沖縄県産のSKAバンド THE BARCOX 結成10年、台湾ライブリポート

  沖縄県産のSKAバンド、THE BARCOXが5月24日からの3日間、台湾の台北市内各地でライブを行った。元モンゴル800のギタリスト・儀間崇によって結成され、今年で結成10周年を迎えるTHE BARCOXは4月に待望の初アルバム「SUPER FRESH」をリリースしたばかり。脂の乗った節目に繰り出すSKAのリズムに、台湾のオーディエンスも体を揺らした。

 今回はそのうち25日のライブの様子を写真で紹介する。ギタリストでリーダーの儀間崇はインタビューで「ステージの後ろの方まで踊ってるし、みんな体を動かしてくれている。ノリが良い」と台湾の観客の反応に喜ぶ。(平良育士)

THE BARCOX全員集合!かと思いきや、この写真に写っているのは10人だけ。メンバーが多く、ほとんどが社会人であるため、全員がそろうのはなかなか難しい。「来られるメンバーでやる」という柔軟さや緩さもまた、南国ジャマイカ発祥のSKAとの相性が良いように思える
SKAのリズムは「ンッチャンッチャ」といういわゆる裏拍。沖縄の音楽にも裏拍のリズムが多く使われているため、SKAと沖縄音楽は音楽的な感覚が似ている。実際、THE BARCOXの楽曲の中にも琉球音階や「スイ!」の掛け声が融合されており、うちなーんちゅなら自然とカチャーシーを踊りたくなるような曲もある
ギターの儀間崇。THE BARCOXはボーカルなしの楽曲がほとんどのため、口でリズムを刻んだり、「スイ!スイ!」と掛け声を発したりする
トランペットのNORINORI。唯一の女性メンバーで一番最近加入した。20年以上前、高校生の頃からSKAバンドを組んでいた、SKA上級者だ
中国語を使ったMCで会場とコミュニケーションを取ったキーボードのJUN。台湾語で「大家好(ダーゲーホー)」とあいさつし、会場を沸かせた。沖縄で例えるなら海外バンドが「はいさいぐすーよー」とあいさつするようなもので、ちょっと驚き、ちょっとうれしいことなのだ。コールアンドレスポンスで「スイ! スイ!」と観客に呼びかけた時、「スイら~!!!」という掛け声があった。台湾語で「スイ」は美しい、カッコいい、イケてるという意味で使われることが多い。沖縄の言葉と台湾の言葉が重なる時、沖縄の伝統的な掛け声は...
THE BARCOXの出番終了後、タイのバンドLEPYUTINのメンバー(左)と会場外で突発的に発生したセッション

元モンパチの儀間崇と親戚らで結成

 今回、台湾でライブを行ったTHE BARCOXのことをもっと知りたい!ということで、ベースのKAIとギターでバンドリーダーの儀間崇に、結成の経緯やバンド名の由来などを聞いてみた。

ベースのKAI(左)とギターでバンドリーダーの儀間崇にインタビュー

 ーTHE BARCOXは親戚で組んだバンドといううわさを聞きましたが、結成の経緯を教えてください。

 儀間 15年くらい前からかな。ずっとSKAバンドをやりたくて。元々はスカイメイツってバンドをやっていたんだけど、やるなら新しいメンバーでやりたくて。親戚には楽器を持っている子たちが結構いたから、みんなに声をかけて、ワイワイできたら面白いかもと思った。自分で作ったデモ曲をCD-Rに焼いて、一人一人に渡しに行って誘ったりして。

 KAIは元からSKAが好きだったと思うけど、初めてSKAを聴く人もいたかもしれない。それでも、みんな何とかついてきてくれた。

 ー親戚ってことは普通にシーミーとかで集まったり?

 儀間 それもそうだし、もうKAIとかは生まれた時から知ってるし。

 KAI 自分は伊江島出身で、サイドギターのライムは兄弟。儀間崇はいとこ。ドラムのタクミは儀間崇の弟。みんな小さい時から、お互いに伊江島と本島を行き来して、ずっと遊んでた。小さい時から仲のいい親戚同士みたいな感じ。

 儀間 バンドの全員が親戚ってわけではないけど、半分くらいは親戚だね。後はそれぞれが声をかけて、メンバーが増えていった。

 ーバンド名の「THE BARCOX」の由来はなんですか?

 儀間 由来は個人的にすごい思い入れがある那覇市の「国場」から。国場を業界用語っぽく「バーコク」って言ってて、「バーコク」から「バーコックス」にしようと。俺が勝手に決めました(笑)。

 ー台湾のライブの雰囲気はどうでしたか?

 儀間 やっぱり台湾の人はノリが外国人だなって感じた。俺たちは台湾では無名だし、リリースしている作品もなかったし、歌詞もないインストバンド。でも、意外とみんな踊ってくれる。ステージの後ろの方まで踊ってるし、みんな体を動かしてくれてる。日本だとこうはならないと思う。やっぱ台湾の人たちはノリが良いなって。すごい好印象ですね。

 KAI 南に行ったらやっぱSKAが受けるんじゃない? 沖縄も南国だし、南に行けば行くほどノリが良くなる感じがあるよね。ノリが多分近いんだと思う。これが東京だったら、好きなバンドだけ見て、好きなジャンルのイベントに集まる感じ。でも台湾は関係ない。何でもあり。楽しいものは楽しい、みたいな。やっぱりみんな元気だね。台湾のおばちゃんとかも元気ですもんね。

 儀間 台湾にSKAのシーンはあるんですかね?

 ー台湾のSKAバンドでは「SKARAOKE」というバンドが有名です。でも、他には?って聞かれた時にパッと思い浮かぶバンドがなくて。SKAのシーンってほどのものは…。

台湾と沖縄でSKAフェスできたら

 儀間 逆に言うと、台湾のSKAシーンがこれで盛り上がったらいいなぁって、ちょっと思ってるかも。俺たちが台湾に来て、CDも売れて、広がってほしいなと。ちょっと企んでます。台湾と沖縄でSKAバンドがお互いに行き来して、あっちでもこっちでも、SKAフェスみたいな。お互いにイベントに呼び合って、そういうので交流する感じができたら、面白いんじゃないかな。

 ー今回台湾でライブする際に、いつもと違う工夫などありましたか?

 儀間 今日(5月25日)に関しては、俺はハードな曲をちょっと多めにしてみた。イベントが若い人が多いのと、対バンもパンクっぽかったから。ちょっと激しめの曲を入れたけど、やっぱり盛り上がったね。

 KAI いろんな曲があるけど、いつもメインでやってる定番曲みたいなのもあるよね。後は、お客さんの雰囲気を見ながら、「次これやろう」ってその場で決めたりとか。場合によっては全く曲順を決めないでやるライブもあったりして。そこまでガチガチに演出固めたりはしないかな。

 ー台湾でライブすることの魅力はなんでしょう?

 KAI バンドやってると、みんなで旅行する機会があるのがいいよね。それも楽しみの一つ。その行き先が台湾だったら、ぜひ行きたい。

 儀間 誘われたら即答ですね。

 KAI 半分くらいは、修学旅行みたいな感覚あるよね。

 儀間 集合は現地集合だったりするけど(笑)。

 ー逆に困ったことやトラブルなどは?

 KAI 特になかった。呼んでくれた人たちのサポートがすごく手厚くて、おもてなしの精神がすごい。本当に、「ここまでやらなくても大丈夫だよ?」っていうことまでサポートしてくれる。自分たちがライブできるように一生懸命努力して頑張ってくれてるのを強く感じる。とてもありがたいことです。

 儀間 主催の人だけじゃなく、関連している友達とか、それ以外の人たちも、とっても歓迎してくれて。すごくうれしい。良いイメージしかないですね。毎回毎回感謝しかない。こんな大人数で、知名度もない俺たちを、こんなにも歓迎してくれる。俺だったらそこまでできるかな?っていうくらい、なんか過剰にケアしてくれますね。

 ー沖縄と台湾の音楽シーンの共通点や違いはありますか?

 儀間 俺はそんなに台湾の音楽に詳しいわけじゃないけど、Fire EX.(滅火器)は交流があったし、彼らのサウンドは日本のバンドに影響を受けてると思った。そういう意味では共通点を感じる。違いでいうと、台湾には原住民の音楽があるよね。それが結構魅力になってますね。

 KAI 多様な要素を持つ音楽が多い。日本だったら、ロックならロック、SKAならSKAって感じだけど、台湾は交ざってるのかなと思う。古い曲に現代的な要素や民族的な要素を取り込んでみたり。FireBall Festival(2019年に開催されたFire EX. 主催の野外フェス)に参加した時も、自分たちの前に出たのがフォークロックみたいなバンドで、そういう多様な要素を感じた。

 ー台湾でのライブを実現するコツを知りたい県内ミュージシャンもいると思います。今回台湾でライブをすることになった経緯を教えてください。

 KAI 今年は10周年だから台湾に行きたい気持ちが強かったのと、自分たちでもアピールしていた。うまくタイミングが合う時に、ちょうど中間で立ってくれる友達がつないでくれた。それがCD発売の時期にも合って全部うまくはまったよね。

 儀間 コロナも落ち着いてきたし、CDも出すし、今年は絶対台湾行くぞ!って勢いづいてガツガツしてたら、いろいろ話が来て、うまくフィットしたね。恵まれてたのかな。コロナで数年ブランクがあるけど、本当は年1で台湾でライブしたいってのは漠然とあって。最終的には、普通に行き来してライブできるようになりたい。今はその過程。

気づけば活動10年 初のアルバム「SUPER FRESH」

 ー最後に、10年目にしてリリースされたアルバム「SUPER FRESH」について教えてください。

初アルバム「SUPER FRESH」

 儀間 気づけば10年たっていたって感じなんですけど、メンバーみんなプロでこれ一本で食ってるわけでもなく、趣味みたいな感じでやってるので、ガツガツCDを出そうというわけじゃなかった。でも絶対いつかは出したいと思っていた。それがついに動きだして、10年目に実現したんです。THE BARCOXは、やっと世に出た感じだと思うんですよ。これまでは無名で、知ってる人も少なく、リリースした作品もなかった。だからこれから広まっていって、名前や曲が知られていくと、また違う動きになるんだろうなって期待しています。

アルバムインフォメーション
THE BARCOX 1st Album CD 「SUPER FRESH」 3,000円(税込み)
沖縄県産SKAバンド THE BARCOXメンバー
Drums: TAKUMI GIMA
Bass : KAI TAMASHIRO
Guitar: TAKASHI GIMA
Side Guitar: RAIMU TAMASHIRO
Piano & Keyboard : JUN SAKIMA
Percussion & Toy's : TAISHIRO HIGA
Trumpet : NORINORI
Trumpet: SATOSHI KADEKARU
Alto Sax: NAOYA SHINZATO
Tenor Sax : MINAO SHINZATO
Trombone : TATSUYA OHSHIRO
Trombone : TETSUJI TOMORI

 6月29日、オリオンビアフェストin台湾高雄にもTHE BARCOXが登場します。那覇空港から直行便が出ている高雄市で、オリオンビアフェストが開催されます。THE BARCOXのSKAサウンドが、会場を彩ります。機会があれば、ぜひ高雄まで遊びに来てください!

オリオンビアフェストin台湾高雄
THE BARCOX

日時:2024/06/29(土)15:00-22:00
場所:高雄流行音樂中心 海風廣場

過去のオリオンビアフェストの様子(オリオンビール提供)

 

© 株式会社沖縄タイムス社