一矢報いる「雑草魂」 藤沢工科高校 廣澤(ひろさわ) 歩(あゆむ)(2年・捕手) 藤沢市

大差で敗れた昨夏から1年。練習グラウンドにいるのは、2年と1年のわずか5人。それでも腐ることなく、練習メニューを考えて今年の夏に備えてきた。

見渡せばまばゆい強豪校たち。昨年の悔しさもよみがえる。でも、高校生活の夏は人生に3度しかない。諦めてしまえば可能性はゼロ。「野球が好き」という気持ちこそ、心の一番大事な柱。それだけは、失いたくはない。

連合を組む深沢高校の部員とは旧知の仲。連携力不足が指摘されやすいが、互いの選手の強みもよく知っている。元々は3塁手だったが、深沢の投手の球を受けられる部員が求められ、春から捕手として試合に臨む。

守備では、グラウンドの中でただ一人、ホームベースからチームメイトを見渡す特殊なポジション。大切にしているのは「声を絶やさないこと」。皆の表情を常に見て、波に乗っている時、逆境に苦しむ時、自身の声で流れを作る。

試合を俯瞰(ふかん)し、頭脳は冷静に心は熱く。これまでとは違う役割を得て、選手として新しい扉を開いた。その成長を夏にぶつける。

小学校3年生から続けてきた野球。自身の失策で試合を崩すことが続いて苦悩したこともあった。そんな時に支えてくれたのは、チームの仲間と家族。全力で試合に挑む姿を見せることが、何よりの恩返し。不安が無いと言えば嘘になる。それを拭い去るために人一倍汗をかいてきた。全国屈指の激戦である神奈川県大会で、雑草魂を見せつける。

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