舞台挨拶『カタシロReplica』毎熊克哉、黒沢あすか登壇「台本を知らないってめっちゃ怖い!」

映画『カタシロReplica』が6月21日(金)よりテアトル新宿にて公開した。本作はYouTubeで流行しているTRPG (テーブルトークロールプレイングゲーム) シナリオの初の劇場公開作品となっている。TRPGは進行役とプレイヤーが協力して一つの物語を作り上げる、ゲーム機を使用しない対話型のゲームで、用意されたシナリオに沿って進行役がプレイヤーに様々な質問をしたり行動を促す。プレイヤーはそのシナリオの登場人物になりきり、即興で質問に答えたり舞台上で行動していくことでストーリーが進行する。

出演キャストのリアルなリアクションや、スリリングな演出が見どころとなっており、今回舞台セットではなく実際の病院(スタジオ)で収録することで、これまでより、よりリアリティが加わり、さらに映像や音声の編集が加わることによって、映画とも演劇とも異なる新たな作品が誕生!まだまだ一部の人しか知らない新しいエンターテイメント作品となっている!あっと驚く仕掛けられたストーリーに、初めて見る人はもちろん、すでに「カタシロ」を一度は見たことのある人にも出演キャストによって異なるストーリー展開を楽しめる映画に仕上がっている!

この度、本作の公開を記念し6月26日(水)、27日(木)の2日間、テアトル新宿にて公開記念舞台挨拶を実施した。26日(水)の登壇キャストには毎熊克哉が登場。映画『ケンとカズ』(2016年)で主役を演じ、数々の映画賞を受賞。その後もドラマ・映画・舞台などで幅広く活躍し、現在放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」では義賊の直秀を演じ、影のある役で注目を集めた! 27日(木) の登壇キャストには黒沢あすかが登場。映画『ほしをつぐもの』(1990年)でスクリーンデビュー後は『六月の蛇』(2002年)、『嫌われ松子の一生』(2006年)、『冷たい熱帯魚』(2010年)など多くの話題作に出演、今年の1月放送の日本テレビドラマ「新空港占拠」で天童美香を演じ反響を呼んだ。闇や影を持った凄みのある役はどの作品でもひときわ存在感を放ち、多くの人から支持されている実力派俳優だ。
また本作の脚本・演出・進行役を務めた「カタシロ」の原作者・ディズムも両日登壇し、キャストと本作の魅力や、台本の無い撮影時の心境など余すことなく語り尽くしてもらった。

■6月26日(水) 毎熊克哉&ディズムトーク回
この日を含めた7日間のチケットはすべて完売ということで、会場は連日超満員。映画上映後、「カタシロReplica」の脚本・演出を担当するディズムと、患者役の毎熊が登壇すると会場からは大きな拍手がわき起こった。

そんな熱気あふれる会場内を見渡し、「すごいですね……。全日満席ですからね」と感心した様子の毎熊。この日は実際に観客と一緒に映画を鑑賞していたとのことで、「最後に拍手が起きていましたね。笑い声もあったし。僕自身、台本もなくて、どんなことをするのか分かっていない状態でした。とにかく(病室で)目覚めてくださいとだけ言われて。その時に何を言ったのか、全部は覚えてないですけど、とにかく目の前に変な人(ヘルメットをかぶったディズム)がいるというのだけは覚えています」と笑いながら述懐。

(C)カタシロProject

さらに「自分でやったのであれですが、今日初めて映画を観させていただいて。台本がなかったようにはあまり見えなかった、というのが不思議でした」と付け加えた毎熊。その感想を聞いたディズムも「それはうれしい評価ですね。お客様が映画をどう観たのかということも気になりますが、映画づくりをされている方からどう見えるのか、というのは心配していましたから」と安どした様子だった。

本作の撮影は、台本もなく、即興の芝居で構築されるのが特長だ。「最初に、自分の職業と、自分の記憶の中にある一個の記憶だけは考えていいですよと言われたんですけど、そのふたつの設定だけを(現場に)持っていった。あとは何を言われるのかも分かっていないので。やりながら考えていったという感じですね」と毎熊が振り返ると、ディズムも「実際に病院で寝かされているだけで、どういう話になるのか分からない。しかも一切カメラを止めずに回し続けていたので。ほぼノーカットです」と説明。

そうしたユニークな撮影スタイルを持つ本作に、「自分としては楽しかったですね。1時間30分近く(即興芝居を)やっていたんだなと思うと、けっこうカロリーを使ったんだなと思ったんですが、でもよく考えたら(ディズムの方が)一番カロリーを使ってますよね。(映画版に登場した7人の患者役の)皆さん、全然スタイルが違っているわけですから」と感心した様子で語る毎熊。「千原せいじさんなんか、起きた瞬間に『誰?』って言ってましたからね」と明かして会場を笑わせたディズムだが、医者役として毎熊と芝居で対峙した瞬間を「リアリティという言葉が正しいか分からないんですが、毎熊さんの目線や身体の向きなど、言葉以外の情報量がめちゃくちゃ多くて。それを受け取りながらしゃべっていると、あまりしゃべっていないのにしゃべった気になってくるんですよ」と振り返った。

そしてもうひとりの共演者であるVtuber、堰代ミコについても「それこそミコさんは実際に映像には登場していないんですけど、声から感じ取る感情もあるし、(芝居の)キャッチボールをしている感じがすごくあって、不思議な感じがしました」と振り返った毎熊。そこでディズムが「ミコさんがうまいんですよね」と水を向けると、「うまいですし、好きになっちゃいます」と笑顔をみせた毎熊。「声の質とかもあるんですけど、やはり声から出てくる感情の機微というか。こういうトーンで話しているけど、実はこういうニュアンスを持っているんだろうなとか。軽く聞いているように見えて、実はもう少し深いところを聞いているんだなとか。顔を合わせていないのにそういうことが感じられて。キャッチボールになったなと感じます」とミコとの芝居を振り返った毎熊に対して、ディズムも「そこまで受け取ってやり取りができるのは、毎熊さんだからこそだと思います。もちろんミコさん自身のパスの投げ方というのもありますけど、そのパスをどう受け取るか、どう解釈するのかという差は絶対に生まれると思うので、毎熊さんならではの回になったと思います」としみじみ語った。

会場には、連日の上映に参加している熱心なファンも多数来場。「お話の流れは一緒なんですけど、途中で答える内容と、一応最後の結末は2択ではあるんですが、毎熊さんの回は“第三の道”だったので。そういう意味で明日(黒沢あすかの回)がすごく怖いんです」と語り、会場を沸かせたディズム。そんな黒沢の“衝撃的なエピソード“に毎熊も「うわさには聞いています」と笑ってみせた。

あらためて「カタシロReplica」に参加してみて、感じることも多かった様子の毎熊。「一度話を知ってしまうと、もう(俳優として出演)できないですが、今度はまったく別のシチュエーションでのストーリーに出てみたいなと思います。ただまったく分からないから新鮮で面白かったのかもしれない。仮に違う話で出演したとしても、この枠組みはもう分かっていますからね……」と思うところも多い様子だった。

その上で「台本を知らないってめっちゃ怖いですよ。しかも1時間半近くですから」と語る毎熊は、「自分のことを客観的に見ることができる、いい映像だったなと思います。何も意図してないところもありましたし」としみじみ。ディズムも「願わくは、観に来てくださった方が、毎熊さんの良さだったり、物語の良さだったりを感じ取ってくれたらなと。実際、僕はそれが出ていたと思っています」と自負。その上で毎熊も「僕も今日、皆さんと一緒に映画を観て、一緒に笑ったりもできた。これって家では体験することができない、体験型映画だなと思いました。映画館で知らない人同士で時間を共有する感じってすごくいいですね」としみじみと語った。

そして最後に「今日はとても面白かったんですけど、他の人はどうだったんだろうと。そればかり気になっていました。だからまた東京で上映される機会があるなら、観に行きたいなと思っています」と毎熊がさらなる上映に期待を寄せると、ディズムも「先ほども言った通り、毎熊さんのいろんな目線と動きと、いろんな情報がほとばしって伝わってきて、それに対してどう返していくか。それを積み上げていった、特別な物語になりました。どうもありがとうございます」と観客に呼びかけた。

■6月27日(木) 黒沢あすか&ディズムトーク回
シリーズ屈指の衝撃作となった本作ということもあり、映画終了後、力強い拍手が会場に鳴り響いた。そんな熱狂的な観客の前に立った黒沢は「映画を観て、なんてことをやってしまったんだろうと。なんだかアドレナリンが出ちゃってますよね」と切り出して、会場も大爆笑。

そんな黒沢の楽しげな様子に「それを言うならスタジオに入ってきた時からだいぶテンションが高かったんですよ」と語るディズムに対して、「本当に楽しかったんですよ。まず台本がないということが楽しかった。束縛されないということが」と言い切った黒沢。それを聞いて「(身体的に)束縛はされていましたよ」とするディズムのツッコミに会場もドッと沸いた。

(C)カタシロProject

さらに「やはり自分が本職としているものは、監督の指導があって、セリフがあって、という世界なんですが、これはわたしが本当に大好きな、一発で勝負するということ。セリフなんて関係ないということ。そして相手がかけてくれる言葉に、どうやって反応できるか。それを試されるんだなと。この年になってその時期がようやく来たのかと思いました」と興奮気味にたたみかける黒沢。「それを聞いてなんだか恐れ多いです」と思わずタジタジなディズム。さらに「わたしが一番大事だと思うのは、こういう風にディスカッションをして。その中でどういうものがスパークするかということ」と力説する黒沢に、「スパークしきってましたよね」としみじみと返したディズム。そんなふたりの軽妙なやり取りに、会場も笑いが絶えなかった。

かくして「カタシロReplica」の世界観を十分に堪能した様子の黒沢だったが、「でもこれは本当の現場では無理です!今の時代にそぐわない!」とキッパリと言い切ると、大きな笑いとともに、それでもやりきった黒沢をたたえるような、大きな拍手が贈られた。

配信・舞台版とは違い、映像版では“編集を行う”ということを特長としているが、「この作品にディズムさんがオッケーを出して。ひとつの作品として皆さんの前にお披露目するわけですから。わたしはディズムさんを信じていますし、現場でもすべてを一任しておりました」と全幅の信頼を寄せる黒沢。そんな彼女のラブコールに、「現場でも答えられるか必死でした」と笑うディズムは、「でもおっしゃる通り、セリフがないから、セリフをどこまで続けるかも探り探りでした。どこの絵を残すか、というのも映像なので編集でカットすることもできるんですけど、でもせっかく一発撮りで全部を通しで撮っているので、1幕ものの価値を損なわない範囲でというのをギリギリまで考えたつもりです」とコメント。

その上で「ただどう伝わったのか。僕はずっと心配しています。このあとSNSを観るのが怖いです」とぶちまけたディズムのボヤキに会場は大笑い。「それはわたしも一緒ですよ! 何を言われるか分からないですから」とその意見に同調した黒沢に対して、ディズムは「でも僕は面白いと思っていますから。届けばいいなと思っています」と返した。

その後もクライマックスの衝撃展開について「あそこはすごかった」「あそこは○○だったんですよ」などと語り合うふたりの裏話の数々に、爆笑しながらも、興味津々な様子で耳を傾ける観客たち。「こういった台本なしのお芝居ってエチュードというんですけど、わたしが11歳の時にこの世界に入った時、児童劇団の先生が教えてくださったことがあったんです。決められたテキストを読んで演技を磨くのではなく、エチュードを通して自分の感性を磨きなさいと。だからあらすじだけ教えてもらって、あとは何十分もお互いに向かい合って、相手の言葉を聞いて返すお芝居というのをやっていました。それは40数年前のことですが、そういった下地をつくっておくと身を助けることもあるんだなと。ディズムさんにも会えたし。この作品で、黒沢あすかはどうだろうかと名前を挙げていただけたのも、すべてが今日につながっているんだなと感じております。本当にありがとうございました」と感慨深い様子で語った。

今後、テアトル梅田、アップリンク京都でも追加上映が決定しており、この盛り上がりは全国各地に広がっていくことは間違いない。

(C)カタシロProject

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