発がん性指摘される有機フッ素化合物「PFAS」 異例の水道水全国調査へ 「広範囲に広がることが問題」

国が、水道水の全国調査に乗り出すことが分かりました。異例の調査の背景には、その有害性が指摘されている化学物質「PFAS」の存在があります。

■永遠の化学物質“PFAS”が地下水から検出 全国で水道水の調査が行われることに

大阪市東淀川区の瑞光寺。 遠山明文住職は「この水が地下水を利用しているんですが…」と、境内で利用する湧き水について、不安を口にします。

【瑞光寺 遠山明文住職】「この水は、飲めません」

飲めない理由の一つは、有害性が注目されている有機フッ素化合物「PFAS」です。

「PFAS」は熱に強く、水や油をはじくなどの特性があり、フライパンのコーティングや、布製品のはっ水加工、消火剤などに使用されてきました。

しかし、世界的に発がん性などが指摘されていて、WHOの専門組織は、昨年、PFASの一部の発がん性について、評価を2段階引き上げ、タバコやアスベストと同じ「発がん性がある」グループに分類。

一方、日本国内ではその発がん性について「証拠は限定的」と評価されていますが、現在はPFASの一部の物質について、輸入や製造が原則禁止されています。

こちらの寺の地下水では、国が暫定的に定めた目標値を大きく上回るPFASが検出されたということです。

【瑞光寺遠山明文住職】「残念やな、汚されたというか」

専門家は、PFASについて、こう話します。

【京都大学大学院医学研究科 原田浩二准教授】「このPFASというのは非常に壊れにくい、永遠の化学物質とも呼ばれています。われわれが直接それを摂取しうるかどうかということが、まず重要だと思いますので、まずは水道水の安全性、これを確保することが重要」

こうしたなか、国は異例となる水道水の「全国調査」に乗り出しました。

【伊藤信太郎環境相】「世界的に見ても、知見が十分に集約されていないと思います。知見を集約するためにも、エビデンスというかデータを収集しそれを立体的に分析するということは重要」

■すでに飲み水に影響が出ている自治体も…

すでに、飲み水に影響が出た町もあります。

【岡山・吉備中央町 山本雅則町長】「国の暫定目標値を超えていたことが判明したため、給水対応を取ったところ。対応が遅れたことおわび申し上げる」

岡山県吉備中央町では、浄水場の水から最大で目標値の28倍のPFASが検出。一時は飲み水の利用制限も行われ、早ければことし10月には、住民の健康調査も行われる予定です。

【住民】「ちょっと考えられない。まさか自分らに、こんなことが降りかかってくるとは思わなかった」

【住民】「いつから混入しているか分からないから、知らない間に摂取しているかもしれない。その辺が一番心配」

■大阪・摂津市では国内で最も高い含有量を記録 「すぐに健康被害がでる可能性は低い」と専門家

関西でも「PFAS」は広がっています。

京都府綾部市の川では、去年の水質調査で、目標値を上回る「PFAS」が検出。ことし6月には、地元の市民団体が要望書を提出するなど、住民からも、対策の強化が求められています。

大阪府摂津市では、環境省が全国の地下水などを対象に行った調査で、目標値の400倍以上、1リットルあたり2万1000ナノグラムという、国内で最も高い含有量を記録しました。

水道水は目標値を下回っているということで、摂津市は地下水を飲まないように呼びかけています。

一方で、住民からは、健康への影響を心配する声も。

【摂津市に住む人(80代)】「これはえらいこっちゃなあと思って。これは日本全国に広がる可能性ある」

こちらの男性は、ことし、血液検査でPFASの血中濃度を調べました。すると、アメリカでは健康に影響が出るおそれがある基準とされている、1ミリリットルあたり20ナノグラムを上回る数値が出たのです。

【摂津市に住む人(80代)】「32.2というのはかなり高い。(Q.普段の生活で地下水を使うことは?)絶対ない」

摂津市に住んでいることとの関連は不明で、今のところ、直接的な健康被害はありませんが、男性は、この問題が長期にわたるのではないかと不安を感じています。

【摂津市に住む人(80代)】「僕もだけど、これから若い人が大変だと思って。あっちこっちでバタバタ倒れるという人がいないから、なおさら潜在的っていうか怖いなと思います」

専門家は、仮に飲み水にPFASが含まれていたとしても、すぐに健康被害が出る可能性は低いとしながらも、対策の重要性について、こう指摘します。

【京都大学大学院医学研究科 原田浩二准教授】「長期的な汚染につながると、非常にたくさんの人が少しずつでも病気へのなりやすさが上がってしまう。非常に広範囲に広がっていくことが一番問題だと思います。全国的な調査をするというのは前進していると思います」

多くの人に不安を与えている「PFAS」問題。生活に欠かせない水道水を安心して使えるように、素早い対応が求められています。

■かつてアメリカでは牛の大量死の原因として裁判が行われたことも

国がまとめた、PFASの検出状況です。色がついている箇所が、国の目標値を超えている所ですが、関東や関西そして九州など全国的に広がっています。

そもそもなぜ「PFAS」が、私たちの飲み水に含まれるようになったのでしょうか。

PFASは分解されにくく、“永遠の化学物質“とも呼ばれています。かつて使用していた工場などから、地下水や河川に流れ込み、浄水場を通って、水道水として私たちの飲み水にも含まれる可能性があるということです。

発がん性との関連も指摘されていて、気になるところです。

【菊地幸夫弁護士】「この問題に関しては少し歴史があって、90年代末にアメリカのある州で畜産農家の牛が大量に死ぬという事件がありましたで。そこの農家を流れてる川の上流にある、企業の排出物質が原因じゃないかということを訴えられた弁護士が、長く困難な裁判の末に、その大企業を相手に莫大な和解金を取りました。そこで問題となったのが、このPFASの中の一種のPFOAとか、こういう物質です。ですから、これが日本でまた繰り返されて深刻な健康被害が出てこないかというところは、非常に懸念されるところだと思います」

対策が気になるところです。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「まだ水道水の調査これからということですけど、やっぱり不安に感じる方がいらっしゃると思うので、もし心配になるなら、防衛策としては一部PFASが除去できる浄水器があるので、そういうものを購入されて、例えば飲料水や調理に使われる水は、その浄水器を使った水を使われたらいいかなと思います」
私たちの体の中に入るものです。国の対応がごてごてにならないよう、しっかりとした実態把握、実態調査を行ってほしいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月27日放送)

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