「相続登記」が2024年4月から申請義務化に!理解度を深めるクイズもチャレンジして

相続登記ってどうすればいい?

土地や建物などの不動産を相続したときに行う「相続登記」の申請が、今年4月から義務化に。でも「何をどうすればいいのかわからない」「そもそも相続登記とはどういうもの?」という人も多いのでは。東京法務局不動産登記部門の髙橋富美代さんに聞きました。

※2024年5月24日~ 6月3日にリビングWebで実施。有効回答数1001人。

「相続登記理解度クイズ」

\ 実施中 /リビング東京Webでは「相続登記理解度クイズ」を実施中。この記事の中にもヒントがあるので、ぜひチャレンジしてくださいね。

クイズはこちらから

Attention

2024年4月からスタート 不動産の相続登記が“義務”に

相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によって取得した不動産(土地・建物)について、「相続登記の申請」が2024年4月1日から義務づけられました。

不動産を相続したことを知った日から3年以内が登記の期限

登記の期限は、不動産を相続したことを知った日から3年以内。義務化になった2024年4月より前に発生した相続でも、未登記の場合は2027年3月末までに相続登記を申請する義務が課せられます。

相続登記をしない場合10万円以下の過料が発生することも

正当な理由なく相続登記の申請をしなかった場合、10万円以下の過料が発生する可能性があります。

義務化された背景には“所有者不明土地”の問題が

「相続登記」とは、相続を原因として不動産の所有権が相続人に移った場合に行う登記のこと。登記簿にあるデータは、所有者が亡くなっても自動的に書き換わらないため登記の申請が必要です。この「相続登記」を、不動産を相続したことを知った日から3年以内に行うことが2024年4月から「義務」になりました。

「背景に“所有者不明土地”の増加があります」と髙橋さん。「2017年の民間の調査(※)では、九州よりも少し広い約410万haが所有者不明土地となっていて、そのままにしておくと2040年には北海道の面積に匹敵する約720万haになると予測されているんです」

相続登記をしないまま年月が経ってしまうと、相続人がその土地を把握してなかったり、その相続人たちが亡くなって相続関係が複雑になったりと、所有者不明土地の問題を深刻化させることにも。「公共事業などに影響がでるほか、身近なところでは空き家問題にもつながっていることから、法改正等で義務付けられました」と話します。

※所有者不明土地問題研究会最終報告(2017年)より

自身で手続きすることは可能 司法書士などプロに任せるのも手

相続登記の申請義務化について、「これ以上所有者不明土地が増えないようにするため、そして不動産を後の世代に正しく受け継いでいくために必要なこと」と髙橋さん。手続きは自身で行うことも可能で、「その場合、書類作成などはご自身で行っていただくことになります。法務局で申請書の書き方や必要書類についての案内をWeb・対面・電話で行っていますのでぜひご活用ください(いずれも予約制)」。

ただ、不備なく書類を記入する必要があるうえ、相続の形態によっては、数多くの書類を集めなければいけないことも。「例えば亡くなった人の戸籍謄本は、出生から死亡までのすべてが記載されたものが必要ですが、場合によっては両親や兄弟についても同様に取り寄せなければならないこともあります」。費用はかかるものの、司法書士などに任す人が多いそう。必要に応じてプロの手も借りることも視野に入れつつ、自分事となったときに備えて今から知識をもっておきたいですね。

\ 相続登記手続きの主な流れ/

相続人の特定から始まり、書類の作成、収集を経て法務局へ申請するのが主な流れです。

1 相続人の特定

まず誰が「相続人」なのかを特定します。遺言があればこれに従い、なければ相続人全員で遺産分割を協議して各財産の相続人を決定します。相続人の中に連絡が取れない人や行方が分からない人がいる場合は、手続きができない場合があるので家庭裁判所に相談を。

2 相続する不動産の確認

亡くなった人がどのような不動産(土地・建物)を所有していたかを、登記済権利証や固定資産税の納税通知書などで確認します。

3 必要書類の収集

相続登記に必要な、以下の書類を準備します。

・亡くなった人の出生から死亡までの戸(除)籍謄本

・相続人の戸籍謄(抄)本と住民票の写し

・遺言書または遺産分割協議書

・そのほか必要になる場合がある手続きのための書類収集

※相続放棄する人や未成年がいる場合、遺言執行者の選任が必要な場合は家庭裁判所で手続きを行います。

4 登記申請書等の作成

相続の形態に合わせて登記申請書を作成します。

5 法務局へ書類を提出

相続する不動産を管轄する法務局へ登記申請書・必要書類を提出します。窓口のほか、郵送、オンラインでも申請可能。提出登記申請には登録免許税が必要です。

6 相続登記の完了

登記申請書の不備や不足する書類がなければ、法務局へ書類を申請してから1週間~ 10日ほどで登記が完了します(提出先の法務局により異なります)。

読者アンケートで寄せられた「相続登記の申請義務化」に関する疑問について、東京法務局の髙橋富美代さんに聞きました。

Q 登録免許税がかかると聞きましたが金額は?A 原則は課税標準の1000分の4、免税措置も

相続登記の申請には、「登録免許税」がかかります。金額は原則として課税標準(固定資産課税台帳の価格)の1000分の4。ただし、2025年3月31日までは、2つの免税措置があります。

まず、相続人が相続登記しないまま亡くなった場合。例えば、祖父→父→本人と相続した場合の、祖父→父の登録免許税は免除に。また、課税標準が100万円以下の土地の場合も登録免許税が免除になります。

Q 万一、3年以内に相続登記申請できない場合は?A ひとまず新設の「相続人申告登記」を活用して

相続人に行方不明の人がいたり遺産分割でもめたりすると、3年以内に相続登記の申請ができないことも。そういう場合には、2024年4月に新設された「相続人申告登記」を行えば、ひとまず申請義務を履行したとみなされ、過料も免れます。ただし、これは暫定的な対応なので、追って正式に相続登記の申請をする必要があります。

Q 将来に備えて今から準備しておくべきことは?A 自分の財産を把握し、記録を残しておいて

やはり、一番有効なのは、自分の財産をきちんと把握して記録して残しておくこと。エンディングノートなどを作成しておくのもおすすめです。東京法務局でもエンディングノート「未来につなぐわたしの相続ノート」を作成していて、WEBからダウンロードできます。また、お子さんがいない人は、配偶者と親(親が亡くなっている場合は兄弟姉妹)が法定相続人になりますが、配偶者に全部残したい場合などに、遺言書の作成も有効です。

Q 相続登記をしないデメリットは?A 不動産が売却できず困ることも

例えばAさんが亡くなり、相続登記をしないまま、その配偶者も亡くなり、さらにその子どもも亡くなると、法定相続人が増え相続が複雑になるデメリットがあります。また、相続した不動産を亡くなった人の名義のままにしている状態では、売却することができないため、売りたいと思ったときに、タイミングを逃すことにもつながります。そこも踏まえてきちんと登記申請をすることが大切です。

東京法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/

2024年4月に義務化されたことを、約6割が「知らなかった」と回答。義務化前に相続した不動産であっても登記申請をしないと過料が発生する場合もあるので、相続登記をしていない不動産などがあれば早めに対応する必要があります。

相続登記の申請義務化を「知っている」と回答した人に質問したところ、過料がかかることについて「知っている」人は約6割。関心の高さがうかがえます。

不動産を相続したことがあると回答した人への質問。登記を行っているのは23人で、そのうちの半数以上がプロに申請を任せたと回答。

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