性的暴行容疑で逮捕の“関西検察のエース”は森友事件全員不起訴時の検事正だった

元大阪地検検事正の北川健太郎容疑者(C)共同通信社

“ケンちゃん”逮捕の報に検察内外で激震が走った。大阪地方検察庁の元検事正で弁護士の北川健太郎容疑者(64)のあだ名だ。準強制性交の疑いで25日、大阪高等検察庁に逮捕された。東大や京大出身者が多い検察内で金沢大学卒業後に任官し、西日本検察の要職を歴任。最後は大阪地検のトップ、検事正で退官した“関西検察のエース”だけに、逮捕の知らせは驚きをもって受け止められた。

■財務官僚の背任も立件されるのでは…淡い期待を抱いた

ケンちゃんの“女性問題”というと思い出すエピソードがある。高知地方検察庁のナンバー2、次席検事から大阪へ戻る転出前に、地元の担当記者たちが送別の宴を催した。彼は単身赴任だったが、引っ越しを手伝うため妻が高知を訪れていた。彼は妻を連れて送別会に出席したが、会場で某民放の女性記者と親しげな様子を見せた。妻はその場では何も言わなかったが、翌日、高級ブランドバッグのリストを示す。彼に選択の余地はなく、「えらい高くついた」と周囲にこぼしたという。

このエピソードを「だから女性問題を起こす」と捉えることもできるだろうが、周囲はむしろ「妻の面前で脇の甘さを見せるアホ(関西的な意味で)なおっさん」と捉えていたように思う。

より重要なエピソードは、北川容疑者が高知地検次席として高知県庁の不正融資事件の捜査を指揮し、当時の副知事を背任罪で起訴したことだろう。公務員を背任で立件した事例は少ない。その彼が2018年2月、大阪地検検事正として着任した。当時は大阪地検特捜部が森友事件の背任・公文書改ざん捜査の真っただ中だ。公務員の背任を立件した実績のある彼が森友捜査の最高責任者となったことで、財務官僚の背任も立件されるのではないかと、私は淡い期待を抱いた。

実際、当時の捜査は立件に前向きだと感じられたが、5月半ばから急に北川検事正の様子が不機嫌になった。やがて5月末日、全員不起訴の判断に。それまでも東京の本省サイドから大阪に捜査の早期収束を求める圧力があると聞いていたから、そんな事情があるのだろうと推測した。

■モヤモヤしたものが漂う…

今回の逮捕容疑となった性的暴行の事案は、大阪の検事正在任時のことだという。森友事件で検察審査会から「不起訴不当」の議決を受け、再捜査で再び全員不起訴とした時期に近いという見方もある。それが事案と関係あるのかどうかはわからないが……検察当局は逮捕容疑の事実をほとんど明らかにしていない。

折しも鹿児島県警で、本部長が身内の不祥事をもみ消したと内部告発した元幹部が逮捕されたばかりだ。それだけに、何だかモヤモヤしたものが漂う。

(相澤冬樹/ジャーナリスト)

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■北川元検事正官舎で性的暴行か

元大阪地検検事正で弁護士の北川健太郎容疑者(64)が準強制性交容疑で逮捕された事件で、検察当局が明らかにしていない逮捕容疑が、検事正在任当時、酒に酔った状態の部下の女性に性的暴行を加えていた疑いであることがわかった。場所は自身が使用していた大阪市内の官舎だったという。

一方、北川容疑者が社外取締役を務めるベルトコンベヤー大手のNCホールディングスは26日、定時株主総会の議案から、北川容疑者を取締役に再任する案を撤回すると発表した。

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