名医が教える胃腸の守り方 【第4回】多くは5~6歳から感染している!? 意外と知らないピロリ菌事情

CHAPTER1 胃腸を制すものが健康を制す

胃腸が悲鳴を上げる5大原因は「ピロリ菌」「暴飲暴食」「自律神経のバランスの乱れ」「加齢」「ストレス」

原因1:ピロリ菌

胃を荒らして胃もたれ、胃痛、胸やけを起こす

胃内は酸性のため、菌に対するバリアでもあります。ピロリ菌は、この胃の強い酸の中でも生息する細菌で、胃酸から身を守るために常にアンモニアを出し続けています。

ピロリ菌が粘膜を傷つけるメカニズムには多くの説があり、複数のメカニズムが絡んでいると考えられています。ひとつには、ピロリ菌が出すアンモニアが胃の粘膜を繰り返し傷つけるため、胃痛や胃もたれの原因になるといわれています。慢性胃炎を引き起こし、胃もたれの原因になります。

また傷ついた粘膜が胃から分泌される胃酸と消化酵素に直接さらされるため、胃潰瘍に進行していくとも考えられています。ピロリ菌は大抵子どもの頃に感染し、一度感染してしまうと除菌治療をするまで胃の中に居続ける細菌です。子どもの頃に井戸水を飲んだ、ピロリ菌に感染している親から口移しで食べさせてもらっていたことなどが原因として考えられ、多くは5~6歳までに感染するといわれています。

ところが胃の不調があるにもかかわらず、病気にまではなっていないという感覚でピロリ菌の存在に気づかずに大人になる人も多くいます。子どもの頃に症状がなく、大人になって症状が出ると、急性胃炎などが起こる場合もありますが、我慢できると思ってやり過ごしたり、胃の調子が悪いのは体質だからと治療をしなかったりする人も結構います。

しかし、検査によりピロリ菌に感染していることがわかり治療をすると、胃がすっきりし、以前とは違う胃腸の状態になったと感じる人も多くいます。ピロリ菌が怖いのは胃炎だけでなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんになる可能性もあるからです。

人間ドックなどでピロリ菌抗体の値が高いと「ピロリ菌感染の可能性あり」とチェックされます。その場合は、胃カメラで精密な検査をします。そして組織検査などで、試験液が反応すればピロリ菌感染ありということになります。早い人なら10分程度、遅くても2時間あれば結果は出ます。

感染していたら1週間、胃酸を抑える薬と抗生剤による内服治療を行い、1~2カ月後に呼気による検査をし、除菌できたことを確認して、ピロリ菌除菌は完了になります。

原因2:暴飲暴食

暴飲暴食は胃腸への負担が大きすぎる

胃腸が消化吸収できない量のものを食べる、飲酒するなどが暴飲暴食です。

ストレスでやけ食いや脂っこいものばかり食べすぎてしまう、アルコールを飲みすぎる、香辛料などの刺激物をたくさん摂りすぎる。こうした食事によっても胃腸は大きな影響を受けます。それが下記の2つです。

①消化・吸収活動が追いつかない→胃もたれ、下痢

食べたものを胃で消化するのに2~4時間はかかるといわれています。特に脂っこいものは消化に時間がかかるため、自分の胃腸の消化能力を超えた量の食べ物が胃腸へと運ばれてくると、胃腸の動きには大きな影響を与えます。胃の消化活動が追いつかず、未消化物がたまってしまうと胃もたれを起こします。

そうした状態で横になると胃がムカムカして気持ちが悪くなるといった症状として現れます。蠕動運動にも影響し、異常に活発になったり、その反動で動きが悪くなったりします。そのとき、水分や栄養成分が体内に吸収されず、腸を通過してしまうため、せっかく食べたのに未消化のまま便として出てしまい下痢を引き起こします。

また、食べた直後に横になることは良くありません。さらに胃の左を下にすると、左側に未消化物がたまり、胃の出口から十二指腸へとスムーズに流れづらくなります。みぞおちのあたりの上腹部が痛い場合も、暴飲暴食が原因である場合があります。

おへその周りがゴロゴロしたり、痛みの位置が変わる場合があります。それは小腸に炎症が起きているサインかもしれません。ただし、みぞおちの奥など、背中が痛い場合もあります。背中の左側にハリ感がある場合、胃酸過多症状や胃もたれのことも多いですが、胃潰瘍やもしかすると膵臓が原因かもしれません。

右側であれば胆石が原因という可能性もあるので、一度検査を受けるほうがいいでしょう。

②刺激物で胃酸の分泌量が増える→胃痛、下痢、便秘

唐辛子やハラペーニョ、ニンニクなどの刺激物や香辛料、濃度の高いアルコール、果汁、炭酸飲料の過剰摂取は、胃酸の分泌を過度に促進してしまい、胃の粘膜を傷つけます。それが胃痛の原因になります。

また香辛料などの刺激によって、胃や腸の蠕動運動が活発になることもあります。蠕動運動により胃壁の筋肉が強い収縮と弛緩を繰り返すために痛みを感じやすくなります。

さらに小腸や大腸の蠕動も強くなり、水分を十分に吸収しないまま便になってしまうことで、腹痛や下痢を引き起こします。


※本記事は、2022年10月刊行の書籍『名医が教える胃腸の守り方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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