【インタビュー】「VOCALAND」再び。角松敏生が「やりたかったことをやり倒した」と語る1990年代の貴重な音像がノンストップリミックスで甦る

1990年代後半、角松敏生によって行なわれたボーカリスト・プロデュース・プロジェクト「VOCALAND」。日本人シンガーのみならず、世界的な実力派アーティストたちが参加して、1996年に『VOCALAND』、翌1997年に『VOCALAND2 ~Male,Female & Mellow~』の2作品が発表された。

あれから四半世紀以上の時を経て、角松敏生本人のノンストップリミックスで「VOCALAND」が再び我々の元に届く。6月26日リリース『VOCALAND REBIRTH Extended Mix by TOSHIKI KADOMATSU』がそれだ。使用された音源は一般には入手困難のものもあり、音像そのものが1990年代の貴重なアーカイブとも言える作品である。

加えて、「VOCALAND」を代表するバラードナンバー「Never Gonna Miss You」の続編とも言える新曲「May your dreams come true」も、角松敏生&吉沢梨絵のデュエットでボーナストラックに収録。まさにファン垂涎の作品となった。そんな新作の制作背景、当時「VOCALAND」に込めた想いなどと併せて、現在の音楽シーンに対する捉え方を角松敏生に訊いた。

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◼︎「これはすごい貴重なんですよ!」って伝えたい

──『VOCALAND REBIRTH Extended Mix by TOSHIKI KADOMATSU』(※註:以下『VOCALAND REBIRTH』)に関して、オフィシャルサイトに《私は4年くらい前からこのVOCALANDの完全リミックスを制作したいと考えていた》という角松さんのコメントが載っていますが、1990年代のサウンドを再提示したいと考えるに至ったきっかけは何だったのでしょうか?

角松敏生:まず誤解のないように申しておきますと、『VOCALAND REBIRTH』は頼まれたからやっただけです(笑)。なので、その《考えていた》というのは“「VOCALAND」シリーズは非常に貴重な記録だからリミックスをやりゃいいのにな”って思っていたということです。そう思ったのは4年どころじゃないですよ、ずっと前からです。ただ、今avexで僕に興味を持っている人なんかいないだろう、“これは面白いですよ!”って言う人もいないだろうなって思い込んでたんですね。

──そんなことはないと思いますが。

角松敏生:「VOCALAND」プロジェクトを立ち上げたのはavexにはまだ社員もほとんどいない頃で、松浦さん(avex株式会社 代表取締役会長)と数人とで立ち上げたばかり。でも、ものすごいお金があった。そういう特殊な背景の中で生まれた作品だったんです。そもそも、そんな時代を知る人が今はいないに等しいわけです。そんな中で、唯一残っている当時の担当者が「定年前に自分が好きなことをやって辞めたい」って話を持ってきた。僕と一緒に何かやりたいと。そう言ってくれたことは嬉しかったですよね。で、彼が「過去の音源を使ってノンストップミックスみたいなのでもいいんで」って言うから、「じゃあ是非」って。マルチデータがあるんだったら、それらを使用してリミックス、さらにマスタリングもやり直したいと申し出ました。なにしろ「VOCALAND」シリーズは僕の原盤じゃないのでね。勝手にはいじれない。

──以前から、「VOCALAND」シリーズを録った時の音、1990年代の音をどこかで再提示しないともったいないとは思っていたんですね?

角松敏生:記録されているものの中に、非常に貴重な音がいっぱいあるので、この時代に再構築して綺麗にして出したら喜ぶ人もいっぱいいるだろうし。それは年寄りが喜ぶだけじゃなく、若い人も興味を持って聴けるような第一級資料的なものがそこに記録されているはずだ、とは思ってましたね。

──《当時の最新の技術やメソッドを取り入れて様々な実験ができた》とのコメントもありましたが、その実験とはどんなものだったのでしょうか?

角松敏生:いろいろですよ。コンピュータのOSやソフトがどんどん進化していったことももちろんありますし、今で言うプラグインみたいなものを取り入れたのもそう。音を1個1個プログラミングしてMIDIで発音するんじゃなくて、出来上がったサウンドファイルを貼り付けていくだけでループさせる作業とか。……これは今のトラックメーカーの子たちがよくやっていることの原型ですね。ビートファイルを4小節ごとに付けるなどという手法は今では当たり前ですけど、当時ぼちぼち始まったことでした。あとは外部音源ですね。僕は今も外部音源にこだわって色々とやってるんですけど、1990年代は未だちょっと過渡期だった。シンセサイザーで言うとDX7やD-50の時代が一段落して次のフェイズに移行していくような時代だったので、そこもまた面白かったっていうか、混沌としてましたね。

──その中から何を持ってくるか、手探りの状態だったのでしょうか?

角松敏生:別に手探りとか、そんな大したことじゃないですよ。面白いと思ったことやっただけです。

──面白いと思ったことを潤沢な製作費で実現出来たという。

角松敏生:そうですね。当時はものすごくお金があったし、何よりもCDの市場があったから、そこがやっぱり大きかったですよね。10万枚くらい売れるCDを作ることに、何千万円という製作費をかけられたわけですから。今は500万円かけたら「かけすぎだ!」って言われますからね。分かりやすく言うとそういうことですよ。

──『VOCALAND』をリリースされたあと、1996年頃のインタビューで角松さんは“『VOCALAND』を作り終えて、avexというレコード会社が何で成功したのかという理念を知ることが出来た”と仰っていました。その辺りの見解を今、改めてお伺いしたいです。

角松敏生:それは若い頃の意見ですからね。大した話ではないですよ。ただ、強いて振り返って言うんだったら、やっぱりお金があったことがでかい(笑)。当時のスタッフが制作ということに対してものすごいこだわっていたし、僕らを尊重してくれて、面白いことやるため、いいものを作るためにはお金がかかるんだとちゃんと理解をしてくれていた。しかもavexのスタッフは圧倒的に若かったというのがあります。その時、角松敏生としてはBMGビクター(註:現在のアリオラジャパン)所属だったんですけど、BMGビクターの部長、課長の年齢は大体50〜60歳。一方、avexの松浦さんは30歳そこそこですよ。だからもう全然感覚が違いますよね、音楽に対しての理解度とかね。「よし、お金が入った! 音楽制作に使っちゃえ!」って作ったものがうまく当たって、またお金が入ってくる──そういった、何だかよく分からないけど、時代に即したエネルギーとかポテンシャルというようなものが僕にはすごくキラキラして見えたんです。だから、その過去の発言は「avexはこういうエネルギーがあるから成功したんだな」と思ってただけです(笑)。

──確かに当時、そういう側面はありましたね。

角松敏生:もちろん、実際はそれだけではなかったですけどね。「既存の日本の芸能界とどうやって上手く渡り合っていくか?」というビジネスに舵を切ろうとした松浦さんがいたり、逆に芸能とは距離を置いたところで音楽に向き合う人たちがいたり。そういうことを僕は裏でまざまざと見てきましたよ。ただ、会社って大きくなると人格がなくなるというか、人の顔が見えなくなっていくじゃないですか。“この人の会社”ではなく、“会社としての人格”になっていく。でもavexは、“こんなにお金を持ってるレコード会社なのにちゃんと顔がある”って思ったんです。人格がある。そこが魅力的に見えたんですよ。

──なるほど。そこに潤沢な制作費と、ちゃんと顔が見える人たちがいたらこそ、『VOCALAND』『VOCALAND2』で角松さんがやりたかったことが出来たということですね。

角松敏生:まぁ、松浦さんも今になって思えば「あんなことを言って後悔してるよ」って言うかもしれませんけど、あの時に言われたのは「好きにやっちゃってください」ですもん(笑)。

──ホントそれはすごいですねぇ(笑)。

角松敏生:「好きにやっちゃってくださいって言われてもなぁ……それが一番困るんだよなぁ」ってところはありましたけど、その結果として作ることができたのが『VOCALAND』、『VOCALAND2』でした。

──“好きにやっちゃってください”と言われて作った「VOCALAND」シリーズであったからこそ、今となっても貴重な音が入っているんでしょうね。

角松敏生:そうです。その中に記録されている音は非常に貴重なものなんですよね。今はもう聴けないものとか、世界的な宮大工による仕事のようなものとか、そういったものが記録されているので、「これは分かる人にしか分かんねぇかなぁ」って思いながらも(笑)、「これはすごい貴重なんですよ!」って伝えたいですよね。“当時、あの人がこんなことをやってました”みたいな人も参加してるわけですし。もちろん「VOCALAND」シリーズのメインは、日本の名もなきシンガーたちにスポットを当てること。それが僕のやりたかったことだったんですけど、それと同時に海外のアーティストの作品も入れてます。言ってしまえば、このシリーズでは、僕がやりたかったことをやり倒したんですよ。日本で頑張っている名もなきシンガーと、すごい実力のある海外の人たちとのプロダクションを同時に並べることの面白さ。正直言って、当時、自分でも“大丈夫か!?”とは思ってたんですよ(笑)。でも、今こうやって並べて聴いてみると、“やはりとてもいいな”って思いました(笑)。

──はい。今回『VOCALAND REBIRTH』と併せて『VOCALAND』『VOCALAND2』も聴きましたが、いずれもカッコいい作品だと思います。『VOCALAND REBIRTH』は、レーベルサイドからの依頼で始まったということですけど、ノンストップリミックスを制作するにあたって角松さんはどんなことを心がけたのでしょうか?

角松敏生:基本的にダンスミュージックにはしたかったんです。所謂ダンストラックにしたい、ビートのあるものにしたい、グルーヴチューンで作った方がいいなと思いました。ともかく、「VOCALAND」として最初の試みなので、記録としての素晴らしさ、そのエネルギーを示しつつ、一種の疾走感みたいなものをドカーンって聴かせる。聴かせて、“はい、さよなら!”みたいな(笑)。そういうものを作っておこうと思ったんですよ。

──実際、疾走感ありますよね、めちゃくちゃ。

角松敏生:シュって行って、「わっ! ……何だったんですかね、あれは!?」って言わせたかったので、最初に依頼を受けた時に「分かった! やるよ!」って言って、20分で作っちゃいました。

──20分で!?

角松敏生:そう。20分くらいでラフを作って、「こんなのどう?」って一回聴かせていい反応だったので、改めて作り直したんです。あと、トラックを繋げただけじゃなくて、ちょっと音を足したんですよ。マルチミックス的にやってて──。

──オープニングとエンディングは明らかに音を足していることが分かりましたが、他の楽曲も足していますか?

角松敏生:足してます。楽曲が乗り換わるところでプログラミングを加えてます。頭とケツの部分は、多分勘違いしていると思うけど、あれは元々あった音なんですよ。

──え、そうなんですか?

角松敏生:実は「VOCALAND」は12インチシングルをいっぱい出していて、エクステンデッドバージョンが存在しているんですよ。『VOCALAND REBIRTH』ではシングルバージョンを使っているんじゃなくて、それを使ってます。でも、それはお蔵になってるの。『WHAT CHA DOIN'』も12インチがあるんです。めっちゃカッコいいよ。で、そういう12インチも含めて、「とりあえず倉庫に眠っているのを全部持ってこい! アーカイブ出来るものは全部アーカイブしとけ!」って言って(笑)、それから作っていったんです。

──まさに『VOCALAND REBIRTH』は“お蔵出し”でもあるんですね。

角松敏生:そうなんです。ハーフインチテープしか残っていないものもあって、「ハーフのアナログなんて、とっととアーカイブしていないとまたなくなるぞ!」ってけしかけて(笑)。エクステンデッドバージョンから録っている音は、オリジナルバージョンと違って聴こえると思いますけど、元がそうなっていたということなんです。

──それぞれの楽曲で改めてトラックのバランスを整える、所謂リミックスの作業も行なったんですか?

角松敏生:そうです。それぞれオリジナルをリミックスしてあります。でも、低音域の輪郭をちょっと足しているだけかな。

──『VOCALAND REBIRTH』は1996年版、1997年版に比べて音がシャープかつクリアな印象も受けたんですけど、元々、相当に良い音で録れていたということですね。

角松敏生:もちろん今の技術もありますよ。一回録ったものの2ミックスをマルチでバランスとってやっているところでね。でも、基本的には1990年代からあの音が鳴ってましたよ。

──そうですか。あと、この『VOCALAND REBIRTH』は曲の繋ぎの面白さは圧倒的にあると思います。次の曲に移るタイミングがジャストで、聴いていてめちゃくちゃ気持ちいいですよね?

角松敏生:ああ、それは良かった。

──この気持ち良さは何なんだろうと素直に伺いたかったところです。流石に20分くらいで出来たとは思いませんでした(笑)。

角松敏生:僕はDJをやっていましたからね。それも1980年代に。ディスコDJの世界です。だから、単純にそういうエンターテインメントなだけです
よ。“客のダンスを止めない”という、ただそれだけの発想です。

──例えば、4曲目「NIGHT BIRDS」とか、“待ってました!”とばかりに、あの旋律が聴こえてくる。とにかく気持ちがいいなぁと思いましたね。

角松敏生:その時代を知っている人は特にそう思うよね(笑)。ノンストップリミックスを作る時には、その“来た、来た、来た!”感みたいなものが重要ではあるんですよ。高揚するというかね。あと、大事なのは短いということ(笑)。ダラダラ聴かせるものじゃない。

──『VOCALAND REBIRTH』は40分を切ってますね。

角松敏生:切ってます。

──30分間って何もしてないと長いですけど、音楽を聴いていると30分ってあっという間であることを、『VOCALAND REBIRTH』を聴いて感じたところでもあります。

角松敏生:それは多分情報量の問題だと思う。人間って音に集中出来るのは44、45分なんですって。35、36分を過ぎるとあくびが出てくる。好きな音楽を聴いててもあくびが出てくるんですよ。だから、こちらとしては“あくびをさせないぞ”っていう意識ですよね(笑)。

──(笑)。そう考えると、昔あった46分のカセットテープってよく出来てたんですね。

角松敏生:よく出来てたんですよ。『VOCALAND REBIRTH』の収録タイムもそういう基準です。アナログのA面B面の構築も大体それくらいで作ってるんですけど、CDになって曲をいっぱい入れられるようになって。悪しき風習として“1CDに20曲入り”みたいなことが発生したことで、CD自体にコンセプト性がなくなって、ただの情報の塊になってしまった。だから、どんな好きなアーティストでも、1曲目で高揚を感じたとしても、16曲も入ったら、1曲目の感動を忘れちゃう。作品ってそうじゃダメなんだけど、CDの収録時間が長くなったのは曲数を入れられなかったレコードの時代のフラストレーションがあってのことでもあるからね。アナログレコードは溝が細くなると音が悪くなるので、曲数が少ない方がいいんですよ。僕は1曲が長い人だったから、アメリカのエンジニアと仕事すると「長い。これじゃあ音が悪くなるから切る」ってどんどんエディットされましたもん。だからCDになっていっぱい入れられるようになった時は嬉しかったですけど、結局それではダメなんだなって今は思います。

◼︎「VOCALAND」は自分の中でもすごく凝っていた作品

──話を『VOCALAND REBIRTH』に戻しますと、本作は『VOCALAND』収録曲が中心ですが、オープニングの「Give it up」とラストの「Never Gonna Miss You」は『2』で吉沢梨絵さんが歌われていたナンバーですよね? 「VOCALAND」というプロジェクトにおいても、《吉沢梨絵さんとの出会いは現在の私の活動においても大変重要》であるとコメントされていましたが、『VOCALAND REBIRTH』に吉沢さんのナンバーを入れることはやはり必然であり、当然のことだったのでしょうか。

角松敏生:そういう風に言った方がドラマチックに感じるかもしれないですけど、「このままじゃアルバムにならないから、あと何曲か足してください」って言われたっていうのが本当のところ(笑)。

──その裏話は載せていいのでしょうか(笑)。

角松敏生:(笑)吉沢梨絵は、基本的にこの「VOCALAND」プロデュースの中では唯一と言っていいくらい成功した人です。ミュージカル女優として大成された方で、今でも付き合いがあります。僕の作品でも歌っているし、ツアーでバックシンガーをやってくれることもあります。そういう仲でもありますし、彼女は『VOCALAND 2』の人なんですけど、やっぱり僕にとって吉沢梨絵という人は「VOCALAND」の看板女優なんです。avexの担当からも「「Never Gonna Miss You」を入れたい」って言われたんですよ。それで、僕とデュエットしているということもあるし、マルチがあるので「僕がリミックスするから」って言ったんです。それで完全にミックスをし直した。で、その後で新曲も欲しいという話が出て、それなら「Never Gonna Miss You」のその後のストーリーを梨絵と一緒に歌えたらドラマチックだよねぇなんて言ってたんですけど、これは絶対自分の新作『MAGIC HOUR』ってアルバムとバーターにしてやろう”と思ってね(笑)。

──ははは(笑)。

角松敏生:僕自身もこのままだとアルバムとしては短いから、どうせだったら新曲を入れるのもいいよなって思ってたんだけど、いかんせん自分のアルバムを作ってたから余裕がなくて。だから、いい意味でバーターにすればやれるかも、自分で作った曲を梨絵とデュエットすることを思いついた。要は、作る段階でデュエットを想定したんです。「Turn on your lights ~May your dreams come true~」って曲なんですけど、メロディーラインもそこに女性ボーカルが入ってくることを想定して考えました。『MAGIC HOUR』のレコーディングの時には梨絵の旋律は出来上がってたかな。それで自分のレコーディングをして、そのあとで『VOCALAND REBIRTH』用に、梨絵に女性パートを入れてもらって完成という流れでした。

──そうでしたか。「Give it up」と「Never Gonna Miss You」に関して言いますと、過去の角松さんのインタビューでこんなエピソードを見付けました。何でも『VOCALAND2』制作時、角松さんはスランプで、「Give it up」を作るのに17曲を作って全部ダメにしてお蔵入りにしたとか。「Never Gonna Miss You」もそんな中で出来た曲で、「Never Gonna~」が出来たことでスランプを抜けたと語っておられたんです。

角松敏生:その発言はあんまり覚えてないですね(笑)。

──(笑)。そこから推測するに、「Give it up」と「Never Gonna Miss You」はプロデューサーの観点のみならず、コンポーザーとしてもとても重要な楽曲であることが想像出来ましたし、その意味でも『VOCALAND REBIRTH』に収録する意味があったのではないかと思ったところです。

角松敏生:「Give it up」を作る時にすごく悩んでたのは覚えてます。それは、まず梨絵が若くてすごく歌の上手い人だったから自分の欲が深くなったってのもあった。何曲か作ったあとで「Give it up」でいこうとなって、レコーディングしている時に彼女の歌の上手さに触発されて、“この子と一緒に歌ってみたい”っていう気持ちが生まれ、「Never Gonna Miss You」を作ったんですよ。それからの数曲は楽しかったですよね。「ALL OF YOU」も「サヨナラはくちぐせ」も(※註:共に角松敏生が提供した吉沢梨絵のシングル曲)すごく楽しく作った記憶があります。……やっぱり彼女自身が実力のある人だったし、より良いものを作ろうっていう気持ちがあったから悩んでいたんだと思います。スランプというんじゃなくてね。

──吉沢梨絵さんの制作作業をしながら、“彼女をどうプロデュースするのがベストなのか?”とより深く考えていったということですね。

角松敏生:そうですね。だから「Never Gonna Miss You」で方向性が広がって、“道が見えた!”っていう感じだったんじゃないですかね。

──「Never Gonna Miss You」の歌詞は不思議な別れといった内容で、当時まだ21歳だった吉沢さんはニュアンスが掴めなかったという話を、これもまた当時のインタビュー記事で見たのですが。

角松敏生:梨絵ちゃんはずっと“?”で歌ってたって言ってましたもん。今でもその話しするけどね(笑)。

──そこで角松さんはどんな風にプロデュースされたんですか?

角松敏生:ともかく上手に歌えばいいよ──ただそれだけです。「情感とか歌詞の意味は考えなくていいよ。分かんなかったら分かんないでいいから」って。彼女は役者さんでもあるから、「監督、これどういう意味ですか?」って言う癖もあったんだと思う。彼女は「今になって角松さんの歌詞がよく分かる」って言ってますよ(笑)。彼女も様々な経験を経て今がありますからね。僕と同様に子育ても頑張ってるからね(笑)。

──「Never Gonna Miss You」の続編とも言える新曲「May your dreams come true」についても伺いましょう。この新曲の歌詞はポジティブで、明るさすら感じるような内容になりましたね。

角松敏生:avexの担当者から「Never Gonna Miss You」のその後の曲ができたらいいですね、という話をされてから、ずっと考えてはいたんです。自分のアルバムに入れる曲として良いバラードができたら梨絵ちゃんとデュエット出来たらいいなくらいに考えていました。そんなときに、年明けと共にすごく体調崩しちゃって、さらに震災があったことで精神的に前向きにはなれなくて……。でも、しんどい人はもっとしんどい思いをしている。そう考えながら街行く人々を眺めていたら、“空というのは繋がっている”とふと思い浮かんで。 “今あなたはどこにいるか分からないし、どう暮らしているか分からないけれど、あなたのところにも、この綺麗な空が見えているといいな”っていう物語にしようと思ったんですね。そうして出来上がったのがこの曲です。

──なるほど。

角松敏生:そう考えれば、「Never Gonna Miss You」の2人は別に再会しなくてもいいわけですよ。情熱的な別れ方をした2人は“相手は今どうしているのか?”ってふと思い出す。思い出して“元気でいてくれたらいいな”って思っている──そういうストーリーもいいなと。それと同時に、“今、大変な想いをしている人たちにもいいことがありますように”と考えたときに、“May your dreams come true”という言葉が自分の中でパッと浮かんで。あれは1月15日くらいだったかな。

──能登半島地震は元日でしたから、そこから2週間経って、少しでも希望のある内容を作りたいと思われたんですね。

角松敏生:世の中に対して自分に何ができるか──とかそんな偉そうなことじゃないですよ。自分の気持ちが元気じゃない、他人にもエネルギーってあげられないから、あの時はまず自分を上げるのに精一杯でした(笑)。

──となると、例えば、「Never Gonna Miss You」で別れた2人もドラマチックである必要はなかった。旅立った人は戻って来ていないのでしょうね。

角松敏生:来てない、来てない(笑)。それでも、お互いに想いがあれば……ということ。50歳、60歳にもなればそいう経験も一度や二度はあるじゃないですか?

──“あの時のあの人はどうしてるのかな?”って思うことは皆あるんでしょうね。ただ、そこで無理やりに逢おうとすると、ちょっと話が違ってきますよね。

角松敏生:誰にでもふとしたときに昔の恋人に会いたい気持ちってのは、あると思いますよ。しかし、60歳を越えるとねぇ……諸行無常という理を思えば微妙ですよね、男も女も(笑)。

──いやいや、そうじゃない人もいらっしゃいますって(笑)。

角松敏生:というか、“当時の思い出はそのままにしておきたい”って思うほうがいいと僕は思います。だってそんなもの誰にも理解できない、思い出は個人の記憶という特別な領域ですから。静かにしておきたい、そういう想いが大事かなと思いますよ。過去を悔やんでも否定はしないというかね。例えば、辛かった恋愛というのは、それだけ愛が深かったってことですからね。

──なるほど。「May your dreams come true」は、現在50〜60代の人たちが、かつての自身の恋愛と重ねて聴くことも出来そうですね。

角松敏生:そこはもうご自由に(笑)。どの年代が聴いても勝手にいろんなストーリーが作れるようにしてるんですよね。それが最近の僕の性分。

──そうですね。先ほど仰ったように、“震災で大変な目に遭って苦労してる人と気持ちが繋がっている”という解釈もアリでしょうし。

角松敏生:そういう地域の人でそういう風に思って聴いてくださる人も実際にいるでしょうね。音楽なので、僕の手から離れたらもう好きに広がっていけばいいと思ってるし、“これが基準のテキストです”っていうのは僕の中にはないんです。

──ひいてはこの『VOCALAND REBIRTH』という作品自体もそうで、リスナーそれぞれにいろんな聴き方が出来るという捉え方でもいいでしょうか。

角松敏生:そうですね。歌詞の世界も1990年代のきらめきだったり、いい意味での一種の退廃的なことだったりと、いろんなものが散りばめられてる感じがしてます。自分自身でも聴いていて嫌じゃないですね。長年やっていると、聴いていて嫌になることってやっぱりあるんですよ。でも 「VOCALAND」は一生懸命に作った……というか、自分の中でもすごく凝っていた作品なんですよ。

──角松さん自身にとっても愛おしい作品なので、いろんな角度から見てもらっても構わないという感じなんでしょうね。

角松敏生:そう。だから、「マルチが残ってるんだったら、またリミックスしたいよ」って言ってるんですよ(笑)。

◼︎我々の年代にしか出来ないことがあると思います

──『VOCALAND REBIRTH』のサイトには《アナログ盤化などの制作に興味を持っていただけたらなお嬉しいのだが(笑)いつでも引き受けますよ(lol)》との角松さんのコメントが載っていますね(笑)。

角松敏生:はい(笑)。実際マルチで聴かないと分からない部分もあるんですよね。「Never Gonna Miss You」は今回もう一回全部マルチで聴いたんで、「あ、こんな音が入ってたんだ!?」みたいな発見があったりして面白かったですよ(笑)。

──それは一から音楽を創っている人ならではの愉悦でしょうね。

角松敏生:忘れちゃってることもありますけど、(原盤が)残っていれば、「俺、こんなことやってたのね!」みたいなところが分かるし、それがまた面白いですね。

──それでは、これは『VOCALAND REBIRTH』の内容からは若干離れた質問なのですが、「VOCALAND」シリーズを制作された1990年代後半から25年以上経ちまして、音楽の聴かれ方も随分と変わりましたよね? 現在はサブスクが主流となっています。この状況を角松さんはどのように捉えてらっしゃるのか是非とも伺いたく思います。

角松敏生:僕は、なるようになっているだけだと思いますけどね。サブスクは全然いいと思います。僕の作品ももっと出してほしい。僕の昔の作品の権利が昔の事務所のもので、いろいろ難しいくて。ニーズがあっても出せないことを残念に思ってる。求めている人がいるんだったら、ちゃんと提供してあげたいですよね。もはや、CDって商売としては微妙な領域です。僕のお客さんは新作を支持してくれて、CDを買ってくださいますし、今回の『MAGIC HOUR 〜Lovers at Dusk〜』もチャートに入るくらいまで皆さんに買っていただきましたが、僕はCDを作ってもたいした儲けにはならないです(笑)。一銭にもならないというと言い過ぎですけど(笑)、コストをかけていいものを作るということができない。今はコストをかけないでもマスター音源は作れますからね。凝ってお金をかけてスタジオアートとしてのCDを制作するメリットがない。現状の音楽市場でコストをかけられているのなんて、アニメくらいですよ。

──そんな状態なんですか!?

角松敏生:それでも僕は、良い音にこだわってパッケージは作ります。僕は中小企業事業者で、“信頼出来る商品を必ず作り続けます”ということを一つの旗印としていて、それに対する一定の顧客数がいるから。これがちょっとでも変なことをするとお客さんとの信頼関係がなくなってしまう。そういう意味で、ちゃんとした作品を定期的に出して、それ自体がお金にならなくても、それに見合ったツアーをやることによってビジネスにしているという。それを続けていければいいなという風には思ってるわけ。そんな中で今の音楽業界の話をすれば、今の60代くらいの人ってサブスク否定派と肯定派が拮抗している感じがある。あと“アナログ盤を出して”って言う人も多いし。

──レコードで聴きたいという方もいらっしゃいますか?

角松敏生:うん。作るのはいいけど、「本当に買ってくれるのかよ!?」という疑問はあるよね(笑)。アナログをいい音で聴きたいんだったら、いい音が出るアナログ機械を持ってないとダメなんだから。なんで若い子たちの間でアナログ盤がブームになっているかと言ったら、それは“聴きに行く”という所作が新鮮だからですよ。ジャケットからレコードを出してターンテーブルにかけて、針を落としてスピーカーの前で聴く……という所作が新鮮なんです。それに対してサブスクは、音楽を聴きに行ってるわけじゃなくて、情報を与えられに行ってるわけですよ。ちなみに昔って、履歴書に“趣味:音楽鑑賞”って書くことがあったじゃないですか?

──ありました(笑)。今はその言葉自体、ほとんど聞かないですねぇ。

角松敏生:でしょ? そういう文化的な変遷があるわけですよ。だから音楽の聴かれ方がサブスク中心なのは仕方がない。でも僕は、例えば『VOCALAND REBIRTH』でミックスしてリファレンスする時、わかりやすく言えば、プロ用の高価なスピーカーでリファレンスすると同時にBluetoothのイヤホンでもします。今、僕はどっちかというとBluetoothのイヤホンのリファレンスのほうを信じてますね。当然マスターは良い音なんですよ? アナログ盤のように“聴きに行ってる人”がいたら困るから絶対にしっかり仕事をしてますけど、実際どんな聴かれ方をしてるか分かりませんからね。

──ちゃんと熱を持ってしっかりとしたものを作っていれば、どんな聴かれ方であろうと、リスナーには届くであろうという確信がある。だからこそサブスクもOKということですね。

角松敏生:皆、手軽に聴きたいんですよ。それに、海外の方はもうそれしか聴く手段がないんですよ。海外の人はCDプレイヤーなんか持ってない方が多数ですから。

──え、そうなんですか!? それは知らなかったです……。

角松敏生:そうですよ(笑)。今CDの市場があるのは韓国と日本だけだよ。アメリカの家庭でCDプレイヤーを持ってる人は少ないだろうねぇ(笑)。

──下手すると“これは何ですか?”っていう世代もいますか?

角松敏生:今インバウンドで日本に来てる外国人はCDを見て「可愛い! レコードのちっちゃいヤツだ!」って買っていくわけです。で、買っていっても聴くものがないっていう(笑)。

──とすると、サブスクに抗っても仕方がないというか。

角松敏生:そうそう。逆に言っちゃうと、アナログブームが来たように、10年後にCDブームが来るかもしれないよ(笑)。

──ああ、少し前にカセットブームもありましたし。

角松敏生:いやぁ、アレはどうかと思ったけどね(笑)。でも、やっぱりカセットテープはなくならないみたいよ、お年寄りのために。結局ツールとして大切だったてぇのは、やっぱりカセットは偉大だったってことだね(笑)。

──それでは最後にもう一つ質問させてください。これもまた「VOCALAND」シリーズを発表した1990年代後半の、あるインタビュー記事での角松さんの発言です。どうして日本が負けるのかというと、“外国のポップスの影響はあっても、自分たちの歌、自分たちの歌い方で表現するのが、本当のミュージシャンの姿”と仰っていました。そこで、5月にリリースされた角松さんの新作『MAGIC HOUR ~Lovers at Dusk~』です。このアルバムを聴かせていただいて、本作には現在の日本の音楽市場に対する角松さんならではの反骨精神があるのではないかと勝手に考えてしまいました。実際のところ、その辺はいかがでしょうか?

角松敏生:いや、反骨精神というより、どちらかというと、自分的には自由になれた感じです。もう自分がやりたいことをやればいいし、自分がやってきたことというのは、僕たちの世代にしか出来ない宮大工みたいなことだから、それを遺していけばいいんだって思ってるんです。

──ほう。

角松敏生:いま娘が中3で、彼女からもたらされる情報も自分と同列に消化しなければならない環境にいましてね(笑)。別に若ぶってるわけじゃないんですが、苦じゃないんですよね。もし昔の僕がその年齢でスマホとかのデバイスを持っていたら、多分同じことやっていたなって思うし。そんな中で思うのが、今の若い子たちが作っている音楽も「これは普通に俺たちもやってたよ」ということ。若い世代に無意識に継承されてるんですよ。今の若い子たちも駄々漏れしている音楽の中からいいもの、カッコいいと思うものを無意識に継承している。僕は新しい音楽はもう出てこないと思ってるんですけど、それと同じように、そういう若者たちの姿を見た時、否定すべき音楽も僕の中にはないなと感じました。

──これもまた同記事での角松さんの発言ですが、“バブル以降、経済はもちろん、文化的にも日本は負けている。大衆がスタイルだけの音楽を喜んでいるようじゃ、その内、韓国や東南アジアにも負けるんだろう”と。

角松敏生:それ、僕が言ってた? すごいじゃん(笑)! 例えば少女時代やKARAが出てきた時に“この人たちがやっていこうとしてるエンターテインメントはもうラスベカスに行ってるな”って思ったんです。わかりやすく言うと今の日本の感覚としてはちょっと過激にセクシーな表現をしたとしても、それを確固たるエンターテインメントとして観せていたから、いやらしくない。もっとわかりやすく言うと、日本でAKB48がムーブメントになった時の彼女たちのビジュアル面、視覚的な効果と、韓国のそれでは圧倒的に韓国の方が成熟してるんですよ。分かります? 大人の女性と子供の女性、という違いかな。どちらにもそれぞれエンターテインメントとしての素敵な魅力があるのですが、韓国は女性として見せ方の強さが成熟していた。まずもって、ビジュアルもさることながらそこに確固たる実力があった。ダンス力、歌唱力、それらの基礎基準値が非常に高かった。

──はい。それはよく分かります。

角松敏生:日本の方はわざと成熟させてない感じがある。でも、韓国はバンバン成熟させていくわけですよ。そのエネルギーポテンシャルっていうのは一種の国力なので、“これは負けるな”って思ったんです。あと、それと同時に思っていたのは、文化の差。ヒップホップにしてもロックにしても、ダンス、R&Bにしても発祥は欧米なんですよ。誤解を恐れずに敢えて言うならば、日本はアメリカと戦争して負けた国である一方、韓国はアメリカと一緒に戦って勝った国なんです。これはアメリカ文化の流入の仕方において大きな違いがある。英語の理解、発音にしても違うし、音楽の感じ方やリズムの取り方など、もともと歴史的に培ってきた経緯が違う。日本国内で言えば、沖縄もアメリカと一緒に暮らしてきた地域だから独特ですよね。本国のロックやソウルなどを間近に体感してきたDNAがある。沖縄から優れた才能が生まれてきた所以だとも思います。ま、でも最近はどの国も似たり寄ったりになってきた気もしますが(笑)。

──そういう側面もありそうですね。

角松敏生:そうそう、実はですね、僕の新譜『MAGIC HOUR ~Lovers at Dusk~』を韓国でマスタリングしたかったんですよ。昨年、一昨年と『MILAD』というダンスと音楽が連動した舞台を作ったんですね。その時のオーディションでいろいろなダンサーの動画を見たんですが、そこに貼り付いている音楽はやっぱりK-POPが多くて、とにかく音がでかいわけ。気になって当時小学生だった娘の聴いていたTWICEのCDを聴いてみたら、“何だ、これは!?”っていうくらい音圧がでかいんですよ。とにかくCDを作る時のキャッチの仕方は音圧なのでね。直前に聴いてたアーティストよりも音がでかいか小さいかは聴いている人の感覚に大きな影響をもたらすんです。音が悪かろうがどうだろうが、でかい方が勝つ。で、なんで韓国のポップスはこんな音デカイ?ってね。それを解明しようと思ったんだけど分からなくって、それならもう実際にやってみるしかないと思って、『VOCALAND REBIRTH』のマスタリングを韓国でやらせてくれ”って言ったんです。しかも、TWICEやってたエンジニアで(笑)。今回は時間がなかったので韓国に行くまでの余裕はなく、データのやり取りで仕上げました。

──そうだったんですね!

角松敏生:そしたらね、素晴らしいエンジニアだった。2種類のマスタリング音源が送られてきましてね。ノーマルマスタリングとEQコンプマスタリング──分かりやすく言うと、原音を大事にしたものと、エンジニアがちょっと手を加えたもの、その2種類。ちなみにEQとかコンプレッションなどの加工をしないと音圧はかせげない。しかし、そのかけ具合によっては元のバランスを全く崩してしまう。マスタリングはそこが難しいんですよ。彼は、元のバランスを大切にしたバージョンとEQコンプで派手にしたバージョンの両方を送ってくれた。どちらの音も非常に綺麗で、僕がTWICEを聴いて衝撃を受けたほどには音圧は上がってなかった。しかし、非常に素晴らしい仕事をしてくれたと思いました。僕は当初、今の若い世代が感覚的にマスタリングしてるのかと思ってたんだけど、そうではなかった。職人エンジニアとして見事でした。最初は「Never Gonna Miss You」と「May your dreams come true」だけだったんですけど、本編もこの人でやろうって話になったんです。

──なるほど。

角松敏生:その本編のノンストップリミックスのマスタリングに関して印象的なエピソードがあってさ。こっちから音源を送ったら、僕が仮にマスタリングしたヤツよりも音がちっちゃいものが上がってきたんだよね。僕がマスタリングしたヤツは、音をデカくするために一箇所音が歪んでたんだけど、そこは綺麗になってた。だから「このまま、あと2デシベル上げてくれ」って頼んだんです。そしたら見事に音がデカくていいものが上がってきて、素晴らしいと思いました。しかし、そのエンジニアは「厳密に言うとこれはちょっと歪んでるんですよね……」と言ってきた。僕は「わかっていますよ、でも、これはこれで大丈夫です、良い仕事をしてくれてありがとう」と言いました。彼はマスタリングエンジニアとしてちゃんと歪みを気にしていた。丁寧な仕事してますよね。今後は実際に会ってみて現場を見てみたいと思ったよね。今回の『VOCALAND REBIRTH』ではとてもいい経験をさせていただきました。

──日本も負けてられないですよね。

角松敏生:いや、日本も皆ちゃんとやってますよ。でも、“もうちょっとできる”っていうこと。何かね、日本って規制が多いんだよ。 “これはここまで”とか“これ以上やっちゃいけない”とか。おかげで平和なのかもしれないけれどね。しかしその規制を超えていくためにはどうしたらいいのか? そこに何か工夫が必要なのか? ……未だ分からない。

──これは私個人の感想ですけど、『MAGIC HOUR ~Lovers at Dusk~』は歌詞にしてもサウンドにしても演奏のノリにしても十分にカッコ良くて、“日本もまったく物怖じする必要はない”と感じたんですよ。

角松敏生:もちろん今や日本のトラックメイキングも海外と全然遜色はないです。今はもう洋楽、邦楽の括りもないし、皆ある程度のことはやれるとは思うんです。しかし、宮大工的な仕事は、我々の年代にしか出来ないことがあると思います。若い子たちが逆立ちしても出来ないことが僕ら老人にはやれます。そういうものは絶対に遺していかなければいけないし、継承していってあげたいと思います。

取材・文◎帆苅智之

『VOCALAND REBIRTH Extended Mix by TOSHIKI KADOMATSU』

発売日:2024年06月26日発売
品番:AQCD-77640
価格:¥3,080(税込)
ECサイトはこちら:https://vocaland.lnk.to/VOCALAND-REBIRTH

【収録曲】
01. Give it up / Rie Yoshizawa
02. Heart to you 〜夜が終わる前に〜 / Anna
03. Splendid Love / Sala
04. NIGHT BIRDS / Tamara Champlin
05. WHAT CHA DOIN’ / Pauline Wilson
06. DO YOU LOVE WHAT YOU FEEL / Chocolate & Leonard Tucker
07. ふりむかないで 〜Don’t Look Back〜 / Aki
08. さよならのプリズム / Keiko Ito & Kiyori Fujii
09. あの日のまま 〜When I doubt my doubt〜 / Hiroko Shidoh
10. THE TWO OF US / Pauline Wilson & Philip Ingram
11. サヨナラはくちぐせ / Rie Yoshizawa
≪Bonus Track I≫
12. Never Gonna Miss You 2024 Remix / Rie Yoshizawa & Toshiki Kadomatsu ※新Mix
13. May your dreams come true / Toshiki Kadomatsu & Rie Yoshizawa ※新録曲
≪Bonus Track II≫
14. Never Gonna Miss You 2024 Remix ~Female Version~ / Rie Yoshizawa
15. Never Gonna Miss You 2024 Remix ~MaleVersion~ / Toshiki Kadomatsu
16. May your dreams come true ~Female Version~ / Rie Yoshizawa
17. May your dreams come true ~Male Version~ / Toshiki Kadomatsu

【CDショップ特典】
・Amazon.co.jp:「メガジャケ」(CDジャケットを24cm×24cmに引き延ばしたカード)
・楽天ブックス:「アクリルキーホルダー」(5cm角)
・セブンネットショッピング:「アクリルコースター」
・全国汎用先着特典:「ロゴステッカー」

【「TOSHIKI KADOMATSU Performance 2024 “C.U.M” vol. 1」TOUR会場特典】
本商品をご予約もしくはご購入いただいたお客様に
各会場先着にて会場限定オリジナル特典(クリアファイル)をプレゼントいたします。

<TOSHIKI KADOMATSU Live in KARUIZAWA 2024 with Bipod & Strings>

2024年7月13日(土)・14日(日)
13日(土) 開場:18:00 / 開演:18:30
14日(日) 開場:16:00 / 開演:16:30
料金:指定席:¥10,500(税込)/ 合唱席::¥10,500(税込)/ 立見:¥9,000(税込)
一般発売日:6月29日(土) 10:00〜

<TOSHIKI KADOMATSU Performance 2024 “C.U.M” vol. 1>

※すでに終了した公演は割愛
6月29日(土)北海道・函館市民会館
開場16:30 / 開演17:30
info:ウエス
info@wess.co.jp

チケット料金:全席指定 10,500円(税込)
・3歳以上チケット必要(座席は3歳未満でも要チケット)

一般発売日
・5月公演:3月16日(土)12:00〜
・6月公演:4月20日(土)12:00〜

◆角松敏生オフィシャルサイト

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