雪解けが進み、高山植物が咲き始める季節へと移り変わった。季節ごとに様々な花が咲き、山々を彩り、登山をより一層楽しませてくれる。中にはそこにしか咲かない貴重な花もあり、それを見るために登ることもあるほどの人気ぶりだ。今回はそんな可憐な高山植物に注目して登ったお山をご紹介しようと思う。
■上高地の散策で出会うニリンソウの群生
以前、残雪期の北穂高岳に登ろうと上高地を訪れた5月半ば、上高地ではニリンソウの群生が見事だった。北穂高岳からの下山で疲弊していた私に癒しを与えてくれたのだ。向かう朝方には気づかなかったと思ったら、どうも夜間や雨の日は花は閉じているようだ。ニリンソウの群生が忘れられず、今年は上高地を散策した。
大正池でバスを降りて、明神・徳沢に向かって遊歩道を自然のBGMを聴きながらゆったりハイキングするのが心地よかった。新緑の景色の中に可憐な小さなニリンソウが広がっている。この足元の絶景に思わず「はあ」とため息をついてしまう……。ときおり、緑色のニリンソウも咲いているので見つけるとHAPPYになるかも!
■伊吹山のお花畑
滋賀県と岐阜県にまたがる日本百名山、伊吹山。現在、麓からの登山道は崩落のために通行ができない。公式サイトなど見て注意をしてほしい。私はドライブウェイを使って、9合目からサクッとハイキングでお花畑を楽しんできた。
ゲートを開けた瞬間からクサタチバナが群生している。新緑に花火のような白いクサタチバナのコントラストが美しい。7月以降はさらに高山植物が咲き誇り、百花繚乱な景色となるようだ。新緑の葉が今にもお花畑になりそうな予感がした。お手軽に高山植物のお花畑を愛でるのにとてもおすすめである。
■鳥海山とハクサンイチゲのコラボ撮影
山形県と秋田県にまたがる鳥海山は活火山であり、代表的な新山(しんざん)の山頂は溶岩の大岩でできている。そんな荒々しい山のようだが、花の百名山である。
残雪期に「花」という文字の雪形が見られ、満開のハクサンイチゲとのコラボが絶景なのだ。このアングルで撮影するには笙ヶ岳(しょうがたけ)に登ると見ることができる。笙ヶ岳だけでも花と新山のコラボの絶景が見られるので、ここは絶対に訪れてほしいところだ。
もう少し足を運ぶと、御浜からは鳥海湖と花のコラボ撮影もできる。ハクサンイチゲだけでなく、ニッコウキスゲとのコラボも最高なので、これからの季節に訪れても楽しい。
■カラフルなお花が咲き乱れる仙ノ倉山
新潟と群馬の県境、平標山(たいらっぴょう)から仙ノ倉山の間の稜線は一面がメルヘンなお花畑だった。6月の半ばに訪れると、ハクサンイチゲとハクサンコザクラが満開となり一面に広がっていた。風に揺れる姿が可憐で可愛らしく、天空のお花畑に歩く人々の足を止める。
平日にも関わらず大勢の人が訪れていた。登りも難しくなく、ゆっくり登山を楽しみ、体を動かすのにとてもいい。イワカガミ、チングルマ、ミヤマキンバイも咲き、白、黄色、ピンク、紫とカラフルなお花畑が楽しめる。
■横岳(八ヶ岳)と白馬岳にしか咲かないツクモグサ
絶滅危惧種の花、ツクモグサをご存知だろうか。北海道と、本州では八ヶ岳と白馬岳に限り、咲いている姿を見ることができる。これほど特別な植物を見たいと思いませんか? もしかしたらとうに絶滅しているお花もいるかもしれない、そう考えると今目にすることができるのが奇跡のようにも感じられる。されど、私たちが守るべきお花でもある。それはツクモグサに限らないことも念頭に置いてほしい。
高山植物は可愛くて素敵! 「その姿をより素敵に撮影したい」という意欲のあまり、植物をダメにしてしまうような撮影行為は本末転倒となってしまうので配慮したい。可憐で儚い姿に癒されながら、「好きなら守れる」と思うので、ツクモグサを始め自然を守りながら共存して行きたい。
今回、難し過ぎないお山での高山植物をご紹介しましたが、天気を確認し、防寒着を持ってお山に入ってくださいね。