保護猫の半数近くが殺処分…譲渡で救われる命も “不幸な猫”を減らすため「正しい飼い方を」【宮城発】

2023年度、仙台市内で保護された飼い主のいない猫は255匹。このうち半数近くの109匹の猫が殺処分されたという。1匹でも多くの命を救うために、仙台市動物管理センター(アニパル仙台)は譲渡事業をより多くの人に知ってもらいたいと活動している。

譲渡会で飼い主を「探す」

6月15日に仙台市動物管理センターで開かれた譲渡会。飼い主を募集している11匹の猫がケージに入れられて並んだ。子猫もいるがメインは1歳以上の成猫だ。

成猫は子猫に比べて希望する飼い主が少なく、保護から譲渡まで時間がかかることが多いというが、子猫と違い留守番もできるため、初めて飼う人にもおすすめだという。譲渡会では、猫を抱いたりエサを与えたりして、ふれあいながら引き取るかどうかを決められる。

譲渡には厳格なチェックが必要

飼っていた猫と死別したという名取市の男性は、悩んだ末に1匹を引き取ることに決めた。

譲渡にあたっては、飼育環境など綿密な確認が行われる。譲渡希望者は18歳以上で、同居家族全員が飼育に賛成していることが必要だ。

「ペット飼育可」の規約が確認できない賃貸住宅や、家族が全員65歳以上で世話人の承諾書が提出されない場合などは譲渡を断られる。

また、飼育崩壊などを防ぐため、仙台市動物管理センターは家族の人数や部屋数によって飼育可能な数を定めていて、すでにたくさんの動物を飼育している場合も断られることがあるという。

今回の譲渡会では、保護猫5匹の譲渡先が決まり、新しい家族へ引き渡された。

保護猫減っても…増えない譲渡

過去7年間に仙台市動物管理センターに保護された猫は減少傾向にあり、2022年度は250匹と最も少なくなった。一方で、譲渡数も117匹と最少で、保護された猫に占める割合は48.3%と、例年とほとんど変わらなかった。譲渡されなかったすべての猫が殺処分されるわけではないが、けがをした猫など救えなかった命を含めて96匹が殺処分されたという。

翌2023年度も255匹の猫が保護され123匹が譲渡されたが、半数近くの109匹は殺処分となった。

知ってほしい譲渡事業

殺処分を減らすために力を入れているのが譲渡事業だ。去年11月に仙台市動物管理センターで保護猫を引き取った家庭を訪ねると、2匹の猫が出迎えてくれた。

好奇心旺盛な「ちとせ」とおっとりした性格の「みこと」。見た目も性格も違うが兄弟猫だという。生後10日ほどで保護され、高田淳さん頌子さん夫妻に引き取られた。名前には「長生きするように」という願いを込めたという。

頌子さんが実家で保護猫を飼っていたこともあり、保護猫を引き取りたいと考えたという夫妻。飼い主が見つからず殺処分になる保護猫が多い現状に心を痛めていたという。「ちとせ」と「みこと」は今、かけがえのない家族になっている。

不幸な猫を増やさないために

殺処分を減らすには譲渡だけでなく、飼い主のいない猫を増やさないことも重要だ。

生後6カ月ほどで子を産めるようになる猫。年に2~3回出産し、1度に4~8匹の子猫が生まれる。仙台市は2020年4月、猫の屋内飼育や不妊去勢手術をするよう飼い主に求める「人と猫との共生に関する条例」を施行した。

条例では飼い主の責任だけでなく、市民に対しても、野良猫へ無責任に餌を与えないよう求め、不妊去勢手術をして地域で管理する「地域猫」に移行させるよう努めるとしている。

大切なことは責任を持つこと

仙台市内では殺処分とは別に、年間1500匹以上の飼い主不明の猫が交通事故などで死んでいる。

野良猫だけでなく屋外で飼われていた猫も含まれているとみられ、条例で努力義務としている屋内飼育が守られていない状況も透けて見える。不幸な猫を増やさないために、動物管理センターは保護猫の譲渡事業を多くの人に知ってもらうとともに、正しい飼い方をするよう呼びかけている。

仙台市動物管理センター釜谷大輔所長

「センターにも自分が飼える猫がいることを1つの選択肢として知ってもらいたい。また、すでに飼っている人は最後まで責任を持って大切に飼ってほしい。飼い猫を外に出さないで屋内で飼い、避妊去勢手術もしっかり行ってもらいたい」

ともに暮らす命に、最後まで責任を持つこと。当たり前のことが今、求められている。

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