やりたいことがどんどん叶う“じぶん時間”のつくり方、いま注目の「タイムコーディネート術」とは!?

仕事、家事、子育てと時間に追われる毎日。「何かをあきらめなければ時間は得られない」と思っている人もまだ多いはず。自身の経験から、自分が心地よくいられるように時間をコーディネートする「タイムコーディネート術」を考案した吉武麻子さん。「時間がない」が口癖だったまんが家の川瀬はるさんが“じぶん時間”を作るまでをコミックエッセイで描いた本が今年4月に発売。吉武さんは本書の監修として、川瀬さんにアドバイスをしています。

今回は吉武麻子さんに、「タイムコーディネート」を考案したきっかけや「じぶん時間」をつくるコツなどについてお聞きしました。

「時間がない」が口癖だった私を変えた。満足度がアップして充実した毎日が送れる“じぶん時間割”との出会い

自分にとって心地よい時間の使い方ができるタイムコーディネート術を考案

――吉武さんが「タイムコーディネーター」になられた経緯を教えてください。

吉武さん(以下敬称略) 子どもができる前は、韓国の広告に海外在住モデルをキャスティングする会社に勤めていました。やりがいはありましたが、海外のエージェンシーとのやり取りもあるため時差があり、家に帰ってからも気持ちが休まらない毎日。結婚後、キャリアと妊娠・出産・育児などのライフイベントを考えたときに、この働き方は難しいと考え始めたんです。そして、どこに住んでいても自分のペースで働ける環境を整えようと起業することを決め、退職し、その後、子どもを授かりました。

――タイムコーディネート術を考案しようと思ったきっかけは何ですか?

吉武 海外に住み、日本を含め世界各国と仕事をした経験から、外から日本という国を客観的に見ることができました。日本人はまじめで、家族思いの人が多く、仕事をするうえでとても信頼できます。ただ、責任感も強いので、自分のことを後回しにしているとも感じました。
「ありのままの自分」という言葉もよく使われるようになっていた時期ですが、決して自己中心的に、わがままにという意味ではなく、もっと自分が楽しいと思うことに時間を使っていく余裕があってもいいんじゃないかな、と思い始めたことがきっかけです。

――どのようにしてタイムコーディネート術を考案されたのでしょうか?

吉武 小さなころから教育に携わりたいと思っていました。変化していくこの社会の中で、子どもたちが「生きることが楽しい」と感じながら、どこにいても生き抜く力を身につけるために、すべての人に必要だと思ったのが、自分で時間の使い方を決めていくことでした。

タイムコーディネートは「心地よい時間の使い方で、ありたい未来を自分の力でつかみに行く時間術」です。

子どもにその大切さを伝えていくためには、まずは大人たちが実践する必要があると思い、タイムコーディネート術を大人に向けて伝え始めました。まずはまわりの大人が「生きることが楽しい」と笑顔でいることが何より、子どもの生きる楽しさにつながると思ったのです。

――タイムコーディネート術のポイントとなるものは何ですか。

吉武 自分にとっての心地よい時間の使い方はなにかを知って、それを中心にした時間割を作って実践してみることです。

ただ、「心地よさ」とひと言にいっても、人それぞれですよね。「楽しいことをやっている時間が長いほどうれしい」「時間に追われず余裕がある状態が理想」「いつも何かにチャレンジしているよう刺激のある時間の使い方が好き」など大まかな時間の使い方から、「仕事も子どもとの時間もしっかり取りたい」「子どもとの時間が最優先だけど、自分の時間も週3時間はほしい」など、具体的な時間の使い方バランスまで、自分にとっての心地よい時間の使い方はなんなのかを、まずは見つめ直してみてほしいです。

妊娠中〜産後しばらくは、とにかく「睡眠時間」を大切にしてほしい

――今回『じぶん時間割の作り方』の監修にあたり、この本を通してとくに読者に知ってほしいことはなんですか?

吉武 睡眠時間を大切にしてほしいということですね。睡眠時間はだれにも迷惑をかけず、自分で決められるために、この時間を削ってしまう人は本当に多いです。でも、睡眠時間を削っても、いいことは一つもないんです。
私も出産をするまでは、完全に夜型でしたが、現実的に出産後は体力がなくなります。授乳して、一緒に寝落ちして、朝起きたときの自己嫌悪感といったら……。「今日もやろうと思っていたことができなかった」と、毎朝落ち込み、しまいにはそれを「もっと早く寝てくれたら」と、子どものせいにしようとしている自分に心底がっかりしました。

それから時間の使い方を切り替えることにしたんです。寝落ちしなかったとしても、「どうせ疲れて頭は働かないから、いっそのこと早寝しよう」と。そして朝早くに起きて、やりたいことを1つだけでもやり、心地よく1日をスタートすることにしました。

とくに、これから出産を迎えられる妊婦さんには、何よりも睡眠を大切にしてほしいです。産後はとにかく体力勝負。寝られるときに、しっかりと睡眠を取っていただきたいです。

――話は少し戻りますが、仕事をしている妊婦さんからの相談で多いものや、悩みがちなことはなんでしょうか?

吉武 多いのが「とにかくいつも眠い」というお悩みです。先ほどもお伝えしましたが、この時期は、自分一人の体とは思わず、寝られるときは寝てほしいです。この時期にしっかり体を休めることは、これから何十年後の自分の体調にもつながってきます。遠慮せずに睡眠をしっかりとってください。

もうひとつ、育休復帰前・再就職前だからこそ「今しかやれない!」と、やりたいことを詰め込まれる方もすごく多いです。詰め込んだ結果、どれも中途半端になってしまう、というご相談をよくお受けします。
「仕事をしていない=時間がある」というわけでは決してないのです。
妊娠中はおなかに子どもがいて、思うように体は動かせない時期ですし、子どもが生まれてからは、子どものことや家事もあります。想像以上に時間は限られていると思ってください。
無理せず、やりたいことを一つずつ取り入れていきましょう。そのうえで、もっと時間を生み出したいと思ったら、シッターさんや家事代行、家電を取り入れるなど検討していくといいと思います。

――産後すぐ~3カ月くらいの100日は「いちばん大変な時期」と言われていますが、その時期のママたちへアドバイスをお願いします。

吉武 ホルモンバランスの影響で、精神的に不安定になりやすいのがこの時期です。初めての出産はもちろん、2人目以降も不安になることは少なくありません。

何度も言いますが、この時期は本当に無理をしないでほしいです。頼れるものは頼り、体を休めることに時間を使うことを意識してください。やりたいことがあるのはとても素晴らしいことですが、この時期は「やりたいことがやれたらラッキー!」くらいの感覚でいてください。

私自身の経験ですが、上の子は夜泣きがすごく、寝られない日々が続き、心が折れそうになったことがあります。そんな時にある本で「そんな時は星空を見てみてください。この空の下、あなたと同じように子どもを寝かしつけているお母さんはたくさんいます。一人じゃありませんよ!」というような内容を見たときに、本当に涙が出そうになりました。だからどうか、一人で抱え込まないでくださいね。

まずは“心地よくないこと”を少しずつ手放していく

――タイムコーディネートの失敗例や、つまずきやすいポイントがありましたら教えてください。

吉武 無理にやることを詰め込んでしまう癖がなかなか抜けない人は多いです。手放し下手さんですね。
「自分の嫌なことを誰かに押しつけている気がして、気が引ける」「やりたくないから捨てるみたいで嫌だ」と、手放すことに罪悪感を抱いているのです。
手放すことは決してわがままではありません。もちろんいきなりすべてを投げ捨てるのはよくありませんが、かといって、「なんで私だけやらなきゃいけないの」「私がやったほうが早い」と自分の気持ちを飲み込んでしまうと、いつまでも時間に追われ、イライラがつのります。そんな時間を過ごすのは、自分の人生に対する責任放棄とも言えます。また、手放さずに抱え込むことは、まわりの人の成長や活躍機会を奪うことにもなるんです。

心地よさを軸におき、小さなことからでいいので、心地よくないことを少しずつ手放してみてください。そのためにも、まずは自分にとっての心地よい時間の使い方を知ることが重要なのです。

――「続けるのが難しい」と思ってしまうのですが、続けるコツはありますか。

吉武 ポイントはいくつもありますが、「根気」「やる気」「モチベーション」など自分にムチ打つ頑張り方はひとまず、わきに置いておきましょう。
人間は基本的に怠け者です。まずは続かなくなりそうな理由をひとつずつつぶしておくことが大事です。自分が言い訳しそうなポイントを明確にしてつぶしておくことですね。

たとえば、「毎朝ウォーキングする」ことを目標にしたとき、「雨の日はやらない気がする」と思うなら、「外ではなくジムでウォーキングする」「雨の日はウォーキングの代わりに家でストレッチをする」など、自分が続けられる環境を整えておくことが必要です。

平等に与えられた24時間を、やりたいことを叶えるための時間に!

――「じぶん時間割」は、更新していくものだと思いますが、見直すときはどんなときでしょうか。

吉武 自分を含め、家族の生活リズムが変わるタイミングには、常に見直してほしいです。たとえば、入園・入学や、転職、異動などです。ほかにも、やりたいことが見えてきたとき、逆に、イライラや焦りが強くなったときも見直すタイミング。時間に追われると、余裕がなくなり、イライラしたりあせったりしがちです。そうしたときは、時間の整理をすると、心と時間の余裕を生み出せるようになりますよ。

――タイムコーディネイトでみなさんが悩みがちなことがあれば、教えてください。

吉武 他の人がうまくいっている時間の使い方が、自分に合っているとは限りません。また、「仕事を頑張るなら、子どもとの時間をあきらめなければいけない」「子どもとの時間を大切にしたければ、やりたいことはあきらめなくちゃ」などと思っている人も少なくありません。0か100かではなく、どんなバランスなら心地よく、満足できる時間の使い方になるのか、自由に考えてほしいです。

すぐにジャッジするのではなく、まずは自由に思い描いてみましょう。その理想に近づくために、今何ができるのか、試行錯誤しながら自分のベストバランスを探してほしいと思います。時間の使い方も、100人いたら100通りです。あなただけの心地よい時間の使い方を探求してみてください。

――最後に「時間がない!」が口癖のすべての人へメッセージをお願いします。

吉武 社会人として、上司として、妻として、母親として、地域住民の一員としてなど、役割が増えていけば、「時間がない」と感じるのは当然のことです。
でも、1日は24時間しかありません。ただし、24時間はだれにも平等に与えられた財産です。この限られた24時間という貴重な財産をどう使うかで、人生は変わっていきます。
その貴重な時間を「時間がない」とあせったり、あきらめたりすることに使うのではなく、やりたいことを一つずつ実現し、達成するための「行動」に使ってほしいです。

一つの達成体験が自信にもつながりますし、次のモチベーションにもなります。一気にいろいろなことを実現しようとするのではなく、時間の整理をしながら、一つずつ積み重ねていきましょう。ペースはゆっくりでもいいのです。

イラスト/川瀬はる(『じぶん時間割の作り方』より)取材・文/樋口由夏、たまひよONLINE編集部

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自分の心地よさを優先した“じぶん時間割”で生きることは、わがままでも自己中心的でもなく、自分を大切にすること。それが巡り巡って子どもたちやまわりの人も幸せにしていくと感じました。誰もが試行錯誤しながら、自分らしい時間の使い方を見つけていけるといいですね。

吉武麻子(よしたけあさこ)さん

PROFILE
TIME COORDINATE株式会社代表。大学卒業後、旅行会社勤務・韓国留学などを経て独立。疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスもあげていくオリジナルのタイムコーディネート術を考案し、のべ3000名以上に指南。2児の母。

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●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。

『やりたいことがどんどん叶う!じぶん時間割の作り方』

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