突然の「ひりひり、ちくちく」帯状疱疹にご用心 過労、ストレスで免疫低下

「帯状疱疹ウイルスの増力をいかに早く抑えるかが治療の鍵」と強調する小西医師(京都市下京区・小西皮膚科クリニック)

 発疹や水疱(すいほう)が現れ、ちくちくした痛みやかゆみが出る帯状疱疹(たいじょうほうしん)。水ぼうそうウイルスを持っていれば誰でも発症する可能性があり、治療が遅れると、神経痛やまひなど後遺症のリスクもあるそうです。専門医や実際にかかった人に治療法や症状を尋ねると、この病気の怖さが見えてきました。

 「いかに早くウイルスの増殖を抑えるかが鍵」と断言するのは、京都市立病院(中京区)で22年勤務し、2017年に下京区で皮膚科クリニックを開業した小西啓介医師(64)。勤務医時代は年間100人以上の帯状疱疹の患者を診てきた。

 子どもの頃にかかった水ぼうそうウイルスは、普段は神経の奥に潜んでいるが、過労やストレス、病気などで免疫力が落ちた時に再発生する。それが帯状発疹の正体だ。50歳から感染リスクが大きく高まり、3人に1人はかかると言われている。

 発疹や水疱が現れる1~2週間前からひりひり、ちくちくした痛みが現れることがある。小西医師は「前兆もなく痛みが出てきたら帯状疱疹を疑ってすぐ受診してほしい」と呼び掛ける。治療法は抗ウイルス薬を1週間服薬することだが、飲み始めるのが早いほど、神経の損傷が抑えられ、重症化を防げるからだ。

 帯状疱疹自体は命に関わらないが、怖いのは後遺症。損傷した神経は元に戻らないため、痛みが長く残ってしまうリスクがある。痛みは記憶しやすい傾向が高く、痛みがあれば我慢せずに鎮痛剤を飲むことが重要という。

 小西医師は、抗ウイルス剤を処方した後、2、3日後に再診し、痛みが緩和していなければ鎮痛剤を増やし、ひどければペインクリニックを紹介している。「初期に痛みを抑えることが肝心」と強調する。

 加えて、発疹が出る部位にも要注意とする。腹部や足に出て、運動神経が損傷した場合、腹部がふくれたり、こけやすくなったりすることがある。目や耳の周りに出ると失明や難聴につながったり、平衡感覚がなくなって立てなくなるケースもあるという。

 同院では、新型コロナウイルス禍後、帯状疱疹の患者が以前より増えているという。小西医師は「コロナの感染やワクチンとの因果関係は分からないが、実感的には増えた」と明かす。

 ちなみに、小西医師によると、四谷怪談のお岩さんの目が大きく腫れている原因も帯状疱疹ではないかという。「夫にうとまれた心労からでしょうね」と想像する。帯状疱疹の原因は過労やストレス、病気などの体調不良。「栄養のある食事、規則正しい生活、ストレス発散。かからないことが一番重要です」

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