赤字続きで名古屋市のリハビリ施設が一部閉鎖 利用者からは行き先が見つからず悲痛の声

メ~テレ(名古屋テレビ)

名古屋市が管轄するリハビリ施設の一部が、28日で閉鎖されます。利用者の中には、来月から通う施設がまだ見つかっていない人もいて、悲痛な声が上がっています。

瑞穂区にある、名古屋市総合リハビリテーションセンター「通所リハビリ棟」では、28日、器具を使って訓練を行う人々がいました。 皆さん、真剣な表情でリハビリに取り組んでいます。 しかし、ここは28日で閉鎖されてしまいます。 「さみしい」(失語症でリハビリに通う男性)

赤字が続き、今年度末で廃止に

市内初の専門施設として、総合リハビリセンターは1989年から障害がある人たちの相談や治療・訓練、社会復帰へのサポートなどを行ってきました。 しかし、2020年ごろから赤字の状態が続き、リハビリセンターでの介護保険事業は今年度末に廃止されることになりました。 「現状、通所リハビリ棟は1億3000万円の経費がかかるが、介護報酬(収入)は1億円。毎年3000万というお金が、一般財源からの投入が必要になる。そうした中で、運営が困難になってきている現状がある。介護報酬だけで見ると赤字」(名古屋市障害福祉部 小場谷光裕課長) 来月から「通所リハビリ棟」で工事が始まるため、6月28日が最後の利用日となりました。

別の施設を探すよう伝える

利用者や労働組合などで作る市民団体によると、「通所リハビリ」の利用者は約250人います。 名古屋市は今年1月に、6月末での閉鎖を通知し利用者に対し、別の施設を探すよう伝えました。 「民間を含め、市中の事業所は増えてきているので今回、閉所に至った」(小場谷課長)

「言葉にならない」という利用者の声

しかし―― 「人数的に限られているかもしれないが、リハビリだけをしてくださるところは他にない。閉所と聞いて、青天の霹靂というか、ちょっと言葉にならない。行き先まだ決まってないです」(『通所リハビリ』の利用者の妻) 総合リハビリセンターに、8年前から夫が通っているという女性。 夫は失語症で、言語聴覚士から訓練を受けていましたが、来月以降に通う施設が見つかっていないといいます。 利用者や労働組合などで作る市民団体によると、この男性のように、言語聴覚士の訓練を必要としながら、来月以降の施設が決まっていない人は、合わせて5人います。

リハビリで、少しずつ話せるようになった矢先…

また6年前に脳出血で倒れ、失語症になったという男性。 これまで数人のグループでリハビリを続け、少しずつ話せるようになってきたといいます。 Q.友達ができたりしましたか? 「年上の男が一人いる」(失語症でリハビリに通う男性) 「ここまで、自分から話をするようになったのが驚き。前までは、そんなことできなかったから」(『通所リハビリ』の利用者の妻) しかし、来月から通うことになった民間の施設では、1人で訓練を受けることになるため、不安を感じているそうです。 「グループレッスンではないが、一枠空いていたからそこに入った。リハビリセンターのようなリハビリは、できないけどと言われました。本人も体験はしたが、気が進まないと思う。でも選択肢がない。だからそこに行くことになります」(『通所リハビリ』の利用者の妻)

市民団体は1万3000筆以上の署名を提出

「できれば、この公の機関でリハビリができるようにしてほしい」(『通所リハビリ』の利用者の妻) 利用者や労働組合などで作る市民団体は「通所リハビリ」の継続や、今後の利用先の確保などを求め名古屋市に、合わせて1万3000筆以上の署名を提出しました。

利用者や家族の切実な訴えを受けて…

「言語訓練や、他の身体のリハビリの方たちもそうですが、この施設に通われている方々が、本当にここがいいと思って来てくださっていたのが、泣く泣く仕方なく諦めて他の施設に行かなければならないのは、とても残念なことだなと思います」(市民団体 加藤さゆりさん) 利用者や家族の切実な訴えを、名古屋市は、どうとらえているのでしょうか。 「1万3000筆の署名を受け取っておりますので、それは非常に重いものだと認識しています。名古屋市としては、行き場がなくなることは、一番避けないといけないと思っているので。運営している事業団と協力して、ケアマネージャーさんを通じて、施設の利用者の行き場がないことだけは、ないようにということを第一に考えて、対応を進めております」(名古屋市障害福祉部 小場谷光裕課長)

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