「モバイルAI時代」が到来、出現しつつある状況とは―ファーウェイ・汪濤常務取締役

ファーウェイの汪濤常務取締役は上海で開催中のモバイル関連の世界的な見本市であるMWCで行った基調講演で、「モバイルAI時代」が到来したと論じた(写真)。

中国の通信機器大手メーカー華為技術(ファーウェイ)の常務取締役でICTインフラ業務管理委員会主任の汪濤氏は26日、上海市内で開催中で28日が最終日になるモバイル関連の世界的な見本市である「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2024」の会場で基調講演を行った。汪氏は2024年を「5G-A商用元年」と「AI端末利用元年」が重なった年と位置付け、「モバイルAI時代」が到来したと論じた。以下は汪氏の講演の要約に若干の説明情報を追加して再構成したものだ。

スマートフォンは「AIアシスタント端末」に進化

5G商用化5年間の成果は顕著で、世界のモバイル産業にかつてないほどの影響を及ぼした。5Gは世界のサービス提供の「広さ」を広げ、世代を超えて体験の「スピード」を実現し、デジタルトランスフォーメーションの「深さ」をけん引してきた。

5Gの発展は今も加速中だ。「進化型5G」の5G-Aの最初の規格も決まり、通信事業者とパートナー60社以上が「5G-A商用元年」の到来を宣言した。5G-A端末も準備が整った。5G-Aはデジタルの波を大きく前進させ続けることになる

2024年は「5G-A商用元年」と「AI端末利用元年」が重なり、「モバイルAI時代」が到来したことで、スマートサービスが随所に行き渡ることになる。モバイルAI時代は、次の3つの重要な変革をもたらす。

第一に、インタラクションの変革だ。従来型の「タッチインタラクション」が「フルモードインタラクション」へと移行する。自然言語、ジェスチャー、感情などのさまざまなインタラクション方式が取り入れられ、いつでもどんな状況でも好みの体験を享受できるようになる。第二に、コンテンツ生産で変革が生じる。人々の情報取得は「検索コンテンツ」から「AI生成式コンテンツ」に向かう。情報生産は既存型からカスタマイズ型に変わり、情報は各ユーザー向けに個別化されてリアルタイムで提供される。第三は、モバイル端末の変革だ。モバイル端末はスマートフォンから「AIアシスタント端末」と「具現化知能」へと向かう。モバイルAI時代は人類社会に新たな活力を注ぎ、モバイル産業にも広大なチャンスをもたらす。

AIはツールからパートナーに進化する

過去10年間にはグラフィック面でのインタラクションの変革がモバイルデータの急速な成長を促した。過去10年で日常的にオンラインを利用するユーザーは120倍以上に増加した。移動AI時代は再びコンテンツのインタラクションを変革し、主流だった検索型コンテンツに生成型コンテンツが取って代わることで、インタラクションの効率が100倍向上する。さらに、AIによるコンテンツ生成が3Dや空間ビデオなどのコンテンツの制作を促進し、インタラクション情報量が100倍に増加する。このことにより、データの爆発的な増加が促進される。

また、コネクテッドカーは従来の運転スタイルを覆し、より楽しく安心な移動を提供する。スマートコックピットが人々の乗車体験を覆す。Gbpsネットワークはスマートアシスタント、マルチスクリーン視聴、拡張現実(XR)アプリケーションなどを支え、車両をレジャー、娯楽、仕事を一体化した「モバイル第3空間」にする。スマート運転システムは毎月100ギガバイトのデータアップロード訓練により正確性を向上させ続け、多様化する交通環境を正確に識別して対応する。また、ミリ秒レベルの車と道路の協調により、リアルタイムで安定した信頼性の高い運転戦略が成立する。

第三に、モバイルAI時代は万物の相互接続の範囲を大きく広げる。今後は誰もがAIアシスタントを持ち、AI携帯電話、ゴーグル、新型AI端末などがデバイスの境界なしに利用できるようになる。AIはツールからパートナーに進化し、生活、仕事、学習の全シーンの需要にリアルタイムで対応する。産業については、各スマート工場にAIが配備され、AIマシンの「従業員」が各生産段階に深く入り込んで仕事をする。AIマシンの従業員は自主学習と正確な対応能力を備え、生産、補修、品質検査、物流などの全ての場面の質と効率を向上させる。

モバイルAI時代の広大なチャンスを前に、産業界は緊密に協力し、時代の発展がもたらす利得を掌握せねばならない。5G-AはモバイルAI時代の重要な柱として、その発展を加速させ、事業者や産業パートナーがビジネスの新たな価値を共に創造していく必要がある。

「Networks for AI 」と「AI for Networks 」の流れ

まず実現させることは「Networks for AI(AIのためのネットワーク)」だ。つまりモバイルAI時代のしっかりとした基盤を作る。モバイルAI時代は、ネットワークの大量通信と、低遅延などの能力に対してより高い要求を突きつけている。そのため全周波数帯を5G-Aに向けて加速的に推進し、各周波数帯の価値を十分に解き放ち、究極のネットワーク体験基盤を構築する必要がある。

次に「AI for Networks(ネットワークのためのAI)」だ。すなわち「智」をもってネットワークを形成する能力の向上を確保にする。AIを全面的に取り入れてネットワークの運営と維持の効率を高めることが急務だ。通信ビッグモデルはネットワーク自働化を加速して自律ネットワークのAN L4高度な自己学習能力に進展することで、次の2種類の応用を実現することができる。まず「役割指向の方の共同作業支援」では、専門知識の質疑応答と運用支援機能により、人の効率を高める。次に「シーン指向エージェント」では、ユーザーの意図を理解しタスクを自動配置することで、複雑なシナリオを自律的に解決する。

モバイルAI時代においては同時に、堅牢なネットワーク基盤が革新的な応用と革新的なビジネスモデルに肥沃(ひよく)な土壌を提供する。ビジネスモデルをアップグレードし、全シーンの連結価値を高める必要がある。消費者に対応する状況では、スマート化応用が絶えず革新され、同時に消費者によりよい体験をもたらす必要性が高まる。通信業界では、単純な「通信量経営」から「多次元的体験経営」への転換が後押しされる。産業界に向けてもスマート化サービスが徐々に普及し、通信事業者には「連結」から「連結+多次元サービス」への価値転換のチャンスがもたらされる。

今後の10年は、モバイルAI時代とともにある10年だ。スマート世界への歩みを加速する10年であり、5G-Aが礎石の役割を果たす10年でもある。ファーウェイには産業界と手を携え、モバイルAI時代の大きなチャンスを共につかみ、素晴らしいスマート世界を共に構築することを期待する。(翻訳・編集/如月隼人)

© 株式会社 Record China