専門家「国内投資の資金循環が重要」 円安一時1ドル=160円80銭に…37年ぶり水準で“為替介入”に更なる警戒感

円相場が27日朝、一時1ドル=160円80銭台を付け、37年半ぶりの円安水準となった。日米の金利差拡大が円安を促進し、市場では為替介入への警戒感が強まっている。専門家は、急激な変動ではないため、即座の介入は難しいと指摘している。

37年半ぶりの円安水準に

外国為替市場の円相場は27日午前6時頃、一時1ドル=160円80銭台を付け161円に迫り、37年ぶりの円安水準となった。

アメリカで利下げが遅れるとの見方が強まり、日米の金利差拡大が一層意識されている。

円相場を巡っては、4月末に160円台に突入した後、政府日銀が円買い介入に踏み切ったとみられ、再び160円台を付けたことで、市場では介入への警戒感が強まっている。

鈴木財務相:
急激な、しかも一方的な動きというのは望ましくない。必要に応じて必要な対応を取ってまいります。

市場関係者からは節目の160円突破で円安は止まりにくくなっていて、ぺース次第で介入の可能性は高まるとの見方が出ている。

6月27日午後11時40分現在の円相場の値は、160円59銭〜61銭となっている。

米利下げ「限定的」見通しで円安加速

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
円安が進み、為替介入への警戒が強まっていますが、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
前回の為替介入の水準である160円を超える動きとなっているため、金融当局も十分意識しているかと思います。

ただ、前回の為替介入は、短期間で4円もの円安が進んだタイミングで行われました。現在の為替は、じりじりとした値動きなので、今すぐの介入はしにくい状況ではあります。

堤キャスター:
さらなる円安の加速、この背景には何があるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
為替の行方は日本ではなく、アメリカが握っています。
アメリカが「利下げ」を行えば、日米の金利差が縮まり、為替は円高に振れます。

年内に「利下げ」があると見られていますが、日々のFRB理事の発言によって、「年内に利下げはないのか?」と相場が揺れ、円安が勢いを増しています。

さらにアメリカが「利下げ」を躊躇(ちゅうちょ)しているのは、他国のケースを参考にしている節があります。

堤キャスター:
「他国のケース」とは、どういうことでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
アメリカをはじめ多くの国・地域が物価高にブレーキをかけるため「利上げ」をしました。

これは景気を冷え込ませ、雇用にも影響が大きいので、長くは続けられないと、G7ではじめてカナダが「利下げに」踏み切りました。すると、物価高が予想外に加速してしまったのです。

こうしたケースなどを参考に、アメリカも、早期に「利下げ」できないのではないか、利下げ幅も限定的になりそうだ、との見方が広がり、今週、円安が加速してしまったのです。

株式配当で消費活発化と投資促進

堤キャスター:
為替や金融の動きを、今後も注意深く見守っていく必要がありそうですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
2024年6月27日、日銀が発表した3月末の家計の金融資産は、2023年の同じ時期と比べて約7%増え、2199兆円となっています。

今は投資家が株式の配当を受取る時期なので、この物価高の中、ありがたいという方も多いのではないでしょうか。

受け取った配当金の多くは、再び投資されますが、買い物や旅行などの個人消費にも回るため、GDPにはプラスに寄与します。国民が、国内に投資して、そのお金が企業や個人に、循環する仕組み作りに力を入れていく必要があります。

堤キャスター:
為替の行方・円の価値は、国力にも関係するものです。今の円安による暮らしへの影響には最大限の注意を払いつつ、為替の動きに振り回されない成長する力を高めていくことが必要なように思います。
(「Live News α」6月27日放送分より)

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