「安全に楽しく車中泊」 上富田の有志グループが内閣府から表彰、和歌山県

車中泊体験を繰り返した幾島浩恵さん。持っているのは取り組みを通じて制作した風呂敷

 和歌山県上富田町などで活動する有志グループ「出張!ふれあいルーム」は、災害時の車中避難や車中泊の可能性を模索し、さまざまな用途に使える防災用の風呂敷を作った。車中泊の体験を含む1年間の取り組みが楽しく防災の輪を広げたとして、内閣府などが手がける「防災教育チャレンジプラン」で優秀賞を受賞した。

 災害時の車中避難・車中泊は、エコノミークラス症候群など身体への影響が生じる可能性があるため、推奨はされていない。一方で「避難所に入りきらない」「プライバシーを確保したい」などの理由で、車中避難・車中泊を選ぶ人もいる。

 ふれあいルームの代表で、防災士の幾島浩恵さん(55)=上富田町朝来=は安全な環境を保ち続ければ、災害時の車中避難や車中泊は可能ではないかと、検証を始めた。メンバーに呼びかけて1年間、各自が1泊の車中泊を月1回以上続けた。大人が学ぶ「紀州くちくまの熱中小学校」で幾島さんが部長を務める「みんなでやればこわくないクラブ」の部員で体験した人もいたという。

 体験中は参加者同士がLINE(ライン)でやりとりをし、注意点や、どんな物が使えるかを共有した。睡眠や食事、トイレも車内で体験した。また、車中泊を一緒に体験する仲間を全国に募った。

 取り組みを通じ、グループは、1メートル四方の「命を守る車中風呂敷」を制作した。目盛りを付けていて簡易的なメジャーになるほか、カーテンやトイレ時のスカートなどにも使えるという。熊野高校(上富田町)が普及に取り組む、救急救命用に患者のプライバシーを保護する「AEDシート」のアイデアを参考にした。

■内閣府から表彰

 一連の取り組みは、2023年度の「防災教育チャレンジプラン」で優秀賞を受賞した。

 車中泊の方法を具体化しようとする姿勢や、オンラインを活用した車中泊の自主勉強会の開催などの取り組みが評価された。

 23年度の防災教育チャレンジプランは、実践団体に採択された11団体のうち、大賞1団体、優秀賞2団体、特別賞2団体が選ばれた。

 幾島さんは「受賞はうれしい。車中避難・車中泊を推奨しているわけではなく、危ない点を把握し、安全に過ごすために今のうちから準備しておこうという呼びかけになればいい」と話している。

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