娘のため、責任を追及 父「反省なく許せない」 野々市・中1いじめ自死、両親が市提訴

 2021年2月、野々市市布水中1年の女子生徒=当時(13)=がいじめを受けて自ら命を絶った問題で、自死の原因は学校側が適切ないじめ防止措置を怠ったことにあるとして、生徒の両親が27日、市に7227万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。会見した生徒の父親(53)は「娘のために、裁判で責任の所在をはっきりさせたい」と思いを語った。

 訴状によると、女子生徒は主に20年9月以降、複数のクラスメートから仲間外れにされたり、「学校来んな」と悪口を言われたりするなど、孤立させるようないじめを繰り返し受けた。生徒は学校にいじめを訴えたが、学校は的確な対応をせず放置したとしている。

 訴状では、人格を否定するような同級生の言動が継続された上、学校に相談しても改善されなかったことが心理的負荷となり、女子生徒は適応障害を発病していたと主張。学年主任の教諭は遅くとも同11月には、いじめを把握していたのに、いじめを防ぐ注意義務を怠ったとした。

 生徒の自死を巡っては、市教委が設置した第三者調査委員会が昨年2月、29件の行為をいじめと認定し「自殺の原因となった」とする報告書を公表した。学校側の対応が不十分だったと指摘している。

 両親は、いじめを行ったとされる生徒8人に損害賠償を求める民事調停を金沢簡裁に申し立て、3人とは調停が成立、1人とは不調に終わった。残る4人と協議を続けている。

  ●死を望み、絶望つづる

  ●生徒の日記、アンケート公開

 「野々市市は何の反省もなく、なかったことにしている。許せない」。金沢弁護士会館で会見した女子生徒の父親は、時折、ハンカチで涙を拭いながら裁判への思いを語った。

 最愛の娘を失った後は「何をすればいいのかも分からなかった」。それから3年4カ月余り。調査報告書では学校の問題が指摘されたが、関係者は誰も処分を受けていないといい、訴訟を通して責任を追及することにしたと説明した。

 「来世では幸せにして下さい」。父親がこの日、報道機関に公開した生徒の日記には、死にたいという気持ちやいじめに絶望する思いが吐露されていた。

 学校のいじめアンケートの回答用紙も公表した。生徒は複数のアンケートでいじめを申告していたが、亡くなる前日には、いじめを受けて「いない」と回答していた。代理人弁護士は「学校から対処がなされず、無力感にさいなまれていた」とみる。

 今回の訴訟は、いじめや過労の自死事件を扱う「自死遺族支援弁護団」の弁護士3人が代理人に就いた。生越照幸弁護士(大阪弁護士会)は「教室で無視され、先生に訴えても助けてくれない、というのは心理的負荷が強い」とし、直接的な暴力がない事案も軽く捉えてはならないと訴えた。

 野々市市の粟貴章市長は27日、北國新聞社の取材に対し「訴状を見ていないし、詳しい内容も分からずコメントは控えたい。ただ、これまでも真摯(しんし)に対応してきたつもりだし、これからも真摯に対応していくという姿勢は変わらない」と述べた。

  ●粟市長「真摯に対応する」

 市教育委員会は訴状が届き次第、教育委員に報告し、内容を精査して対応を検討することにしている。27日は市民から、提訴に関する問い合わせの電話が数件あったという。

 27日は市議会6月定例会最終日で、議員控室でも提訴が話題になった。北村大助議長は「訴訟の推移を見守るしかない」と語った。

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