カフェで憩い加工品販売…岐阜・高山の木戸脇果樹園が直営店開設 先代が育てた木活用、空間広々

木戸脇果樹園オーチャードハウスの外観=高山市国府町今

 岐阜県高山市国府町の木戸脇果樹園(木戸脇靖代表)は、同町今にカフェと果実の加工品の販売所を兼ねた「オーチャードハウス」を今月1日にオープンし、地域住民の憩いの場になっている。建物は、林業を営み昨年6月1日に88歳で他界した木戸脇さんの父親で先代の進さんが町内の山で育てた木を使った。一歩足を踏み入れると、ほのかに木の香りが漂う、あたたかみのある空間が広がっている。

 同園はリンゴを中心に栽培。加工品を販売する直営店を建てる構想は約30年前からあり、進さんの孫で靖さんの息子翔平さん(34)が県外の就職先から実家に戻ったことをきっかけに約3年前から、動き始めた。

 林業を営んでいた進さんが育てた山の木を使って建築したいと考えた翔平さんは、木造建築などを手がけるオークヴィレッジ(同市)の木を生かした無垢(むく)の雰囲気に直感的に引かれ、建築を依頼。翔平さんと同社の設計担当者は、思い描く建物を造るため細部にまでこだわり、木造2階建て約145平方メートルの建物が約半年の工事を経て完成した。 室内は壁や天井、床がすべて木で、ぬくもりを感じる空間が広がる。柱にヒノキを使用したほか、梁(はり)や床の材料となったスギやアカマツは、進さんの育てた木を切り出したものだ。柱や梁を最小限に抑えることで、シンプルで開放感のある広々とした空間を実現した。

 ハウスには、自慢の飛騨リンゴをふんだんに使った「あっぷるジャム(580円)」や、素材の味が引き立つ「りんごジュース(980円)」が並ぶ。地元民から「お茶とか飲める場所がほしい」と声を受け、カフェスペースも作った。

 ハウスのオープン日は、進さんの命日の6月1日とした。オーチャードハウスの名は母親の珠美さんが命名したと語る翔平さんは、「森づくりにこだわっていた祖父の思いを形にしてあげられて良かった。落ち着いた空間を楽しんでほしい」とほほ笑んだ。

木で作られ、開放感のある空間が広がる室内=同、木戸脇果樹園オーチャードハウス

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