治療中にパニックになるペットも…防ぐには飼い主の付き添いが効果的【ワンニャンのSOS】

病院は行かニャイよ

【ワンニャンのSOS】#68

この連載の読者さんは定期的に動物病院にかかっていると思いますが、中には去勢や避妊の手術を受けてから疎遠になる飼い主さんもいます。自宅でおかしなそぶりを見せなければ、それでよいかもしれませんが、問題は体に異変があって受診したときです。病院に慣れていないため、パニックを起こすことがあるのです。

ペットが病院でパニックになったとき、飼い主さんがそばで処置などを見守っていると、落ち着きを取り戻し、スムーズに処置ができるようになることは少なくありません。「そんなことは当たり前」と思われるかもしれませんが、そうでもないのです。

■飼い主に処置や手術を見せない病院も

私の推察では、企業病院や見習い獣医師が多く在籍する病院などでは、飼い主さんに処置や手術の様子を見せない傾向が強いと思います。経験の浅い若手にとって、飼い主さんの目線はプレッシャーで、新人教育の意味はあるでしょう。

逆に経験豊富な精鋭ぞろいだと、卓越した技術が流出するのを嫌って、治療するシーンを見せないのかもしれません。いずれも、理屈は通りますが、そんな病院の中には飼い主さんに処置や治療の内容を説明しないこともあるようです。これはよくありません。

そういう病院では、パニックになった子にも速やかに検査や治療ができるように工夫していて、力ずくで押さえ込んだり、保定台(羽交い締めにする台)に載せたり、さらに洗濯ネットに入れたりすることもあるといいます。当院でも、初診のネコちゃんが洗濯ネットに入れられていて驚いたことがあります。

それで治療は済むでしょうが、その子の記憶にはつらかったことが刻まれます。もう一度、病院に連れて来られると、パニックになって当然でしょう。そんなとき、飼い主さんの付き添いが効果的なのです。当院でも、治療の様子を飼い主さんに見守ってもらっています。

たとえば、肺炎やがんなどで肺に水がたまるとその水を抜くことが大切です。最近は専用のカテーテルが勧められますが、軽く鎮静して気管挿管も伴い、ガス麻酔も吸入します。これまた楽な治療ではありません。

しかし、当院では飼い主さんにそばにいてもらうことで、鎮静もガス麻酔もなしに胸水を抜いています。お座りに近い姿勢をキープしてもらうため軽くスタッフが押さえることはありますが、その程度で針で胸水を抜き切ることができるのは、飼い主さんの声かけがあればこそ。落ち着いてさえいれば、危険なく胸水を抜ける可能性もあるのです。

久しぶりにわが子を連れて行った病院が治療を隠すスタイルなら、「ウチの子が迷惑をかけないか、作業を見ていいですか?」と聞いてみるとよいと思います。治療中の様子がわかれば、「ウチの子に限って」という誤解がなくなり、受診先で「治療中に暴れる」という性格を伝えられ、スムーズに治療を受けやすくなります。

(カーター動物病院・片岡重明院長)

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