新紙幣発行迫るも店側は「大きい負担」 券売機など対応間に合わず補助もなし 一方でスマホ決済など新サービスの導入も

2024年7月3日から、20年ぶりに新たなデザインの新紙幣が発行される。新紙幣のデザインは、福沢諭吉でお馴染みだった1万円札は実業家の渋沢栄一になり、五千円札は女性への教育に尽力した津田梅子に。千円札は、細菌学で功績をあげた北里柴三郎の肖像に変わる。
愛媛県内の飲食店店などを取材すると、券売機や両替機の更新にかかる費用など金銭的負担は少なくないようだ。

材料費高騰に加え券売機の更新費用も

愛媛・松山市にあるラーメン店「味噌とんこつらーめん まる」は、券売機にお金を入れて好きなメニューを押して買うというシステムだ。

店では2週間ほどに迫った新紙幣の発行に対応したいと考えているものの、すぐに決断できない理由があった。大きな負担になっているのが、更新にかかる費用だ。川口佳子店長によると、価格は券売機にもよるが、10万円以上はかかるという。

2023年5月には材料費高騰の影響でラーメンを100円値上げし、店の経営を取り巻く状況が日々厳しくなる中、新紙幣への対応も迫られている。色々と材料費やコストも上がっているという中での紙幣の対応は、店側にとっても痛いようだ。

平日の昼や週末は2人、平日の夜は1人と、少人数で店を切り盛りする川口さんは「スタッフ1人分くらいの価値があるくらい。これでお客さんがスムーズに回転できたりとかレジをしなくても済むという点では時間の効率は良いですね」と、店の営業に券売機が必要不可欠だと話す。

川口さんの店では、2024年末までには券売機の更新を終えたいとしている。

補助は一切なし 金銭的負担大きく

そもそも、なぜ紙幣を新しくするのかというと、長い間デザインが変わらないと偽造紙幣が出回る恐れがあるためだ。

財務省は20年周期で新しい紙幣を発行していて、新紙幣には、3Dホログラムという偽造を防ぐ技術が世界で初めて採用された。お札を回すと肖像が回転して見えるようになっている。

愛媛県内28カ所のコインランドリーを運営する「ミッキークリーニング」では現在、6割ほどの店舗で両替機の部品交換が完了しているという。

ミッキークリーニングの山本義貴専務取締役は、「1カ月くらい前に部品を取り寄せ、7月3日に間に合うように用意をしていた」と話す。

部品交換が完了した両替機の中を見ると、読み取り機には新紙幣に対応していることを示す黄色いシールが貼られていた。

両替機の部品交換は先週から進められているが、山本さんは「費用面も合計250万円くらいはかかっておりますので、負担は大きいですね。補助が一切ない状態ですので、大きい負担になります」と話し、金銭的負担は少なくない様子だ。

ミッキークリーニングでは、残りの店舗の機械の交換を7月初旬までに終わらせる予定だ。

半年以上前に注文も生産追い付かず?

一方、愛媛県内で25カ所のコインパーキングを運営する「あなぶきハウジングサービス」では、精算機の更新作業はまだ始まっていない。

半年以上前から注文しているものの、なかなかメーカーから機械が入荷しないという。

あなぶきハウジングサービスパーキング事業部の菊池浩志松山エリアマネージャーによると、「本来なら6月には入れ替えて7月3日の発行には間に合わせたかったが、まだ6月の予定は入っていない」ということで、7月から順次、更新を始める予定だ。

菊池さんは「結局生産が追いついていないのかなという。想像ですけどね。コインパーキングだけじゃなくて、自動販売機とか、いろんなキャッシャー全部この(紙幣の)識別が絡んできますからね」「希望としては7月中には終わらせたいんですけど、ひょっとすると8月にずれこむ可能性もあるかもしれません」と話す。

そんな中、この会社では新たなサービスとして、現金要らずで、スマートフォンにアプリをダウンロードして利用できる決済サービス「パーキングペイ」を2024年3月に導入した。

現在使える駐車場は、愛媛県内で運営している25カ所のうち4カ所だが、菊池さんは「これは今後少しずつ主流になって行くんじゃないかと思います。機械の交換も必要なくなりますからね」と、今後広げていきたい考えだ。

新紙幣の誤った情報や詐欺に注意

自動販売機やATMなどの対応について、日本自動販売システム機械工業会によると「金融機関のATMや交通機関の券売機、コンビニやスーパーのレジは新紙幣発行までに概ね(8割~9割)対応が終了する見通し」だという。

しかし、飲料などの自動販売機は台数が多すぎることなどもあり、新紙幣発行までに対応できるのは2~3割で、新紙幣が使えないケースもあるということだ。

また、現在の紙幣は新紙幣が発行された後もこれまでと変わらず使うことができる。紙幣を発行する日本銀行は「従来の紙幣が使えなくなる」といった誤った情報や詐欺に注意するよう呼びかけている。

(テレビ愛媛)

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