14歳で3.3万人に支持される陸上女子「やっていてよかったー!」 日本選手権に現れた超新星のSNS活用術

日本選手権初日、女子100メートルに出場した三好美羽

陸上日本選手権

今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権初日が27日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子100メートル準決勝では、14歳の三好美羽(広島・福山神辺西中3年)が11秒93(追い風0.7メートル)の組7着。決勝には進めなかったが、初出場で予選突破するなど快走した。陸上の楽しさを届けるため、SNSで積極的に発信。イマドキ女子の活用術があった。

弾むような笑顔がトラックで輝きを放った。予選直前の選手紹介。目の前に来たカメラへ、三好はニコっと笑ってみせた。手を挙げると、聞こえてきたのは体験したことのない量の拍手。「『もう、頑張るぞー!』って思いました」。両拳を胸の前で握り、また笑顔。号砲とともに勢いよく飛び出した。

11秒95(向かい風0.3メートル)の組3着。タイムで拾われて予選を突破してみせた。準決勝も1レーンでダイナミックな走りを披露。「スタートは良かったです、良かったです。もうここまで来られると思ってなかったので、もう新潟最高です!」。自己ベスト11秒79の更新と決勝には届かなかったが、天真爛漫な姿が喜びの大きさを表していた。

「正直、親には申し訳ないですけど、予選で(出し切って)終わろうと思ってました。だけど、まさかのギリギリで残れたので、めっちゃ嬉しかったです! (いつもと会場の雰囲気が)全然違って。この場所にいていいのかと思いながら、ずっとポツンとしていました。(準決勝に残り)もう奇跡です、奇跡です」

日本男子の4×100メートルリレーメダル獲得に沸いた北京五輪すら知らない2009年生まれ。インスタグラムではすでに3万3000人のフォロワーを誇り、「広島美少女図鑑所属モデル」にも名を連ねるという。二階堂ふみ、桜井日奈子、山本舞香などを輩出した各県の同図鑑。スポーツ界の「金の卵」を取り上げるフジテレビ系「ミライ☆モンスター」でも特集された。

かつてクラウドファンディングで遠征費を捻出したことも。SNSを積極的に活用する14歳の超新星。明確な理由があった。

「私が発信している理由は『たくさんの人に陸上の楽しさを知ってほしい』というところ。そこで発信し続けていて、『三好さんに憧れて陸上を始めた』『三好さんのおかげで陸上が楽しくなった』というコメントやDM(ダイレクトメッセージ)をたくさんいただけます。『もう、やっていてよかったー!』って思います」

「脚も脂肪ばっかなので、食生活を見直したい(苦笑)」

SNSで心無い言葉に悩むアスリートもいるが、プラスに変えられるのも一つの才能。すでに気持ちを上げる術として身につけているのは新時代の選手らしさだろう。

もちろん専念しているのは陸上のレベルアップだ。股関節の辺りをさすりながら「今から腸腰筋を鍛えたいです」と、やる気満々。「脚も脂肪ばっかなので、食生活を見直したい」と苦笑いしつつ、「最近勉強しすぎで、寝不足なので陸上に力を入れたいなと思います」とひとまずペンを置き、目標の全中制覇を視野に入れる。

予選では2連覇中の君嶋愛梨沙と同組。大会前から一緒に走れる喜びをSNSに記していた。目の当たりにした日本トップスプリンターに「今、日本を背負っている選手なので、なんだろう……本当に楽しいんですよ、レースが」と興奮を言葉にできず。「めっちゃ離されるんですけど、私もああなれたらなあと。一緒に走れるのは夢のようです」と想いを表現した。

トップ選手はレース前にクリームを塗ったり、ストレッチをしたりしながら本番のイメージトレーニングに励む。じっくり観察した三好は「今後の私に生かせたら」とお姉さんたちから学んだ。取材陣の中にいた増田明美さんを見つけると「うわ!」と仰天。大先輩から「新潟で美味しい物、何を食べたいですか?」と聞かれ、「お蕎麦を食べたいなと思っています。頑張ります」と笑った。

「4年後の五輪に出られたらもう最高です!」

28年ロサンゼルス五輪でも18歳。大器の片鱗を見せた中学生の未来は明るい。

THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada

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