投信市場全体に前月比1兆円の流入!「オルカン」「S&P500」がけん引する中、次なるトレンドは?

三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年5月の公募ファンドの純資産残高は97兆7532億円で前月比2兆1679億円増額した。資産別には「外国株式型」が51兆248億円で1年間で残高が17兆1496億円も拡大した。資金流出入では月間で約1兆1950億円(前月は1兆3740億円の資金流入)の資金流入があり、海外の株式市場で主要株価指数が上昇したことなどが純資産残高の増加を押し上げた。資金流入額を資産別にみると「外国株式型」が最大で約8510億円、ついで、「エマージング株式型」の約2200億円、そして、「国内株式型」の約1000億円だった。「国内株式型」は、前月の約3550億円の流入額から大きく減額した。一方、資金流出は「不動産投信型」が約450億円、「国内債券型」が約130億円、「その他」が約110億円だった。

◆外国株のトップ3不変、日本株は高配当3商品にそれぞれ100億以上流入

個別ファンドの資金流入額でトップは、「外国株式型」の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の約2010億円、そして、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の約1610億円、「アライアンスB・米国成長株投信D」の約1030億円の順で、上位に変動はなかった。「エマージング株式型」では、「HSBCインド・インフラ株式オープン」の約540億円、「フィデリティ・新興国中小型成長株投信」の約275億円、「インド小型厳選株式ファンド」の約500億円がトップ3で、資金流入額上位にはインド株に投資するファンドへの資金流入が目立っている。

また、「国内株式型」では、トップ3が「日経平均高配当利回り株ファンド」(流入額:約128億円)、「日本好配当株投信」(約125億円)、「日本好配当リバランスオープン2」(約115億円)と高配当株ファンドが占めた。これら、高配当株ファンドは過去1年間のトータルリターンでTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価を上回るリターンを残している。そして、パフォーマンスの面では、「国内株式型」の資金流入額ランキングで第5位の「ダイワ金融新時代ファンド」が、国内株ファンド(ETF、通貨選択型を除く)の中で5月末時点の1年トータルリターンが66.5%と最も高いリターンを記録している。

◆インデックス人気の中、一部の資産クラスでアクティブ台頭

新NISAのスタート以来、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」への集中的な資金流入が目立ち、インデックスファンドに投信人気が集中するような偏りがあったが、「エマージング株式型」や「国内株式型」では、インデックスファンド以外のアクティブファンドがしっかり選ばれて資金流入も続いている。

「外国株式型」は、米国のS&P500やNASDAQ総合といった代表的な株価指数(インデックス)が史上最高値を連続して更新する好調ぶりをみせている。このため、「外国株式型」でのインデックスファンド人気は継続すると考えられる。ただ、その中にあっても資金流入額の第3位に「アライアンスB・米国成長株投信D」が入り、第4位は「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)」(流入額:約566億円)、第5位は「フィデリティ・世界割安成長株投信 B(為替ヘッジなし)」(約320億円)とアクティブファンドも選ばれている。市場が高値を更新することによる高値警戒感へのヘッジ目的としてアクティブファンドが選ばれているという側面もあるといわれている。今後の物色の広がりに注目したい。

一方、資金流出額の大きなファンドは、「ピクテ・グローバル・インカム株式F(毎月分配型)」(流出額:約217億円)、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(ヘッジなし)」(約130億円)、「GSフューチャー・テクノロジー・リーダーズ B」(約125億円)などが「外国株式型」では目立って大きな資金流出だった。資産別で流出額が大きかった「不動産投信型」は、「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)」(約126億円)、「新光US-REITオープン」(約116億円)など、内外問わずに「不動産投信型」から資金が流出している。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

Finasee編集部

「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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