夜間こそ注意したい!熱中症はこうして防ぐ

毎年「今年の夏は暑い」と表現されがちですが、2024年夏も全国的に気温が高くなると気象庁が発表しています。
夏の熱中症対策は必須なので、皆さんも発症させないように意識しているかと思います。
熱中症といえば、炎天下での作業や運動による、職場や学校などで起こるとイメージすることが多いですが、日中だけではなく夜こそ注意が必要といわれています。
今回は夜間の熱中症について、またその対策について解説します。

熱中症の約4割が夜間や睡眠中に発生

熱中症は、日差しが強く気温が高い午後2時~5時に最も発生します。もちろんそれ以外の時間にも発生し、これまでの統計では熱中症の約4割は夜間や睡眠中に発生しています。
夜間は外気温が下がり、日差しもないため、日中よりも体感温度は下がります。しかし、夜間といっても近年は熱帯夜も多く、エアコンをつけない場合、思った以上に室内に熱がこもるため、体温の上昇を引き起こします。昨今電気代が上がり、節電のためにエアコンをつけずに寝る、電源オフのタイマーをかけて寝るなどする方も多いですが、室内の温度が上昇するため、熱中症を引き起こす可能性が高まります。

夜間の熱中症に注意が必要な理由

熱中症の症状にはⅠ度からⅢ度に分類されます。

●Ⅰ度(軽症):意識障害を認めない
めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返り
⇒通常は現場で対応可能。冷所で安静。体表冷却、経口的に水分摂取・Na補給
●Ⅱ度(中等度):医療機関へ
頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下
⇒医療機関での診療が必要。体温管理や安静、経口摂取できない場合は点滴にて水分・Na補給
●Ⅲ度(重症):入院加療
中枢神経障害(意識障害)、けいれん、肝・腎機能障害、血液凝固異常
⇒入院加療(場合によっては集中治療)が必要。体温管理、呼吸や循環管理

熱中症Ⅰ度の症状は、日中に発生した場合は気づくことができますが、睡眠中はこれらの症状を自覚することが難しく、知らず知らずのうちに重症化してしまうため、夜間の熱中症は非常に危険です。

睡眠中の脱水が危険!

ここ最近の夏は暑いので、皆さん日中は水分補給を意識的にされていますが、睡眠中の脱水にも注意が必要です。

私たち人間は尿や汗、呼吸などを通じて1日あたり約2.5Lも水分を排出しています。
そのうち、睡眠中に失う水分量は500mlにも及び、想像以上に水分を失っています(約8時間睡眠、約29℃の環境)。
発汗は体温上昇を抑える機能として非常に重要な役割を担っていますが、睡眠中は水分補給をすることはできず、排出のみの状態となるため、脱水症状が起きやすくなるということです。
脱水がどんどん進むと血液がドロドロの状態になり、流れが悪くなります。さらにひどくなると血管内で詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞に繋がる可能性もあるため、非常に注意が必要です。

また、特に環境の影響を受けやすい、乳幼児や高齢者は熱中症にかかりやすいといわれています。

●乳幼児:汗腺や体温調節機能が未熟のため、体温が上昇しやすい
●高齢者:体温調節機能が低下し、暑さを感じにくい。発汗量や血液量の調節が難しくなる。体内の水分量が少ない

夜間の熱中症対策

熱中症は高温多湿な環境に長くいることで、体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温調節機能がうまくできなくなり、体内に熱がこもる状態になる状態を指します。
そのため、高温多湿な環境を避け、体内の水分や塩分バランスを崩さないようにすることが最も重要です。
電気代が高騰してきており、エアコンを極力使わずに過ごしたいと考える方も多いかもしれませんが、熱中症を発症し入院することになると、電気代以上に医療費がかかる場合があります。
1泊2日入院の比較的軽症だった場合でみると、約26,000円(医療費3割負担)となります。より重症になると医療費が膨らむため、自己負担額も当然増えます。
寝苦しい環境に耐えた末、熱中症にもかかり入院しなければならない状態になるのは、身体にとっても大きなストレスになるので、夏はエアコン以外で節電するようにしましょう。

室内の環境

・ 天気予報をチェックし熱帯夜の日は特に注意する
・ 室温が28℃より高くならないように室温管理する
・ 遮光カーテンやすだれなどで窓からの熱を防ぐ
・ 換気扇を使用し室内の空気を循環させる

衣服などの対策

・ 通気性や吸湿性、速乾性のある衣服を着用する
・ 保冷剤や冷たいタオルなどで身体を冷やす

水分補給

・ 睡眠前にコップ1杯程度の水を飲む(飲みすぎると夜間尿意で起きてしまうため注意)
・ 睡眠前の水分摂取に抵抗がある場合は、水ゼリー(飲むゼリー)で水分補給する
・ お茶やコーヒーなどカフェインが入った飲み物やお酒は利尿作用があるため、水分補給にならないため避ける
・ 枕元に水分を置き、夜間目が覚めた時に水分補給をする
・ 明らかに多量の汗をかいている場合は、塩分もしっかり補給する

やっておきたい対策

・ 筋肉量が減ると水分量も減るため、運動習慣を身につける(筋肉の細胞に水分をため込む性質があるため)
・ 睡眠不足は熱中症のリスクを高めるため、日頃から睡眠をしっかりとるようにしておく

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<参考>
・ 気象庁「季節予報解説資料」
・ 熱中症予防情報サイト「熱中症対策シンポジウム」
・ 厚生労働省「職場のあんぜんサイト:熱中症」
・ 国土交通省「「健康のため水を飲もう」推進運動」
・ 大塚製薬「ポカリスエット公式サイト」
・ 紅粉美涼、中井寿雄「高齢者の熱中症による入院費用とエアコンの電気料金を用いたエアコン使用促進方法の検討」(『日本災害医学会雑誌』27巻(2022年)1号)

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