中学生の夏休みの読書と読書感想文に! 気軽に読みたい派にオススメの本6選(2024年版)

中学生の夏休みの読書と読書感想文に! 気軽に読みたい派にオススメの本6選(2024年版)

みなさんこんにちは! 山下ちどりです。1年で一番長い休暇、夏休みがもうすぐやってきます。夏休みの計画を考え始めていますか? 長いお休みだからこそ、遊びも勉強も計画的に、有意義に過ごしたいですね。

さて、夏休みといえば、読書感想文の課題が出される学校も多いことでしょう。「本は好きじゃないし……そもそも普段本を読んでないし……」とか、「読書感想文、苦手なんだよな~」というつぶやきが全国から(!)聞こえてきそうです。

今回は、本を読む習慣があまりない、本を読むのが得意でない、文章を書く習慣がない、というあなたに向けた本紹介です。

この特集は「とにかく楽しく本を読む」ことを第1目標に、ついつい引き込まれてしまうような本をご紹介します。
ラインナップをざっと見て、ピンときた本があったら紹介文を読み、実際の本を手に取ってみてくださいね!

気軽に読みたい派にオススメの本6選

目次1. 気軽に読みたい派にオススメの本6選 1.1. ずばり、読書感想文って書く意味あるの? と思うあなたに 1.2. もしかして、成長期? これって反抗期? と思いはじめているあなたに 1.3. シュール(不条理)で短くて面白い! 小説の楽しさを知りたい人に 1.4. お金持ちになりたい、今すぐに! と思うあなたに 1.5. 高校生活を垣間見たい、ワクワクするようなチャレンジがしたいあなたに 1.6. ベストセラー作家の本だけど未読、というあなたに 1.7. 今年の青少年読書感想文全国コンクール高等学校の部 課題図書『優等生サバイバル』について鼎(てい)談を行いました。 2. おわりに

ずばり、読書感想文って書く意味あるの? と思うあなたに

『あなたの言葉を』

あなたの言葉を

著:辻村 深月
出版社: 毎日新聞出版

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映画化した『かがみの孤城』など、中高生に大人気の作家辻村深月さんによる、中高生向けのエッセイ(随筆)です。毎日小学生新聞に連載されていたコラムを本にまとめたものなので、1つ1つが短く、とっても読みやすいです。

この本の特徴は、なんといっても全体に流れる辻村さんのまなざしの優しいこと! 子どもの気持ちが分かるのは「私も昔、子どもだったから」と答える辻村さんの優しい語りは、大人になりかけているみなさんの心に、じんわりと染みこんでいくはず。大人に対する違和感を持っている人にも、ぜひ読んで欲しいです。書くこと、読むこと、自分の心、友達……と様々なテーマが取り上げられています。

なんと、この本の中には「読書」や「読書感想文」に対する話題があるんです。辻村さんは生徒時代、学級日誌の自由欄に読書感想文についてコメントしたそうです。作家になった辻村さんは、その時のことを振り返ってこのように書いています。

(前略)でも、そういう時、先生とのこの日誌のやりとりを思い出します。本を読むこと、文章を書くことには意味がある。私もまた、あの時の先生がそう言い切ったような強さで、その力を大人として信じたい、伝えたいと勇気がもらえます。

学級日誌には、先生のどんなコメントが書かれていたのか、それはぜひこの本で確認してみてくださいね。私は日々本を選んだり、オススメしたりする学校司書です。オススメした本がつまらなかったら、その子が本から離れてしまったらどうしよう……といつもドキドキ心配しています。

この本は、本の作り手である辻村さんから読者であるみなさんへ、また、昔、子どもだった辻村さんから子ども(大人になろうとする人も含めて)へのメッセージ集です。

この本をきっかけに、辻村さんのたくさんの小説へと読書が広がっていったら嬉しいです。

読書感想文のヒント

多様な題材が取り上げられているので、強く印象に残ったトピックを1つか2つ取り上げて書くとよいですよ。

オススメのもう1冊

もしかして、成長期? これって反抗期? と思いはじめているあなたに

『あした、弁当を作る。』

あした、弁当を作る。

著:ひこ・田中
出版社: 講談社

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すべての中学生はもちろん、中学生の保護者の方にも声を大にしてオススメしたい一冊がこちら。
主人公は中学1年、帰宅部のタツ。最近、母親に触れられるとなぜかゾクッとするんです。タツの母親は専業主婦で、学校で食べるお弁当の他、タツの身の回りの世話(タツの部屋の掃除や洗濯やご飯作りや……その他もろもろ)を一手に担ってくれています。今までは、そのことになんの疑問も感じなかったタツですが、急に気になるようになって……。

この本は、一日目から十三日目までの13の章でできています。1章が20~30ページなので、1日1章読んで13日で読み終わる……はずですが、3章の終わりあたりで、続きが読みたくてページをめくる手が止まらなくなりそうです。

タツは観察力があって、頭の中で思考をぐるぐる巡らせる、愛すべきキャラクター。タツの周りの中学生たちもそれぞれ魅力的で、クラスの中のどこかに彼らが座っているようなリアリティがあります。

この本には、「思春期を迎えた中学生とその親、という親子関係」というテーマの他、「家事労働の分担、男女の社会的性差(ジェンダー)」というテーマの2つが描かれている、と私は感じました。男子中学生、女子中学生、保護者(大人)それぞれの視点で、読後に語り合いたいことが山ほど出てきそうな本です。

読書感想文のヒント

登場人物の誰かの視点に立つと、感想文が書きやすいです。タツは〇〇の行動を取ったが、私なら……そう思う理由は……。と理由とともに書いてみると、意見が相手にもはっきり伝わります。

1つのことがらについて、複数の人の視点で書くと、さらに多面的な洞察になります。タツのように脳内で思考するのが難しければ、紙に書き出して思考を整理してみるのもオススメです。

オススメのもう2冊!

シュール(不条理)で短くて面白い! 小説の楽しさを知りたい人に

『白線以外、踏んだらアウト』

白線以外、踏んだらアウト

著:田丸 雅智
出版社: 光文社

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ショートショート(短くて不思議なお話)の名手と言われ、小中学校の国語の教科書にも載っている人気作家の新作短編小説です。

タイトルにもなっている「白線以外、踏んだらアウト」。みなさん、一度は歩きながらやったことがありますよね。満月の夜に男が1人歩いていると、ラクダも混じる白装束の一行「白線の民」に出会い、巻き込まれてしまいます。「白線の民」は道の白線の上のみを移動し、一歩でも踏み外すと深淵に落ちて二度と戻ることができない人びと。そんなあり得ない設定も、田丸さんの文章の力で、アラブのおとぎ話のような幻想的な旅の世界観にぐいぐいに引き込まれてしまいます。このほかに、給食のパンの残りを机にため込んでしまう子、笑いのオチをことごとく拾われてしまう人、緊張するときに手のひらに書かれる文字の人、などちょっと変な設定のお話が10個詰まった小説集です。どれから読み始めても不思議で面白い! そんな本です。

読書感想文のヒント

ひとまず読書感想文のことを忘れて、本を読むこと自体を楽しんでください。とはいえ、感想文は書かねばなりませんよね。10のお話の中には、感想文を書きやすそうな作品がいくつかあります。一番心が動いた作品について、どんな風に思ったのか、どうしてそう思ったのか、をていねいに掘り下げて考えてみましょう。作品の世界観の面白さについて語るのも、よいと思います。自由研究として、田丸さんの作品のようなショートショートを書いてみたら、課題が2つも終わってしまいますよ!

※参考:第21回坊ちゃん文学賞

オススメのもう1冊

お金持ちになりたい、今すぐに! と思うあなたに

『起業家フェリックスは12歳』

起業家フェリックスは12歳

著:アンドリュー・ノリス
訳:千葉 茂樹
出版社: あすなろ書房

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時はインターネットが出始めた頃(20年くらい前?)のイギリス。フェリックスは幼い頃から商売に興味を持っている中学生の男の子。これまで様々な失敗をしては、学校や警察から注意を受けていました。

そんなフェリックスが始めたのはグリーティングカードの販売。イラストを描くモーをはじめとして、クラスメイトをビジネスパートナーとして巻き込みながら、ビジネスが成長していきます。家のプリンターを使って細々とカード作りをはじめ、Eコマース(インターネット販売や電子決済)の導入、従業員の雇用など、中学生ながらとっても本格的なビジネスで、楽しく読みながら学べます。起業家として成功している叔父さんのアドバイスを得ながら、ビジネスは成長していきますが、最後に大きな転機が……。

中学生も、大人になればいつかは自立の日がやってきます。生活のためのお金を得る、ということは避けて通れませんよね。中学生が実際にビジネスを立ち上げるのは、障壁やリスクがありますが、小説ならノーリスク&ハイリターン! フェリックスとともにビジネスを体験してみませんか。フェリックスたち4人のビジネスパートナーは、それぞれ個性と役割が異なります。

自分は何が得意で、何が好きなんだろう。ビジネスを始めるならこんなことをやってみたい! そんな気持ちになれると思います。

ビジネス=お金儲け=冷徹というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはないのです。この本を読めば、ビジネスを通じて得られる人とのつながりや信頼、感謝の気持ちを感じられるはずです。

読書感想文のヒント

フェリックスのビジネスをいろいろな視点(複数の登場人物の視点)で分析してみると多角的にものごとをとらえることができます。「すごい」とか「私にはできない」という一言で片付けるのではなく、私ならこうする! とぎゅっと自分に引き寄せて、新しいアイデアやプランを加えてみても個性が出ますよ。

オススメのもう1冊

高校生活を垣間見たい、ワクワクするようなチャレンジがしたいあなたに

『さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち』

さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち

著:林 公代

小坂 康之
出版社: イースト・プレス

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高校版プロジェクトXともいえそうなこの本は、なかなか生徒が集まらず、荒れた教育困難校だった北陸の水産高校が起こした奇跡の物語です。14年歴代300人以上の高校生が夢を繋ぎ、自分たちで開発した宇宙日本食を宇宙に送り出すまでのチャレンジの記録が記されています。

熱意あふれる新任の先生と、授業に後ろ向きな高校生。両者が少しずつ化学変化を起こしながら、宇宙日本食への開発に挑みます。しかし、その道のりは途方もなく険しくて、遠かった……。生徒の卒業、閉校の危機、熱意の低下、とさまざまな困難を乗り越えて、彼らの作った「さば缶」がついに宇宙へ!

ぜひこの波瀾万丈ストーリーを味わってください。ページをめくる手が止まらなくなり、中学卒業後の高校生活が楽しみになるはずです。研究の厳しさと楽しさ、大人も子どもも本気で取り組むかっこよさ、応援して次のステップに導いてくれる魅力的な大人たちなど、心に留まるポイントがたくさんあるはずです。

読書感想文のヒント

自分が心動かされた点について、メモ用紙などに自由に書き出してみましょう。14年と長いプロジェクトをまとめた本なので、感想文は気になる登場人物や、出来事に絞って書くとメリハリが付きます。

オススメのもう1冊

ベストセラー作家の本だけど未読、というあなたに

『メンタル脳』

メンタル脳

著:アンデシュ・ハンセン

マッツ・ヴェンブラード
訳:久山 葉子
出版社: 新潮社

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著者のアンデシュ・ハンセンさんは、日本の教養バラエティ番組に出演したこともある、スウェーデン出身の世界的ベストセラー作家です。『スマホ脳』の作者と聞いて「あ、聞いたことある!」と思う中学生もきっといるはず。

この本は『ストレス脳』という大人向けの本を、マッツ・ヴェンブラードという児童文学作家が中高生向けに編集したもの。まさに、みなさんに向けた本なのです。

でもベストセラーの『スマホ脳』が有名すぎて、この本もスマホはダメ! スマホ禁止! と本に言われそうで……と食わず嫌い(読まず嫌いですね)の中学生が多い気がするのです。

最初に書きます。この本はみなさんに「NO! スマホ」を突きつけるものではありません。ですから安心して手にとってくださいね。7章では孤独とSNSの関係についても書かれていますが、直接SNSやスマホについて言及しているのは、全206ページ中たった2ページ。命令や脅しではなく、単なるアドバイスが6行のみです。

では、この本では何が書いてあるのでしょう? 精神科医の知見から脳の仕組みについて説明し、脳と上手につきあって、健やかに心保つためのヒントが書かれているのです。
私はこの本を読むまで、自分の主体は心で、心が脳や体をコントロールしているのだと思っていました。この本によれば、脳は現代に生きる私たちの意思とは異なる役割で動いています。私はこの本を読んで、自分の中にだいぶ異なる別の存在(脳)が住んでいるような感覚になりました。
なぜかというと、脳は太古の昔、ヒトが狩猟採集生活を送っていた頃から大きくは変わっておらず、当時の目的である「生きのびる」ということを第一優先に機能しているからなのです。

脳は幸せや成功といった現代的な感覚とは全く異なる判断をするので、不安やトラウマなどちょっと困るような感情も作り出します。それらは、昔のヒトが生きのびるために必要なことだったのです。脳の仕組みを知り、「よしよし、脳はそう行動するんだね」と上手に扱えたら、今よりちょっと生きやすくなれそうですよ。

読書感想文のヒント

脳の機能について分かったことをメモにまとめてみましょう。不安、記憶、引きこもりなどいくつかのテーマごとに章が分けられているので、気になる1つのテーマに絞って書いてみるのもいいでしょう。過去の経験などを挙げながら、どんな状況になっていたのか、今後は脳の機能を踏まえてどう行動したらよいのか、をまとめてみるのもオススメです。

運動はメンタルによい効果があるそうです。日頃運動をしている人は、運動によって得られる心の変化についてまとめるのも書きやすいですよ。

オススメのもう1冊

今年の青少年読書感想文全国コンクール高等学校の部 課題図書『優等生サバイバル』について鼎(てい)談を行いました。

日本をはじめ、世界でも注目を集める韓国文学。今年、第70回青少年読書感想文全国コンクール 高等学校の部にも選ばれている『優等生サバイバル』からみた韓国の高校生のリアル! を知るべく、翻訳者のキム・イネさんと出版元の評論社さん、山下ちどりで昨年、鼎(てい)談を行いました。

韓国の高校生活のハードさや放課後の楽しみ方について、本の内容に加えて興味深い話題が盛りだくさん。KPOPが好きな人や、受験を意識し始めた中2、中3のみなさんには特にオススメです! 連載は3回にわたり、韓国文学と高校生活に興味がある方々に楽しいお話をお届けしています。記事と合わせてお楽しみください♪

第1弾の鼎(てい)談テーマは「韓国高校生の受験事情」

第2弾の鼎(てい)談テーマは「大学受験」

第3弾の鼎(てい)談テーマは「韓国高校生の放課後」!

おわりに

今回ご紹介した本はいかがでしたか?
最初に紹介した本の中で辻村深月さんはこのように語っています。

私は、本は絶対に読んだ方がいいと思っています。なぜなら、私自身が本を「おもしろい」と思うからです。読書とは勉強ではなく、私にとってはずっと「遊び」で「娯楽」でした。だから、この本を読んでいる皆さんにも、どんな本でもいいから、自分が興味をひかれた本を、無理のない形で読んでほしいな、と思います。

なんてまっすぐなメッセージでしょうか。私も、少しでも本を「楽しい」と思ってもらえたら本当に嬉しいです。

この夏の読書が、あなたにとって楽しい時間になりますように。

この特集には、毎年中学生のみなさんからアンケートにコメントを頂いています。
今年もぜひみなさん、この特集の感想やオススメの本を書き込んでくださいね。

次回は、じっくり読みたい派にオススメの本をご紹介します。
長~い夏休みです、本を気軽に、時にじっくり、楽しんでくださいね!

連載【現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本】では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。

Q1. お名前またはニックネーム(記事でのご紹介が可能かどうかもご記入下さい)

Q2. 属性(可能な範囲で)例:小学生、中学生、高校生、保護者、学校関係、図書館関係、その他等

Q3. 質問やご感想をお寄せください。

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山下ちどり

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

掲載されている情報は公開当時のものです。 絵本ナビ編集部

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