まるで“マイナ徴兵”…薬剤師ら1万人を「デジタル推進委員」に任命した河野大臣の厚顔と強権

人を食ったような物言い返事(河野太郎デジタル相)/(C)日刊ゲンダイ

「どの河野さん? 面白い小説だと思う」──。人を食ったような返事しかできないのか。9月の自民党総裁選への出馬が取り沙汰されている河野太郎デジタル大臣(61)のことだ。

26日夜、所属派閥の会長である麻生副総裁と会食。その際に総裁選出馬の意向を伝えたのかどうかをきのうの会見で問われ、スットボケた。「総裁選の話は出なかったのか」と食い下がる記者に、「飯を食っている時に何の話をしたか言ったことはない」「勘弁してください」とハグらかしたが、思わずほころんだ表情を見るに、まんざらでもない様子。麻生氏の反応については「良かった」と周囲に漏らしているという。

河野氏が総裁選に出たのは2009年と21年の2回。「3度目の正直」で悲願達成を狙うようだが、健康保険証の廃止に伴うマイナ保険証への一本化をゴリ押しする強権ぶりが目に余る。マイナ保険証の利用を促すため、薬剤師ら1万人を「デジタル推進委員」に任命したのがいい例だ。

「デジタル推進委員はマイナカードやマイナポータルの利用方法などをサポートするボランティアです。政府はマイナ保険証の利用を増やした医療機関に最大20万円の支援金を出してハッパをかけていますが、予算を使い切ったら利用促進キャンペーンは終わる見込み。キャンペーンが終わる7月末以降も続けたいから、原則無報酬の推進委員を無理やり薬剤師に担わせたのが実態ではないか」(永田町関係者)

デジタル庁がきのう開催した任命状授与式で、日本薬剤師会と日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体の各会長に河野大臣が任命状を手渡した。都内の薬局でマイナ保険証の利用を促された患者が「マイナ保険証がないと薬をもらえない」と誤解するトラブルなどが発生したにもかかわらず、河野大臣は「どんどん声かけをやってもらいたい」と反省ゼロだった。現行の保険証の存続を訴える全国保険医団体連合会事務局次長の本並省吾氏はこう憤る。

「薬剤師ら1万人を駆り出すとは、まるで“マイナ徴兵”です。デジタルサポートは薬剤師の業務とは関係ありません。デジタル庁は『誰一人取り残されないデジタル化』を掲げていますが、『マイナ保険証を持たない人を誰一人残さない』ではないか」

現行の保険証の廃止撤回を求める声に耳を貸さず、ひたすらマイナ保険証をゴリ押しする河野大臣は、総理たる器ではない。

© 株式会社日刊現代