引っ越しを検討していますが、賃貸退去時のトラブルが心配です。発生しやすい「修繕費」には何がありますか?

修繕費は主に4つに分類される

アパートやマンションなどの不動産にかかる修繕費は、内容や目的によって、以下の4つに分類されます。

__原状回復費:退去後、部屋を入居時の状態に戻すためにかかる費用
老朽予防修繕費:建物の老朽化を防ぐために定期的に行われるメンテナンスなどの費用
大規模修繕費:15年に1回程度行われる、大規模な工事や修繕
破損箇所の修繕費:物件や設備に起きた不具合の修繕にかかる費用__

上記の4つのうち、原状回復費以外の修繕費は原則として物件のオーナーが負担すべき費用です。

入居者にかかわるのは原状回復費

賃貸住宅の借り手である入居者にかかわる費用が原状回復費です。入居者が退去すると、物件のオーナーは次の入居者を見つける必要があります。

そのため、入居者には退去時に部屋を入居時と同じ状態に戻す義務(原状回復義務)があることが、民法第六百二十一条にて「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(中略)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。」と定められています。なお、原状回復とは、契約が締結される前に戻すことを意味する法律用語です。

具体的には、居住中に家具などをぶつけて傷つけてしまったり、汚してしまったりしたところを直したりきれいにしたりする費用は入居者負担となるでしょう。

ただし、経年劣化や通常損耗による傷や汚れはオーナーが負担します。例えば日光による壁紙の色褪せ、家具の重みによるカーペットのへこみ、画鋲の跡などは、通常の生活を送っていても自然に発生するものです。これらを修繕する費用はオーナーが負担すべきものとして賃料に含まれているというのが基本的な考え方です。

原状回復費は敷金から差し引かれることも

原状回復費が発生した場合、敷金から差し引かれるのが一般的です。ただし、経年劣化や通常損耗のみであれば、原状回復費はゼロとして敷金が全額返ってくることもあります。一方、部屋の汚れや傷の程度によっては原状回復費が敷金を上回り、追加で費用を請求されることもあるでしょう。

なお、入居時に敷金を払っていない場合は、退去時に原状回復費を請求されることがあります。

原状回復費が発生しやすい場所

入居者による原状回復費の負担が発生しやすい場所は、壁紙やクッションフロア・畳などです。タバコやペットによる臭いや傷、子どもの落書きなどは張替えによる原状回復が必要となりやすいため注意しましょう。

なお国土交通省住宅局によると、原状回復費として入居者が実際に支払った金額は、単身者の場合5万円以下が約8割を占めます。ただし、中には30万円以上かかったケースもあるようです。

原状回復費は事前に契約書で確認しよう

賃貸住宅を退去する際、トラブルになりやすいのが原状回復費です。どこまでが入居者負担で、どこまでがオーナー負担となるかは契約書に記載されています。退去時の立会までに確認しておきましょう。また、契約書で詳細が定められていない場合や、実際にトラブルになった場合には、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしてみてください。

出典

e-Gov 法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法 第六百二十一条
国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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