能登半島地震、7月1日で半年 避難長期化で心身衰えに懸念

海の近くに立ち並ぶ長屋型の仮設住宅。住宅修繕のめどが立たず、先が見えない住民らが身を寄せており、避難の長期化に伴う健康悪化の抑止が課題となっている =24日午後、石川県輪島市(ドローン撮影・石井裕貴)

 最大震度7を観測した能登半島地震から7月1日で半年となる。各地で復旧作業が進む一方、被災者の生活再建は道半ば。被害が大きい石川県などが危惧しているのが、避難の長期化に伴う被災者の健康状態の悪化だ。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故、その後の大規模災害でも表面化した課題で、特に高齢者は運動不足によるフレイル(虚弱)の進行や認知機能への影響が懸念されており、関係者の危機感は強い。

 認知機能、健康管理に重点

 能登半島中央部にある石川県七尾市中島町で24日、65歳以上を対象に検診が行われた。今回の災害が高齢者の認知機能にどのような影響を与えるのかを調査する一環で、金沢大医薬保健研究域医学系脳神経内科学の小野賢二郎教授(52)の研究グループが実施した。

高齢者の被災後の生活状況や認知機能などを確かめる小野教授=24日午前、石川県七尾市中島町

 この日は採血や運動機能の確認に加え、現住所や車中泊の有無といった被災直後の状況について聞き取りが行われた。参加者は「100から7を順番に引いてみてください」などと認知機能のテストも受けた。

 「今は何ともないんやが、余震が続いて眠れない日もあって」。半壊と認定された自宅に夫と暮らす関塚なおみさん(69)はこう打ち明ける。珠洲市や輪島市など奥能登に業者や資材が集中していることなどから、自宅の修繕は見通せない。現在は「一番安全な場所」という台所が寝室代わりになっている。「自宅で寝られているから、ましなのかもしれないけれど(環境変化の)影響が心配」と話す。

 小野教授の研究グループは2006年から、この地区の脳検診を受け持ってきた経緯がある。これまでのデータの蓄積から、対象者の体調変化の早期発見も期待される。今回の検診の対象は2千人以上に上る。26年度までに終え、所見が確認されれば七尾市内の系列病院とも連携し、早期の治療開始につなげる考えだ。

 今後はMRIを使って脳のボリュームを調べる検査も行う予定だ。未受診者には戸別訪問などで検査の漏れがないよう努める。小野教授は「環境の変化が認知機能にどのように影響するのかを明らかにし、今後起こり得る大規模災害に役立てていく」と展望する。

 石川県によると、25日午後2時現在、自治体が用意した避難所に2288人が身を寄せる。仮設住宅への入居が進む一方、長期的な避難が見込まれる被災者もいる。

 震災と原発事故で被災した高齢者の孤独死や災害関連死の抑止が教訓となっただけに、石川県の担当者は被災者の健康管理を重要課題と位置付け「心のケアや運動機会の創出、見守り活動など市町とも連携しながら健康状態の管理に対応していく」と説明した。
 (いわき支社・折笠善昭)

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