視聴率ボロボロの春ドラマでもとりわけ惨敗、赤楚・篠原・森本作品「負けの必然とマズい悪循環」

赤楚衛二、篠原涼子、森本慎太郎(SixTONES)(C)ピンズバNEWS

テレビ各局のほとんどの春ドラマが、最終回を迎えた。

「4月期の連続ドラマでは、長谷川博己さん(47)主演の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)以外は数字が振るわなかったんです。『アンチヒーロー』以外は“全滅”と言っても過言ではないぐらいでしたね……。

木村拓哉さん(50)主演の『Believe―君にかける橋―』(テレビ朝日系)は、6月20日の最終回こそ世帯視聴率13.2%(すべてビデオリサーチ調べ、関東地区)、個人視聴率7.6%と盛り返しましたが、それまでは前評判ほどの数字は取れず、そして、現在、テレビ界で最重要視される13歳から49歳までのコア視聴率は、最終回以外は1%台を連発するなど、非常に厳しい結果になりました。

『Believe』は『テレビ朝日開局65周年記念作品』という触れ込みでしたが、同作のように放送前には期待されたものの、“なんでこんなことに……”という厳しい結果になったドラマが多かった。赤楚衛二さん(30)主演の『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)もそうでした」(制作会社関係者)

『Re:リベンジ』は、日本屈指の巨大病院・天堂記念病院を舞台に、“野心”と“復讐心”が入り乱れるリベンジサスペンス。赤楚のライバル役を演じたのは元関ジャニ∞の錦戸亮(39)。旧ジャニーズ事務所を退所してから初の地上波連ドラレギュラーであることでも注目を集めた。

「赤楚さん主演の『Re:リベンジ』(木曜日夜10時)は、6月20日放送の最終回もコア視聴率は1.2%とあまりにも厳しい結果に終わりました。

ドラマは赤楚さん演じる病院理事長の息子・天堂海斗が回を重ねるごとに“闇落ち”していくという展開で、“主人公がここまで嫌われてしまって、最終回をどうやってまとめるつもりなんだろう?”と思った視聴者も少なくなかったのではないでしょうか」(前同)

■主人公止まらない闇落ち……斬新設定も視聴率は振るわず

当初は青臭い主人公が、権力争いを経て清濁併せ吞むたくましい男に成長していく――そんな展開を期待する声もあった。しかし、終盤を迎えても感情的で浅はかな考えで動く主人公に辟易してしまった視聴者もおり、X(旧ツイッター)には《世間知らずの・情熱だけで動く・まっすぐすぎる海斗の、『お坊ちゃん成長物語』として、見るしかねぇな》といったコメントが寄せられた。

その後も海斗(赤楚)は成長するどころか、大友郁弥(錦戸)に対するライバル心や環境の変化によって視野がどんどん狭くなっていき、「大友が反対していた心臓病の子どもの手術を海斗が強行した結果、オペでトラブルが発生して命の危機に」という展開にも。

最終回では、医療過誤の隠蔽について大友が理事会で告発。海斗もその場で隠蔽を認め、その後に会見を開き、隠ぺいを公表するとともに会長の皇一郎(笹野高史/76)の解任、病院が解散となることを発表。

その後、大友が新たな場所で医師としてやり直すと海斗に告げ、海斗は再び記者としての人生を歩むことになった。ところがラストシーンでは、海斗が無償譲渡したという病院の新理事長として満足気な表情の大友が姿を現す。それを怒りの表情で睨みつける海斗の姿でドラマはエンディングを迎えた。

「闇落ちした主人公に共感できず離脱した人は多くいましたし、ラストは闇落ちから改心したが、錦戸さん演じる大友が裏切って病院の新理事長に――という後味の悪い展開にもなりました。

主人公がどんどん嫌われていくというある意味で斬新なドラマではありましたが、途中で視聴者が離れてしまったことが大きかったのでしょう、視聴率は“爆死”と言われても仕方ないものになってしまいました。

同じフジテレビのドラマでは『イップス』(金曜日夜9時)も、前評判を大きく裏切り、低迷したまま最終回を迎えましたね」(前出の制作会社関係者)

篠原涼子(50)とバカリズム(48)のダブル主演ドラマ『イップス』は、“イップス”に陥って小説を書けなくなったミステリー作家・黒羽ミコ(篠原)と、事件を解けなくなったエリート刑事・森野徹(バカリズム)がバディを組み、たまたま遭遇した事件を解決していくミステリーコメディー。

「ドラマは『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』(フジテレビ系)のように、先に犯人や犯行シーンが明かされる“倒叙型”を用い、フジテレビのレジェンド作品『古畑任三郎』を彷彿とさせることから放送前は注目されていました。ところが、最初からずっと評判も数字も良くなく、6月21日の最終回のコア視聴率も1.4%と大惨敗で終了しました」(前同)

■『イップス』を見ることで『古畑任三郎』の凄さがあらためて浮き彫りに

最終回は倒叙型ではなく、ミコ(篠原)と森野(バカリズム)がイップスになってしまった原因である「歪な十字架模倣事件」や新たな事件を追うという展開となったが、ミコがいっさい推理することなく、森野1人であっさり犯人と突き止めてしまった。視聴者からは、

《イップス最終話。盛り上がりに欠けるまま終わった。キャスト的には名作にもなり得た布陣だったろうに、残念だ》
《最終回。倒叙ミステリーを売りにしておきながら最後は倒叙ミステリーじゃないんか〜い ごめんねどうしても古畑と比べてしまうんだが》
《面白くなりそうで、ならなくて、そして最終的にやっぱり面白くないで着地。改めて「古畑」って面白いんだなと思わせてくれた》

といった声が寄せられてしまった。

「主演2人のテンポのいいやりとりは面白いのですが、犯人のトリックが安易だったり、推理が強引すぎるなど、ツッコミどころもたくさんあった。ドラマに山がないというか、事件が解決されるまでの流れがあまりにも淡々としすぎていて盛り上がりに欠ける、という声が少なくありませんでした。

『イップス』を見るといかに『古畑任三郎』が凄かったのか、いかに田村正和さん(享年77)の演技、犯人役の大物ゲストの演技が素晴らしかったのか、いかに三谷幸喜さん(62)の脚本が練られたものだったかがあらためて実感できましたね。

篠原さんとバカリズムさんという話題性抜群のキャストなのに視聴率は最悪。6月7日放送回に至ってはコア視聴率0.8%と1%にも満たない数字だった。“『古畑』のような作品”を期待していた多くの視聴者が早々に“そうではない”と悟り、一気に離脱してしまったのではないでしょうか」(前出の制作会社関係者)

6月29日に最終回を迎えるSixTONES・森本慎太郎(26)主演の『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)もスタートから苦戦が続いている。

当初、日本テレビの4月クール「土ドラ10」枠では“小学館の漫画原作のドラマ”を放送する予定だった。一部ではムロツヨシ(48)が主演、西炯子氏原作の『たーたん』だったと報じられている。

2023年10月クールに日本テレビで放送されたドラマ『セクシー田中さん』の原作者の芦原妃名子さん(享年50)が、望まない原作改変の大騒動に巻き込まれて今年1月に急逝。4月クールに『セクシー田中さん』と同じ小学館の『たーたん』原作と報じられたドラマが放送予定だったとされるが、日本テレビは2月22日にこの“小学館の漫画原作のドラマ”の制作を見送ることを発表。

主演予定だったムロは辞退を申し入れたと報じられ、代わって森本が『街並み照らすヤツら』に主演することが3月22日に明らかになった。

ドラマは、さびれたシャッター商店街で経営ギリギリのケーキ屋を営む店主・竹野正義(森本)が、大切な店や家族を守るため、悪事に手を染めてしまうがそこから予期せぬ展開へと発展する怒涛のヒューマンエンターテインメント。

■低視聴率ドラマが量産される昨今のテレビ事情

「『たーたん』の制作が直前で見送られ急遽、別作品の脚本を用意することになったと。主演の森本さん、その他のキャストも急ぎで決められたこともあってか、ドラマはやはり突貫工事としか見えません。

商店街を挙げての偽装強盗が日に日にエスカレートしていくという展開がありましたが、そもそもなぜそんなことをしているのか目的が見えてこないですし、全体的にスケールが小さいエピソードばかり。あまりにもイレギュラーなスケジュールで進める必要があったから、仕方がなかったんでしょうが……。

最終回1つ前の6月22日の第9話のコア視聴率は0.8%とこちらも1%に満たない厳しすぎる数字でした」(前出の制作会社関係者)

そんな『街並み照らすヤツら』に対しては、

《回を重ねる毎につまらなくなる…序盤こそ斬新な設定、物語の展開に惹き付けられワクワクしたし面白かったのに…三話辺りでん?ってなって四話~五話にはうーん…ってなっていたような…》
《街並み照らすヤツら、ごめんけどつまらなさすぎていつになったら面白くなるのかと思ったが結局さいごまで、、、おつかれさまでした キャストがどうこうというより、脚本かな、、笑》

といった意見も寄せられている。

「もしかしたら森本さんのファン、SixTONESファンも途中離脱してしまった可能性すらある。コア視聴率0.8%というのはそういう数字です。春ドラマで唯一良かったと言われる『アンチヒーロー』のコアはほぼ4%台でしたから、いかに『Re:ベンジ』、『イップス』、『街並み照らすヤツら』が低迷したかがわかりますよね。

ただ、全面的にキャストが悪いというわけではなく、『アンチヒーロー』を見てもうかがえるようにやはり脚本の完成度がドラマにとっては最も重要。加えて、TVerや配信サービスの普及もあって、リアルタイムでドラマを見なくてもいい時代になったのも数字が伸び悩んでいる要因ですよね。

それに、配信では圧倒的なお金と時間をかけた韓国ドラマも見ることができる。ドラマ好きは、クオリティの低い日本のドラマを無理に見る必要がなくなったということです。ドラマファンのリアルな心境としては、“つまらないドラマにつき合っている暇はない”といったところかもしれません」(前同)

視聴率が取れないドラマが増えているのと同様に、テレビ各局のドラマ枠自体も増えている。2023年春にはフジテレビ(カンテレ制作)の火曜午後11時、テレビ朝日(ABCテレビ制作)の日曜午後10時、同年秋にはフジテレビが金曜午後9時台にドラマ枠を新設。日本テレビでも今年4月クールから土曜午後9時台がドラマ枠になった。

「ドラマ枠が増えているのはテレビ不況の影響が大きい。各局、なかなか広告が入らない状況が続いていますが、まだドラマのほうがバラエティ番組よりも広告が入るんです。

ただ、ドラマ枠が増えたことで俳優やスタッフが足りなくなり、設定被りも生じて、クオリティの低下に拍車をかける――という悪循環に陥りつつあるんです。このままでは、ドラマファンは日本のドラマから離れていってしまいそうですよね……」(同)

Snow Manの目黒蓮主演の月9『海のはじまり』(フジテレビ系)など、注目作品も多い夏ドラマ。巻き返しなるか!?

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