「人生最大のチャンス」を掴め 沖縄出身ドライバー・平良響(23)デビュー戦密着インタビュー【スーパーフォーミュラ2024】

6月22日(土)宮城県・スポーツランドSUGOで開幕したスーパーフォーミュラ第3戦。

ここで地元を背負ってデビュー戦に挑む1人のドライバーがいた。

「今日明日が人生で最大の一番のキーポイントの日かなと思います」

平良響(たいらひびき)、23歳。

沖縄県出身として史上初のスーパーフォーミュラドライバーだ。

「僕が『沖縄県人として初』と言われていくので、そこをしっかり自覚を持って牽引していける存在になりたいです」

県内に小さなカート場がわずかにあるだけ。沖縄はレーシングドライバーを目指すには、決して恵まれた環境とは言えない。

それでも平良は小学1年生からカートを始め、2010年に県内のシリーズでチャンピオンを獲得。2015-2016年ROTAX MAX CHALLENGE(カート世界大会)日本代表。2020年にはFIA-F4年間チャンピオン、そして今シーズンはスーパーGT開幕戦のGT300クラスで初優勝と、さまざまなカテゴリーで実績を残してきた。

「沖縄で練習を重ねて本土のレースに出てコテンパンにされて。また沖縄に戻って練習というのを繰り返していたんですよ。沖縄でどうやって上手になるかを工夫して頑張ってきました」

この平良の晴れ舞台を応援するために、サーキットには同郷のファンの姿も。

まさに、沖縄モータースポーツ界にとって「希望の星」。

そんな平良にとって、スーパーフォーミュラは念願の舞台だった。

去年、登竜門のカテゴリーであるスーパーフォーミュラ・ライツで年間2位。惜しくもチャンピオンを逃し、昇格のチャンスを掴めずにいた。

「去年、ライツで年間2位でスーパーフォーミュラに上がれなかったので、(今回)ピットアウトする時に泣きそうでした」

平良の参戦が決まったのは、わずか3週間前。

ドライバーの1人が開幕戦後に急遽チームを離脱したことで、代役として白羽の矢が立ったのだ。

『ドライバー人生最大のチャンス』

スポット参戦とはいえ、ここで成績を残せば、レギュラードライバーになれるかもしれない。

トップカテゴリーで活躍する姿を地元・沖縄に届けるチャンスが、このデビュー戦にはかかっているのだ。

迎えた予選。

目標は予選Q1で上位6名に入り、Q2へ進出。そしてポイント圏内のグリッドから決勝を迎えること。

予選が始まると、まだ他のドライバーが様子を見る中、スーパーフォーミュラ・デビュー戦の平良は果敢なアタックを見せる。

終盤になると、ランキング上位の常連ドライバーたちが次々とタイムを更新する中、平良もわずかコンマ3秒差に食らいつく。しかし、この差が「大きな壁」だった。チームの星野一樹監督(46)が戻ってきた平良に声をかける。

「セクター1だけ差がすごくデカくて、セクター2、3、4は結構トップと近いんだ。そこのコンマ3が明暗を分けている感じで、それ以外はかなり良かった。惜しかった」

予選Q1突破ラインから0秒355差の10位。コース前半のタイムが振るわず、Q2進出、目標達成とはならなかった。平良も唇を噛む。

「悔しい…。あとコンマ1あれば(スタート位置が)3列前だから。コンマ3でQ1突破?悔しい…」

翌23日(日)、悔しさを晴らすため、少しでも順位を上げようと意気込んだ決勝。

しかし、すぐ先も見通せないほどの降雨・悪天候により、レースはわずか12周で途中終了。

「人生最大のチャレンジ」は霧の中、不完全燃焼の17位でレースは終わった。

夢見ていた大舞台で味わった悔しさ。

それでも平良には走り続ける理由がある。

「自分の実力を思う存分アピールできなくて悔しいですが、今日という日は一生忘れないですし、沖縄のモータースポーツを盛り上げたいというのが頭の片隅にずっとあるので、そこに関しては僕がもっともっと活躍をして沖縄でのモータースポーツの認知を広めるのも大事なのかなと思います」

「僕の活躍がまずは必要になってくるので、沖縄のモータースポーツを盛り上げるためにも、もっと結果を出していきたいなと思います」

(映像・写真提供:JRP)

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