「陸上・日本選手権」(27日、デンカビッグスワンスタジアム)
今夏のパリ五輪選考会を兼ねて開幕した。男子400メートル障害予選では、初優勝と初の五輪出場を狙う豊田兼(21)=慶大=が全体トップの48秒62で1組1着となり、28日の決勝に進出した。女子1500メートル予選では3分59秒19の日本記録保持者で、21年東京五輪女子8位入賞の田中希実(ニューバランス)が4分8秒16の2組1着、初の日本選手権となった16歳のドルーリー朱瑛里(津山高)が4分16秒69の1組6着でともに決勝に進んだ。
圧巻のレース運びで五輪切符に前進した。豊田は195センチの長身を生かした伸びのある走りでライバルたちを引き離してゴール。全体1位のタイムで決勝に弾みをつけた。日本一を決める大会の独特の雰囲気に「予選が一番緊張する」と笑いながらも、「しっかりまとめるレースができた。力がついてきたのかな」と自信も口にした。
父がフランス出身で、母が日本人。父の母国開催となるパリ五輪は「すごく高い山に登る気持ち」と武者震いしながらも、「初めての五輪がなじみのあるフランスで開催されるのはモチベーション」と意欲の源にしている。
400メートル障害では既に参加標準記録の48秒70を突破しており、今大会で優勝すれば五輪代表に即時内定する。29日から始まる110メートル障害にもエントリーしており、こちらは参加標準記録13秒27の突破して優勝すると代表切符を得られる。
国内では兼任する選手がほとんどいない2種目での五輪挑戦。「新しいロールモデルを目指して、2種目両立したい」と“二刀流”の先駆者としての自負もにじむ。
4日間で最大5レースになるが、「体力的にギリギリ勝負できる」と2枚の五輪切符獲得を見据える。「まずは(400メートル障害で)優勝して、自己ベスト(48秒36)を更新できるように頑張りたい」。21歳は端正な顔をグッと引き締めた。
◆豊田兼(とよだ・けん)2002年10月15日、東京都出身。陸上は小学2年でクラブチームに入って始め、桐朋高を経て慶大に入学。現在は110メートル障害、400メートル障害、400メートルの3種目をこなす。23年8月に世界ユニバーシティー大会の男子110メートル障害で優勝。24年5月のセイコー・ゴールデングランプリは400メートル障害で48秒36の自己新記録で優勝した。195センチ。