玉山鉄二、『笑うマトリョーシカ』で大事にしているのは“さじ加減” 鈴木役の難しさを語る

6月28日から放送がスタートするTBS金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』で政務秘書官・鈴木俊哉役を演じる玉山鉄二のインタビューが公開された。

早見和真の同名小説を実写化する本作は、人間の欲望と謎が絡み合うヒューマン政治サスペンス。 脚本は、『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)、『ROOKIES』(TBS系)などのいずみ吉紘と、『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)などの神田優が担当。TBSドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』『危険なビーナス』などを手がけた橋本芙美がプロデューサーを務める。

主人公の敏腕新聞記者・道上香苗を水川、未来の総理候補ともいわれる若き人気政治家・清家一郎を櫻井翔、そして、清家と奇妙な関係を築いている政務秘書官・鈴木俊哉を玉山が演じる。そのほか、丸山智己、和田正人、渡辺大、曽田陵介、渡辺いっけい、加藤雅也、筒井真理子、高岡早紀、青木柚、西山潤、濱尾ノリタカの出演が発表されている。

玉山は本作の原作、そして脚本を読んだときの印象を次のように明かす。

「原作は情報量が多く、文学的な表現や人間同士のえぐみなどさまざまな要素が含まれているので、映像化するのはハードルが高いことだと思いました。だからこそ余計に鈴木という役を全うして、今までにない異質な作品になればと思ってオファーを受けさせていただきましたね。原作は清家と鈴木の高校時代などの“回想”というベースがあっての現代なので、同じストーリーをなぞる中でも回想を見せる順番やタイミングなどは、本当に脚本家の方々が試行錯誤して作ってくださったなという思いがあります。それぞれのキャラクターも立っていて、その絡み方に癖や違和感がある。そういった部分もお客さんに楽しんでいただけたらなと思っています」

自分も表に立つ能力がありながら裏方に周り、清家を高校時代から支え続ける鈴木という人物をどのように捉えているのだろうか。

「自分に対して希望も期待もないような男で、叩いても響かない心を持っているのではないかと思いながら演じています。道上や清家が絡んでいる“ある事件”の中で、いつもポーカーフェイスの鈴木から溢れててしまう“鈴木っぽくないところ”が視聴者の心に響くのではないかと。現状、台本が全てできていないので、演じながら難しい部分や迷いももちろんあり、監督やプロデューサーの方と入念に話をして練り上げて、みんなで鈴木を作り上げている感覚が近いです。水川さんや櫻井さんとの現場での会話の中にヒントが落ちていたりもするので、あえて明確なものを決めずに演じた方が、鈴木という人物に近づけるのかなと思っています」

水川が演じる道上が視聴者と同じ目線のキャラクターだとすると、逆に鈴木は視聴者と駆け引きをするような立場の人物。演じるにあたっては、「さじ加減」を大事にしていることを玉山は明かす。

「惑わしたりミスリードしたり。ミスリードする=ストーリー上リアルではないということもあると思うので、リアル何%、ミスリード何%というさじ加減が大事だと思っていて。監督と僕の間でその数値にズレを感じたら、僕はこう思う、ということを伝えて話し合って、擦り合わせていく作業をしています。だから鈴木というキャラクターは難しいですよ。原作は鈴木の主観で物語が進むことが多いのですが、ドラマでは僕はその役割ではなく、惑わす方なので」

水川が演じる道上を玉山はどんな人物と捉えているのだろうか。

「父親がなぜ亡くなったのか、その真相を知りたいという部分でしっかりとした芯のある力強い女性だと思います。その中で彼女にしかない目線や感覚を持っているのが彼女の持ち味。彼女がセオリー通りの解釈をしないことが物語のサスペンス的な要素やミステリー的な要素を強めていくと思います。演じる水川さんご本人は、少女のような愛嬌と関西人特有のツッコミの速さのある清々しく気持ちのいい女性。20年くらい前にご一緒して、その後も何度かお会いしていますが本当に変わらないですし、座長として僕らに気を遣ってくれていると感じる時もあります。出ずっぱりで説明セリフも多い中あまり無理してほしくないなと思いますが、本当に助けられていますね」

本作で玉山がもっとも共演シーンが多いのが清家役の櫻井翔。初共演となった櫻井についてはどのような印象を抱いたのだろうか。

「鈴木と清家は一政治家と一政務秘書官という間柄ですが、それがもしかしたらいびつな関係なんじゃないかという気持ち悪さが全体的にあれば良いなと思っていて。それに対して視聴者の方が疑念や違和感を感じることがスパイスとなって、ストーリーによりボリュームがつくのかなと思います。清家は本当に難しいキャラクターですが、櫻井さんはうまく着地させていらっしゃるなと。政治家という役に説得力を持たせる力強さみたいなものには、櫻井さんの存在が絶対に必要だったと感じています。櫻井さんとは初共演ですが、誠実で弱音も吐かないんですよ。僕が撮影現場で『暑い暑い』とかって文句ばっかり言っているのに(笑)、櫻井さんは何も言わないし、修行僧の方みたいで。年齢も近いんですが、見習わないといけないなとしみじみ思いましたね」

たくさんのキャラクターが登場する本作。玉山は気になるキャラクターとして意外な人物の名前を挙げた。

「高岡早紀さんが演じる“謎の女”ですね。独特な煌びやかさと妖艶さを兼ね備えたキャラクターで、若干の怖さの要素がある。僕はまだ同じシーンがなくて、一緒にお芝居はしていないんですが、楽しみで仕方がないです。高岡さんの妖艶なお芝居で、この作品をかき乱してほしいです」

本作は人の隠された内面に迫って行くドラマ。玉山にはあまり明かしていない素顔はあるのだろうか。

「僕は結構“怖い”と思われがちなんですが、実際にあうと普通のおじさんだね、みたいな(笑)。僕も人見知りをしますが、打ち解けると結構心を開いてしまうタイプで、余計なことを言っちゃうんです。だから『なんかイメージと違いますね』みたいなことは結構言われます。もちろんキャラクターによりますが、お芝居をしてても何かふっと閃いたことをアドリブで口に出してしまったりする時もありますね(笑)」

最後に視聴者に向けて次のようにメッセージを送った。

「政治を扱った作品ではありますが、人間同士の絡み合ったミステリーやサスペンスの部分、キャラクターの魅力を楽しんでいただけるんじゃないかと思います。清家がこの年齢で大きなポストを与えられ、鈴木が清家をもっと上のポストに押し上げるために鼓舞奮闘する中で、その関係性が果たしてピュアなのか、鈴木が清家を利用しているのか、利用されているのか……よく分からない複雑な関係を、視聴者の方に推測しながら楽しんでいただけたらと思います」

(文=リアルサウンド編集部)

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