令和は老後に「4000万円」必要って本当ですか!? 5年で金額が「2倍」になっているのですが、結局いくら用意すれば安心できるのでしょうか? 少し前は「2000万円」でしたよね…?

老後2000万円問題をおさらい

「老後2000万円問題」は、2019年に金融庁の「金融審議会 市場ワーキング・グループ」が公表した報告書により話題となりました。報告書によれば、老後の収支で約5万円の不足が毎月発生すると仮定すると、30年間の不足総額は2000万円になるとの試算がされていたのです。

2000万円という数字の大きさや、若い頃からライフプランの見通しを立てる必要性を説いた報告書はまたたく間に、国民に「老後資産への不安」を印象付けたのです。

なぜ5年で必要貯蓄額が2倍に?

金融庁の報告書公表からわずか5年で、必要貯蓄額は2倍の4000万円にも上るといわれるようになってしまいました。なぜここまで必要貯蓄額が増えてしまったのでしょうか。

必要貯蓄額が老後2000万円から4000万円に増えた大きな要因は、物価上昇と円安です。2024年5月の消費者物価指数の総合指数は108.1(2020年=100)、前年同月と比べて2.5%上昇しています。物価の上昇は止まらず、私たちの生活に大きな影響を与えています。

また円安も進み、2023年10月には150円を突破、2024年6月21日時点で159.1円となっています。円の価値は低下を続けており、将来的に2000万円の貯蓄では足りないと見通されています。

現実的に4000万円も用意できるのか

実際に現役のうちに4000万円も用意できるのでしょうか。もし現金で用意するならば、20歳から60歳まで働いたとして、単純計算で毎年100万円の貯蓄をつくっていかなければなりません。徹底した節約生活を続ける、投資や資産運用でお金を増やすなどしないと、100万円の貯蓄は簡単にはつくれません。難易度は非常に高いと考えられます。

結局私たちはいくら用意すべき?

「老後のお金がいくら必要か」は人によって異なるため、自分の人生における必要資産額を確かめる必要があります。老後2000万円や4000万円という試算は将来の貯蓄額の指針の一つとなりますが、将来のライフプランや現在の貯蓄額によっては、試算金額よりも少ない金額で賄える場合もあります。

まずは現在の自分の生活費を見直し、毎月どれくらいの支出があるのか見極めてみましょう。現在の生活費が将来の生活費になるとは限りませんが、今後のおおよその支出額の目安を把握することは重要です。現在の生活費+αが将来の生活費になると仮定して、年金で賄えない分はどれくらいになりそうかを確かめてみましょう。

結婚や家の購入など大きなライフイベントの予定を見通しておくことも大切です。大きなライフイベントがあると支出が増えるため、イベント後どのように再び貯蓄額を増やしていくかも考えておくと安心です。

インフレに負けない資産づくりを

「老後4000万円問題」を考えると気が重くなるものですが、実際に老後に必要となるお金は人によって異なります。老後も働き続ける人もいれば、早期退職で多くの退職金を受け取り、早々に老後生活に入る人もいます。ライフプランは人により異なるため、どのような人生を見通すかが重要となってきます。

自分に必要な備えさえしていれば、老後のお金で困ることも少なくなるでしょう。自分の将来に必要な金額を知り、目標を持って資産づくりに励みましょう。

出典

金融庁 「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」
総務省 2020年基準 消費者物価指数

執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP

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