会社員の大きな区切りとなる「役職定年」。その後も勤めている会社に残る場合、どうせなら一般の役職定年者よりも収入をアップさせたいと考える人も多いでしょう。そこで、『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)の著者である人材開発コンサルタントの田原祐子氏が、役職定年後のスキルアップを目指して取り組みたいことについて、事例をもとに解説します。
役職定年後も今の会社で活躍したい…どんな準備が必要?
スキル&年収&労働期間アップを目指すために必要なこととは
もしもあなたが「役職定年後、今の会社に残る」と決めた場合、今のうちから、少しでもあなたのステイタスや存在価値をアップしておくよう心がけましょう。
そうすれば、あなたはより長い期間会社に必要とされ、当然部下からも尊敬されて、居心地よく働き続けることができます。
また、場合によっては、一般の役職定年者より、収入をアップさせることも可能になります。
そして、そのためには、次のような戦略・戦術が必要です。
●あなたの強みである「経験知」を明確にしておく
会社は専門知識やスキルがある人の経験知を必要とするものです。社内で後輩育成に寄与したり、社内講師を務めるのもいいでしょう。
●「新たなスキル」を習得する
現在の仕事に関連する付加価値の高いスキルを習得するといいでしょう。その他、コーチングや、AIなどのデジタル系スキルなどもお勧めです。
●コンピテンシーを発揮して、社内のメンターやアドバイザーを務める
若手社員が自分の上司に相談できないことも、年齢の高いあなただからこそ相談できることがあります。ギスギスしがちな職場をホッとさせる存在になりましょう。
●役職定年後、今の会社に残る場合に考えられるキャリアパターン
キャリアアップ、またはキャリアシフトが該当します。
特に新たに身につけなくてはならない専門知識やスキルはありません。
「少しでも長く働きたい」「よりよい待遇を求める」という方は、付加価値を高めるような知識やスキルを習得するよう、心がけるといいでしょう。
半年前に定年退職したサラリーマン、社長から「まさかの電話」
太田さんは、長年印刷会社に勤務し、45歳で部長となりましたが、55歳で役職定年を迎え、60歳で定年退職しました。
印刷会社では、システム化が進んでおり、生産性が向上すると必要人員も少なくなるため、会社自体の人数も、どんどん減ってきていました。特に役職者は給料が高いため、太田さんの同僚の中には、リストラされた者も少なくありません。
ところが、定年退職した半年後、元の会社の社長から電話があり「戻ってほしい」と言うのです。太田さんは一瞬耳を疑いましたが、翌日、久しぶりに会社をたずねました。
すると社長は、「印刷技術や、客先との調整スキルを持った人材がいなくなり、困っている」と言うのです。
太田さんは今、もう一度部長という肩書をもらっています。報酬は以前ほど高くはありませんが、役職定年時の2割増しの給料をもらって、イキイキと力を発揮して働いています。
ベテランの強み…長年の経験を活かしてリスタート
太田さんのケースのように、ベテランがいなくなったために、技術やスキルが不足して困っている企業の話を最近よく耳にします。
このケースは、まさに、長く勤めた方ならではの経験知が認められた好事例であり、経験知の大切さが認められたケースです。ぜひ、あなたもご自身の経験知を、社内で見えるカタチにしておきましょう。
田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者