「磯釣りはほとんどの方がライフジャケットを着けているがアユ釣りは…」水深の錯覚、川底の変化、流される要因は様々 水難事故を防ぐには

6月1日、高知県内の多くの河川で解禁されたアユ漁。県内外からたくさんの人が訪れる高知の夏の代表的なレジャーですが、毎年のように釣り人が流される事故が発生しています。27日は、アユ漁をはじめ、水のレジャーを楽しむために気を付けたいポイントについてお伝えします。

県内では5月半ばに新荘川など3つの河川で、6月1日には仁淀川や奈半利川など多くの河川でアユ漁が解禁されました。美しい渓流の風景と美しいアユに魅せられたたくさんの釣り人が毎年、大勢訪れています。

■愛媛から 「こちらについたのが6時くらいですね。山がきれいで自然が豊かで水がきれいですからアユがおいしいですね」

そんなアユ釣りですが、毎年のように起きているのが釣り中の水難事故です。県警によりますと2023年、川で起きた釣りに絡む事故は7件で、4人が亡くなりました。アユ釣り中とみられる事故がほとんどです。

なぜ、アユ釣り中に事故が起きるのか?その要因を仁淀川漁協の岡崎裕也(おかざき・ひろや)理事に伺いました。

こちらは水質が良く、透き通る水で知られる仁淀川。水中の様子や川底の石まで良く見えますが、この透明度が時に命取りになるということです。

■仁淀川漁協 岡崎裕也 理事 「水がきれいな川は思った以上に水深があるという判断をしてもらいたいです。透き通って透明度が高いほど水深の錯覚があるので、そこで慌てず、焦らず水に入るというのが大切だと思います」

こちらの場所、岸からは深いようには見えませんが実際に入って測ってみると・・・およそ50cm、大人の膝くらいの深さです。

きれいな水と光の屈折で目測を誤って思わず深みに入り、パニックになってしまうことがあるといいます。

■野中麟太郎 記者 「実際歩いてみると常に膝を押されているような感覚で、人の助けがないと初心者は歩くことすら難しいと思いました」

また、「川の変化」にも注意が必要です。川底の地形は水流によって毎年変化していて、去年浅かった場所が今年も浅いとは限らないといいます。川の中を移動する際は自身の経験にとらわれず、川底の変化に気を付けてほしいと岡崎さんは話します。

■仁淀川漁協 岡崎裕也 理事 「増水することによって川底の石が動くということは、頭の中に入れておかないといけない。浅いところが深くなったり、深いところが浅くなったり、流れが右岸のほうに押し当ててたのが左岸に押し当てたり、流れの変化は増水するごとに変わるということを頭に入れておいていただきたい」

それでも、万が一流されてしまった際には落ち着いて行動することが重要だといいます。

■仁淀川漁協 岡崎裕也 理事 「アユを入れるために必ず浮くようになっている」

「これに泳いだときに足が絡む、ロープに足を取られて全く身動きとれない泳げない状態になる。これもトラブルの原因」

「パニックになったら何をしていいかわからなくなるということがある、それが一番怖い。『焦らない』、『パニックにならない』ということが重要だと思います」

次に、アユ釣りを安全に楽しむためのライフジャケットについて、高知市の釣具店に聞きました。

川に入るため、体が浮いてしまったり、道具を取り出しにくくなったりと、海での釣りに比べて、アユ釣りでの着用率は低いということです。

■フィッシングハヤシ 中平健正さん 「磯釣りの場合はライフジャケットを着用するのが普通という世界、ほとんど全ての方がライフジャケットを着けてます。ところがアユの場合は炎天下ということと、水の中に入って釣ることが多いので救命具という概念が本当にない」

こうした中、釣り具メーカーは数年前からいろいろなタイプのアユ釣り向けライフジャケットを販売していて、例えばこちらは非常にコンパクトなのが特徴です。

■フィッシングハヤシ 中平建正さん 「緊急時にこのコードを引っ張ると浮力体が出るので、それに抱きつくような形」

「かさばりませんし、個人的にはこれを一番気に入って3年ぐらい前から使っています」

他にも、首に巻くタイプやベストの下に着るタイプもあるということです。

自身の命を守るために、ぜひ、ライフジャケットの着用を検討してください。

ここからは取材をした野中記者の解説です。川での水深の錯覚、川底の変化、流される要因は様々ですね。

■野中麟太郎 記者 「実際川に入ってみると、思ったよりも水流が早くて、まっすぐ歩くですら困難でした。そして、もし流されてしまった場合、無理をして泳ごうとしない、『浮いたまま』流れに身を任せるということが重要だといいます」

「また、こちらの『引き船』という鮎を入れておくための容器の水を抜いて抱えることで、緊急の救命具代わりになるということです」

アユ釣りでのライフジャケットの着用が浸透していないというのも課題ですね。

■野中麟太郎 記者 「VTRで紹介した小型のもの以外にも例えば丈を短くすることで釣りの邪魔にならないタイプのものなど、メーカーも様々な商品を開発していますので、ひとりひとりの釣りのスタイルに合わせた選択ができると思います」

「また、海上保安庁によりますと海では釣り中に転落して救助された人のうち、ライフジャケットを着用していた人の生存率が着用していなかった人よりも1割以上高かった(2018~2022年)というデータもありますし、ライフジャケットの大切さを改めて考えてもらいたいと思います」

ここまではアユ釣りについてお伝えしてきましたが、どんな水のレジャーにも危険はつきものですよね。

■野中麟太郎 記者 「レジャーを楽しむ前に危険な場所を知ることができるマップも作られています」

「こちらのマップは高知河川国道事務所が作成したもので、エリアごとの地形や危険な場所がイラストで紹介されています」

「無料で配布されているほか、高知河川国道事務所のホームページでも公開されていますので、遊びに行かれる前に、ぜひ確認してみてください」

最後に、県警に水難事故防止のための3つのポイントを聞きました。

■高知県警地域課 松下恭一 課長 「夏の時期を迎えると多くの川で盛んに釣りが行われますが、毎年のように水の事故が発生しており、不幸にも亡くなられる方もいます。これから水のレジャーの時期を迎えますが、特に次の3点に気を付けてほしいと思います」

「1点目はライフジャケットの着用です。ライフジャケットを着用していた場合、万が一水難に遭われた場合でも救助される確率は格段に高くなります」

「2点目は特に釣り人へのお願いですが無理をしないということです。危ない場所へは入らない、天候不順や体調不良の際は自分の身を守るためにも釣りを中止するという判断をしていただきたいと思います」

「3点目は子どもから絶対に目を離さないということです。保護者同伴の場合でも子どもは想定外の行動をとることがあることを十分理解していただき、絶対に子どもから目を離さないようにお願いします」

ライフジャケットを着用して、無理せず、慌てず。子どもの水遊びは特に注意。釣りもレジャーも、高知が誇るアクティビティですので、これからのシーズン、安全に楽しみたいですね。

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