追い払われたって話だ。それまで一度もそんなことを言われたことはなかったのにね。華やかなスポーツの祭典に、彼らはふさわしくないってわけだね。

その結果、過去13カ月で1万2500人以上がパリから放り出された。人数は前年に比べると2倍近くになったっていうから、オリンピックが理由だろうね。

問題なのは、代わりに住む場所や、その他の解決策を与えられることなく、彼らが追われたってことだ。ホームレス問題を根本的に解決するためには、パリのあるイル・ド・フランス地方に少なくとも7000戸、フランス全土で2万戸の住宅が必要だって言われているけど、パリ市役所は1000の緊急避難場所を提供しただけなんだ。

こうしたホームレス問題に取り組むNGO団体によると、追い払われた人たちの多くは移民や亡命希望者で、子どもたちもたくさん含まれているっていう話だ。また麻薬中毒者や売春を生業とする人に対しても警察がパリ追放を行っているけど、そのため、彼らが受けていた医療や社会復帰の支援から切り離されてしまった。このことを世界の医療団は「五輪期間中パリが可能な限り見栄えのいい姿」でいられるように「社会浄化」を行っていると強く非難している。「臭い物にはフタ」ってわけだね。

ところで、こうしたホームレスの中にはカメルーンからの移民が多い。フランスサッカーのスター選手エムバペもカメルーンにルーツを持つ。残念ながら五輪サッカーのオーバーエージ枠には入らないようだけど、もし出ていたら、どんな気持ちでプレーしたのだろうか。 (つづく)

(Ricardo Setyon/ジャーナリスト)

▽翻訳=利根川晶子(とねがわ・あきこ) 埼玉県出身。通訳・翻訳家。82年W杯を制したイタリア代表のMFタルデッリの雄叫びに魅せられ、89年からローマ在住。90年イタリアW杯を目の当たりにしながらセリアAに傾倒した。サッカー関連記事の取材・執筆、サッカー番組やイベントで翻訳・通訳を手がける。「カカから日本のサッカー少年へ73のメッセージ」「ゴールこそ、すべて スキラッチ自伝」「ザッケローニ 新たなる挑戦」など著書・訳書多数。

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