西山喜久恵アナウンサーが教える“相手の懐に入る極意”「イチローさん、今日の調子はどうですか?」という質問がダメな理由【フジテレビ新人アナウンサー研修日誌】

フジテレビと系列局の新人アナウンサー研修の様子を、2024年入社のフジテレビ新人アナウンサーが公式インスタグラムで報告しました。めざましmedia編集部“新人記者”の新美有加アナウンサーが、講師を務めた西山喜久恵アナウンサーにインタビュー。どんな相手でも懐に入れる西山アナに、初対面の人との会話など日常でも使える会話のヒントを聞きました。さらに、西山アナ自身が「難関だった」と語るイチローさんとの秘話から、インタビュー取材において大切なことも明かします!

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「イチローさんに『今日の調子はどうですか?』という質問はダメ」なぜこのタイミングでこの質問なのかを相手に納得してもらう

西山:
インタビューの難しさは、こちらの想定通りにはいかないこと。
私は、大人しい人へのインタビューが苦手です。
私だけ空回りして大変だった、ということもありました。

新美:
西山さんはスポーツ選手の取材をすることも多いですよね。

西山:
スポーツ選手には直接取材をしてからインタビューに入っていきます。

スポーツ選手の場合、どれだけ自分のことを調べて勉強してくれているかによって、心を開いてくれる人が変わると思います。

ちょっとした言葉や質問のワードに、しっかり取材をしてくれている・そのスポーツを理解していると思われるかが出るので、気を遣いますね。

新美:
その独特の見極める間合いは、どこか職人さんと会っている感じですか?

西山:
全部が全部そうではないけれど、イチローさんは特に難しかった。

例えば、「今日の調子はどうですか?」という質問はダメです!!

そんなことを軽々しく質問することすら出来なかった。

ルーティンを壊してはいけないので、ここぞの時にインタビューできるのですが、「今日はこういうことを聞きに来ました」と、なぜこのタイミングでこの質問なのかをまず納得してもらわないと聞けないんです。

だからこそ、「なんでこの質問をこのタイミングで?」って疑問に思われたらまずい。

毎回、当時の球団担当記者と打合せをして、すごい勝負をしに行く感じでした。

新美:
これは、いいインタビューになったと感じることはありましたか?

西山:
1995年のシーズン「がんばろうKOBE」を終えて、次のキャンプの時に、イチローさんの今後の「自分の立ち位置」を聞けたときは、盛り上がったというよりも考えて喋ってくれた気がして、何回かしっかり取材していたこともあって信頼してくれたのかなあ。

イチローさんの取材は、何日の何時にここ、各局何分と、しっかり設定されるから、しっかり準備ができていたのもあるかもしれません。

新美:
新人の頃からインタビューは得意でしたか?

西山:
得意かわからないけど、好きだったなあ、人の話を聞きに行くのが。

バラエティもそうですが、スポーツ担当だった2~3年目はよく取材に行っていて、なかでも当時Jリーグが始まったばっかりでウェルカムだったこともあってサッカー選手にはたくさん取材をしました。

皆さん優しくお話してくれて、選手本人にサッカーのことを教えてもらうこともありました。

Jリーグ担当だったから、結構取材に行けたこともあって通っていました。

試合も練習もすごく見に行っていたのですが、そういう姿を選手は何も言わないけれど見てくれているので、試合が終わったあとに「今日も来てくれたんですね~」って話始められるような人間関係ができているんです。

すごく心を開いてくれていました。

取材相手の懐に入る極意 余談ってどうすればいい?“西山流”取材相手の懐に入る極意

新美:
様々な難しいインタビューの場面乗り越えてきて感じたインタビューのコツは?取材相手の懐に入る極意があれば教えてください。

西山:インタビューのコツは、事前の情報収集かなぁ。

インタビュー前にカメラとかをセッティングしている時に余談をどれだけ出来るかである程度決まると思います。

雰囲気が良いと、ゲストが乗って喋ってくれるからです。

相手の懐に入るには、自分もさらけ出すことです。

新美:
余談が大事とのことですが、日常生活でもその余談の話題に悩む人もいると思います。

西山:
余談もリサーチだと思うなあ。

相手が、何が好きかとか、犬を飼っているとか「最近あの人こうらしい」とか…やりとりしている他の人を通じて、最近ハマっていることや「お嬢さんとどこへ行った」とか最近の生活について情報収集して、自分と接点があるところを探して会話の糸口にするんです。自分をさらけ出すというか。

新美:
接点を探すには引き出しがないと大変ですね。

西山:
共通点がなかったら、教えてもらうのでもいいんです。

「犬を飼うってどういう感じですか?」

ワインがお好きなら、「ワインは飲めないんですが、最初に飲むなら何がいいですか?」って、教えて下さい!って質問するのもいいですよね。

新美:
初対面の方との会話が苦手な人へのアドバイスはありますか?

西山:
初対面の人と話しをするのは、なかなか難しいですが、やはり相手に興味と敬意を持つ事ですねー。

大事な時間を割いて、私の話しを聞いてくださっているというスタンスがあれば、大丈夫です。

インタビューも商談も営業も、相手と仕事するものなので「大切な時間を頂戴しています」という意識があれば間違わないと思うな。

誠意を見せないと、ちょっと「なんぞや!?」って思われるけれど、「本当にお時間をいただいて…」って丁寧に話すと、向こうもそんなそんな!ってなるでしょう。

だからあらかじめ次の予定の時間を聞いておくとか、丁寧な対応が大事ですよね。

例えば、先日JO1の川西拓実さんにインタビューをしたのですが、なんと20時から。

その時間からして、1日中取材が入っていたのかなって察するじゃないですか。

聞いてみたら私のインタビューは6本の最後で、絶対疲れていると思ったので、カメラのセッティング中にこっそり「何本目?本当にお疲れのところありがとうございます…」って話すと、向こうも「この人はそこまで分かってインタビューをしているな」って分かって話してくれるのでいい雰囲気になります。

だから、商談とかでもその日のスケジュールを聞くのはいいんじゃないかな。

設定されたのが早い時間からなら、絶対この後予定があるから。

「朝からありがとうございます」っていわれると、丁寧ですよね。

余計な相槌はNG!?テレビのインタビュー 無駄な返事や相槌はNG!塩梅が難しいテレビのインタビュー

新美:
授業を通してどんなことを新人たちに気付いてほしいと思いましたか?

西山:
取材対象者の話を良く聞いているか?次の質問の事ばかり考えていないか?無駄な返事、相槌はないか?といったことです。

テレビならではの技術的な点かもしれませんが、せっかく撮ったON(コメント)も、「うんうん」「はいはい」と相槌が音として入っていると使えないんです。

頷きは必要なんですけど、音を出してはいけないんですよね。ただ、あまりに頷きを多用していないかも気を付けてほしいんです。

頷きすぎても、「この人、聞いているのか?適当に流していないか?」って思われかねないです。これは普段の会話にも通じるいいポイントかも!

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