山形の初夏の味覚・サクランボが高温障害で大きなダメージを受けている。園地には商品にならなかった実が残る一方、店には商品が一つもない異常事態となっている。
28日、サクランボの主要産地・東根市を訪れると、紅秀峰の後に旬を迎える「紅てまり」のパック詰めが行われていた。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「きょう（28日）が最後の出荷。いつも7月5日くらいから始めている。（Q.6月中にサクランボは？）終わり。6月の早い段階でほとんどなくなるのは今まで経験がない」
「紅てまり」も高温の影響を大きく受け、商品として出荷できないものも多くあるという。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「紅てまりは果肉がバリバリ硬い品種だが、柔らかい・双子になりかけ、シワシワになったものなど、生育不良で小さいものもある」
例年であれば、この時期の作業場は出荷の最盛期で慌ただしいが、28日は静まりかえっていた。
園地にも連れて行ってもらった。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「この辺はもう商品にならない。収穫するまでもない。こんな光景は見たことがない」
6月に入って気温が高い日が続いたため、サクランボは実が大きくなる前に一気に熟したり、色付きが進んだりした。
枝には今もシワシワのものや黒ずんだもの・柔らかくなったものなど、収穫しきれなかったサクランボが残っていた。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「生育期間、本当は膨らんでいく時期に暑すぎて熟す方向に行ってしまったので、小さいまましおれていった」
サクランボの収量は例年20トン程度だが、今年は6トン少ない、14トンにとどまった。
さらに、収穫できたサクランボの中にも、実割れしたものや実がくっついた双子果が10トン含まれ、実際に商品として出荷できたのはわずか4トンだった。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「ただただ辛いしか言葉が出ない。気候のせいと言われればそれまでだが、1年間、冬の剪定からずっとやって来て、それでこれなのでしんどい」
霜被害で不作だった「去年の分も」と、意気込んでいた矢先の高温被害。
周りには廃業を考える生産者も多くいるそうだが、植松さんはすでに来年を見据えていた。
（サクランボ農家・植松真二さん）
「諦める気はないので、来年に向けやれることをやりながら、何が何でも来年こそはと踏ん張るしかない」
そして、サクランボの不作は小売りの現場にも影響を与えていた。
（ヤマザワ 生鮮商品部 青果マネジャー・江口遵さん）
「ここからここまで大体サクランボが並んでいる…」
山形市のスーパーを訪れると、例年であれば7月まで店頭に並ぶサクランボの姿はなく、代わりにモモやメロンなどで埋まっていた。
この店では、毎年、贈答用のサクランボの注文を受けているが、入荷が少なく今年は注文を受けた分の3割以上をお断りする結果となった。店頭には商品を届けられなかったお詫びの言葉が掲げられていた。
（ヤマザワ 生鮮商品部 青果マネジャー・江口遵さん）
「毎年たくさんの注文をいただき、待ちに待っているお客さまにお届けできていたものが、今年は一部のお客さまに届けられないのが本当に心苦しく思う」
注文を断った分は個別に連絡を取り、返金の対応をしているという。
さらに影響はふるさと納税の返礼品にも及んでいて、県全体で33万6000件あった申し込みのうち、26日時点で7万6000件（約22％）で予定通りの発送ができていないという。
各市町村は、申し込みをした人に「ラ・フランスやモモ、米や肉など代わりの返礼品を送る」「今年の分のサクランボを来年送る」といった対応をとっている。
