「この選手が跳べてなぜ私が…」 突如世間の視線を集めた24歳・高橋渚の海外挑戦と悔しい3連覇【陸上日本選手権】

日本選手権走り高跳びで優勝し、金メダルを手に撮影に応じる高橋渚【写真:奥井隆史】

今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権初日が27日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子走り高跳びでは、24歳の高橋渚(センコー)が1メートル87で3連覇を達成。しかし、目標の1メートル90超えはならず悔しさを噛み殺した。

長い手足を生かし、華麗に舞った。高橋は1メートル75から78、81をいずれも一発クリア。他の選手はついていけず、3連覇が決まった。「1メートル90を跳びに来た」。あとは自分との闘いだ。1メートル84、87も一発成功。目標の大台を前に心の中で唱えた。

「跳べる、跳べる、跳べる」

果敢に挑戦した。しかし、3回とも失敗。優勝しても悔しさで瞳を潤ませた。

「今日の日本選手権は、一番思い出に残る試合にしたかった。いやぁ……悔しいですね。3連覇はもちろん嬉しいですけど、90を飛んで3連覇したかったので悔しいです。跳びたい気持ちが強いと体が突っ込んでしまう。また持ち越しですね」

身長173センチ。東京高で本格的に陸上を始め、3年時の2017年インターハイを制した。日大では日本インカレ優勝。19年日本選手権で3位に入り、国内トップレベルの選手に仲間入りした。昨年日本選手権で連覇すると、7月にはアジア選手権4位(1メートル83)と健闘。今年2月の日本室内選手権では1メートル86の大会新記録で3連覇し、5月の静岡国際で1メートル88の自己ベストをマークした。

一方、昨年のフジテレビ「FNS27時間テレビ」では、お笑い芸人・明石家さんまの「ラブメイト10」にラインアップ。さんまが最近気になる女性を紹介する深夜恒例の企画に突如登場し、SNSに反響が集まるなど世間の視線を集めた。

日本選手権、バーに向かって助走する高橋渚【写真:奥井隆史】

海外大会にも挑戦「これからも出て、絶対に形にしたい」

応援してくれる人が増えたからこそ、是が非でも出場したいのが五輪。夢を叶えるため、海外の大会にもトライしてきた。

「日本とは少し違って、外に出て刺激をもらいました。いろんな選手を知ることで『この選手が跳べて、なんで私が跳べないんだろう』とか考えるシーズンになりましたね。90を飛ぶためにはこれからももっと出ていきたいと思っていますし、絶対にそれを形にしたいです」

結果を追い求める24歳。まだワールドランキングなどの資格で五輪切符を得られる可能性はある。

「(五輪に出られれば)自分の跳躍を絶対にしっかりしたい。決勝に行けるほどの力を1か月で身につけることはできないと思いますが、それでもできる限りの挑戦はしたい」

2001年今井美希の1メートル96が日本女子最古の日本記録。何事も可能性がある限りチャレンジをやめない。

THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada

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