11年ぶり年間1万件超えも? ヒタヒタ迫る倒産激増の足音…市場が囁く「危ない会社」リスト【表あり】

人手不足による経営悪化も増加している(C)日刊ゲンダイ

怪しげな足音が近づいている? 株価上昇や賃上げムードなどサラリーマンを取り巻く環境は好転しているように思いがちだ。一方で、物価高騰は激しさを増し、実質賃金のマイナスは続く。これまで鳴りを潜めていた企業倒産もヒタヒタと……。

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■中小企業がバタバタと……

イヤ~な数字が並んでいる。

「11年ぶり」「4年1カ月ぶり」「7カ月ぶり」……。東京商工リサーチの「倒産月報」(2024年5月度)に出てきた倒産に関する記述の一部だ。

5月の倒産件数(負債額1000万円以上)は1009件。1000件を超すのは13年7月以来で約11年ぶり。

4年1カ月ぶりだったのは従業員の被害者数。倒産に伴う被害者が6540人に達し、20年4月以来の6000人超えとなった。

7カ月ぶりは「10産業すべてで前年同月を上回った」こと。倒産は、建設業、製造業、小売業、金融・保険業、不動産業、運輸業、サービス業など産業別に統計を取るが、そのすべてで倒産が増加したのだ。どの業種でも、まんべんなく倒産は広がっている。

「円安や人材確保のための人件費アップ、原材料高、物価高などが中小企業を襲っています。コロナ禍で実施されたゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済に耐えられない中小も増えています」(東京商工リサーチ情報部・増田和史氏)

■堅調な株式市場に水を差す

倒産件数が上昇傾向を見せる中、株式市場も倒産を気にかけ始めた。今年は、日経平均が史上初の4万円台をつけるなど盛り上がった。現在も、ひと頃より落ち着いているとはいえ、4万円近辺での取引が続いている。

「市場環境は決して悪くありません。円安や日米金利差などによりボックス圏での推移となっていますが、3月期決算企業の第1四半期(4~6月)決算の公表が本格化する7月下旬から8月にかけて上昇する可能性は高いでしょう。ただし、倒産件数の増加はひっかかります。大型倒産は起きないにしても、経済全体に暗いムードを与えかねません」(株式評論家・倉多慎之助氏)

「GC注記」「重要事象」は75社

市場関係者は上場企業の決算書に記載される「GC注記(ゴーイングコンサーン注記=継続企業の前提に関する注記)」「継続企業に関する重要事象」に注目する。この記載を“危ない会社”の目安にするという関係者は少なくない。

「24年3月期にGC注記があったのは23社。重要事象は52社でした。どちらも前年より減少しています」(増田和史氏)

合計すると75社。コロナ禍の22年3月期に比べると2割ほど減少した。

「業績を回復させる企業が増えているのに、業績低迷から抜け出せない会社がある。それが“危ない会社”として残ってしまっているともいえます」(市場関係者)

GC注記(表1)は、情報・通信のジーネクスト(東証グロース)、亜鉛・鉛製錬大手の東邦亜鉛(東証プライム)、食料品の石垣食品(東証スタンダード)など。独立系ブレーキメーカーの曙ブレーキ工業(東証プライム)は24年3月期の決算短信に記載があったが、疑義を生じるような事象が解消したとして、6月半ばに「記載解消」を発表した。

GC注記には至らないまでも、事業継続に疑義を生じさせる事業がある場合は「重要事象」(表2)。“危ない会社予備軍”といったところだ。広島を地盤にする中堅ハム・ソーセージメーカーの福留ハム(東証スタンダード)、医薬品の住友ファーマ(東証プライム)、電子・通信用機器の多摩川ホールディングス(東証スタンダード)など17社が新たに加わった(23年9月中間期には記載なし)。

上場企業の倒産はこの数年、めっきり減った。リーマン・ショックのあった08年は33件に及んだが、21年はゼロ、22年と23年はそれぞれ1件のみ。

■24年1~6月は5200件超か

「上場企業の倒産が珍しくなった分、倒産そのもののインパクトは大きくなっています。株式市場に与えるマイナスも想像以上でしょう。海外投資家が日本市場から逃げ出す理由になりかねません。そうなったら負のスパイラルです」(前出の市場関係者)

大手証券が予想する年末の日経平均4万~4万2000円は遠のくだろう。新NISAに群がる「新しい投資家」たちも、投資に二の足を踏みかねない。

この先、中小・零細を含め倒産は増え続けるのか。東京商工リサーチは5月度の倒産月報で、24年は「11年ぶりに年間1万件を超える状況」と分析した。1~5月は4111件。「6月も5月並みのペースで推移している」(増田和史氏)という。

5月は前年同月比で42.9%増だった。同様な増え方をすると、6月の倒産件数は約1100件。24年1~6月の半年間では5200件を超えてくる。年間で軽く1万件を突破する勢いだ。

物価高、円安、実質賃金マイナス……。そこに株安、倒産激増が上乗せされれば日本経済に暗いムードが漂う。昨年の猛暑では家計支出(東京)が1カ月に約3700円増加したとの統計(帝国データバンク調べ)があった。

今年も間違いなく猛暑。生活防衛を徹底させるしかない。

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