日本の小学校の活動に驚き、日中修学旅行事業に携わって30年

元小学校教師の張信氏は40年前に修学旅行で北京を訪れる日本人の受け入れに携わり、今や修学旅行業界をリードする存在となっている。写真は天安門。

修学旅行は日本の教育業界が行う事業の中で最も特色がある活動の一つだ。元小学校教師の張信氏は40年前に修学旅行で北京を訪れる日本人の受け入れに携わった。それから10年後、中国教育業界変革の波に乗って中国修学旅行市場を開拓するために会社を設立し、今や修学旅行業界をリードする存在となっている。

日本との関わりや日中両国の修学旅行への期待について、張氏に話を伺った。

修学旅行事業を始めたきっかけは何ですか?

1993年、私が教師になってちょうど10年目の節目でした。勤務していた小学校で中国全土の小中学生を対象に専門的な課外活動プログラムを提供する学内ベンチャーを立ち上げることになり、私はこれまでの活動実績を評価され、同企業の代表になりました。2000年には学内から独立することになり、現在の北京大潮研学国際旅行社を設立しました。主な業務は児童・生徒を対象とした中国全土・海外への修学旅行を企画・派遣すること、中国全土・海外から北京を訪れる修学旅行団を受け入れることです。

社会に出てから40年の間、主に教師として10年、そして修学旅行を30年運営してきました。われわれの修学旅行に参加する、または受け入れで対応した人数は年間で数十万人以上に達し、事故や苦情はこれまで一度も起こったことがなく、この点からツアーや受け入れサービスに自信があります。

2016年に中国教育部をはじめとする11の部門が小中学生を対象とした修学旅行の推進について意見を発表しました。中国には「万巻の書を読み、万里の道を行く」という言葉があります。新時代において、修学旅行は道徳教育を確立するために最も重要な手段の一つと考えています。どのようにして家庭、学校、社会を巻き込んだ修学旅行を企画できるのか。同業他社は日々模索し、また多くの問題と対峙しています。

私はこれまで培ってきた40年間の豊富な教育旅行の経験やノウハウをまとめ、教育部の協力を仰ぎながら、中国教育テレビと共同で全10回の修学旅行講座を制作し、テレビやネットで放映しました。中国全土の小中学校や修学旅行関係者に無料で公開しています。これも私が常に抱いている「教育ファースト」の初心から行ったことであり、この講座を通して修学旅行業界の発展に寄与することができたと感じています。

これまでの日本との関わりについてお聞かせください。

1983年、私が20代の頃です。100年近い歴史を持ち、数多くの著名人を排出している北京の名門小学校「宏廟小学校」で教師をしていました。同校では定期的に海外から団体で訪中する外国人児童・生徒の受け入れや交流をする機会がありました。初めて受け入れた外国人は日本の修学旅行団体で、船で中国を訪れました。当時、中国は改革開放直後で、外国人が中国を訪れるのは非常に珍しい体験で、私も受け入れに関わらせてもらったのですが、この出来事は今でも忘れられません。

天安門広場で日本人の先生が児童らに長安街(天安門広場前を通る道路)を走るトヨタ車の台数を数えさせているのを見かけて感動しました。これは日本の愛国教育なのだと。この出来事は私が中国人への愛国教育をどのように行っていくべきか考えるきっかけになりました。すべての行程を終えて日本に帰国する際、日本側の校長からアルバムをプレゼントされました。その中には日本の学校で開催されている運動会、学芸会、合唱コンクール、四季に特化した課外活動など、さまざまなイベントの写真が収められていました。日本の学校はここまで校内・課外活動が豊富なのかと感化された私は、起業後真っ先に「中国最東西南北の都市を訪ねる修学旅行」を企画しました。

36年前に宏廟小学校を訪問した日本の小学校を探し出した私は2019年に、当時頂いたアルバムの原本を持って、東京都中野区の同校を訪問しました。もちろん当時の先生と会うことはかないませんでしたが、現職の校長にお会いすることができ、アルバムをお見せしました。 校長は私がアルバムを40年近く保管していたことに驚きを隠せない様子でした。この小学校には数十年前のアルバムなど当時の資料は保管されていなかったので、私はまず中国に戻ってこのアルバムを複製し、東京オリンピックの際に再度日本を訪れ、原本を小学校に寄贈すると伝えました。日本の小学生を中国に招待することも約束したのですが、それから間もなく新型コロナウイルス感染症が大流行し、現在もこの約束を果たすことができていません。

アフターコロナでは修学旅行を通して日中間の交流はどのようになっていくと思いますか?

日中関係は良い時もあれば悪い時もあります。今後両国の往来や交流を促進するためにも、メディアには客観的な報道をしてもらい、より多くの子どもに正しい情報を発信してもらいたいです。また、アフターコロナの展望ですが、日中間の修学旅行が発展する良い機会が訪れると考えています。両国には長い間培ってきた優れた学問、研究成果、伝統文化があります。今後日中両国で青少年向けの修学旅行の往来が促進されることで、お互いの優れた部分を伸ばし、改善すべきポイントを補完し合うことができるのはもちろん、何より大事なのは日中青少年間の友情が生まれることです。1日も早く、日本の児童・生徒が再び中国を修学旅行で訪ねてくれることを楽しみにしています。その時にまた長安街で日本車の台数を数えてほしいです。私も中国の子どもたちを連れて再び日本を訪ねたいと思います。その際には中野区にある小学校を訪れ、2019年に交わした校長先生との約束を果たしたいです。(提供/日中文化交流誌「和華」・編集/藤井)

【張信氏プロフィール】

北京大潮研学国際旅行社創業者、北京遊学網情報サービス理事長、北京市旅行社業界協会研究学専門委員会主任。中国教育テレビ研究旅行公開授業番組総企画者、総制作者、総監督。修学旅行事業に専念して約30年の間に小中学生300万人近くにサービスを提供。北京優秀創業企業家を受賞。

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