扇子もトランプも右利き用に作られていた!左利きにも優しいユニバーサルデザインの日用品

8月13日は左利きの日。1992年にイギリスで、”誰もが安全に使える道具の製造”をメーカーに唱えたのが始まりとされています。逆説的に考えれば、これまでのほとんどの文房具や調理器具などの日用品は、右利きを前提として作られていたということになります。しかし、最近では左利き用はもちろん、力の弱い人など誰でも快適に使えるよう配慮された「ユニバーサルデザイン」の道具が増え始めています。

そんな中、2018年の”左利きの日”から、左利き用、ユニバーサルデザイン双方の道具を専門的に取り扱っているウェブショップが「左ききの道具店」です。同店の店長である加藤礼さんに、使いやすくてデザインも素敵なおすすめアイテムを教えていただきました。

右利きと同じようにデザインもカラーも、使い勝手も選べたら

店長を務める加藤さんは、左利き。もっと正確にいうと、左利き寄りの“クロスドミナンス”です。クロスドミナンスとは、用途によって左右の手を使い分ける人のこと。加藤さんの場合は、お箸とハサミを扱う際だけ右手だそう。

そんな加藤さんには、店舗を始めるきっかけにもなった、”ずっと感じていた思い”がありました。それは、左利き用の商品が”珍しいものや面白いものとして扱われていることへの違和感”でした。

「品質やデザイン性が考えられたたくさんの道具がある中で、これまでは左利きというと、途端に面白グッズのように扱われてしまい、使い心地がよくなかったり、実用性があまりないようなデザインになっていたりすることがときにあったように思います。そんな道具を見つけてしまうと、ちょっぴり残念な気持ちといいますか、モヤモヤすることがありました。
左ききの道具店では、本当に使いたくなるような商品を提供したいと思っています。道具として優れた品質かつ長く愛用したくなるデザイン、という軸を持って商品をセレクトしています」(左ききの道具店店長・加藤 礼さん、以下同)。

左きき用を中心に、ユニバーサルデザインのアイテムも積極的に取り揃えているという加藤さん。

「お付き合いのあるメーカーさまとお打ち合わせしている際にも、年々、ユニバーサルデザインへの意識は高まっていると感じます。これといったエピソードはありませんが、むしろ話の端々に自然と感じられ、価値観が浸透していると言えるのではないでしょうか」

おしゃれで使いやすい!左利き用のアイテム

手帳にはじまり、ペンやハサミ、パン切りナイフ、トランプまで、左利きの人にとって使いやすく、おしゃれなデザインのアイテムをセレクトしていただきました。あると毎日がちょっとうれしくなる、そんなラインナップです。

・左手で書く人のためにつくった手帳

HIDARI「左ききの手帳2024」
3300 円(税込)
左ききの道具店オリジナルブランドの「HIDARI」から登場。日付が右上に表示されたり、開き方が逆になっていたり、左利きの人に使いやすいよう工夫されています。この手帳は、加藤さんの「左ききの手帳を作りたい」というTwitterでの投稿をきっかけに生まれました。カラーバリエーションも豊富で、毎年人気の色が変わります。※2025年版は2024年9月発売予定

「手帳メーカーさんと打合せを重ねながら、左利きの人が使いやすいように工夫を凝らしました。おかげさまで好評いただき、今年で販売してから5年目となります。なかでもネイビーは、お仕事で使われるお客さまを中心に不動の人気です。左利きのアイテムはカラーバリエーションが少ない……そんな悲しい思いをしてほしくなくて、5色展開にしています」

・もうペン先を引っ掛けない、さらさら書ける万年筆

Schneider「万年筆〈Base〉左手用」2640円(税込)
左利きでも気持ちよく書ける万年筆。「普段使いの文具」をモットーとする創業80年を超えるドイツの筆記具ブランドSchneider」(シュナイダー)のもの。高級すぎず、カジュアル過ぎない見た目で毎日使えます。ペン先の太さは中字。ちょっとしたメモやノートを取る際に重宝します。シーズンカラー 全3色。

「左利きの人って持ち方が個性的なことが多いので、ペン先がちょっと引っかかりやすいと悩まれる人はけっこういらっしゃいます。そういった場合でも問題ないようにペン先に加工がされているのでスラスラ書けますよ。ペン先には耐久性に優れたイリジウムという金属を使用しているので、左利き特有の“押し書き”にも耐えられます」

・分解して洗えるから衛生的!左利き用キッチンバサミ

サンクラフト「分解して洗える左手用キッチンバサミ」3300 円 (税込)
「紙や紐などを切る普通のハサミなら右手用ので間に合わせてしまう」という人も、分厚いお肉やビニールのパッケージとなると、上手に切れないことも多いはず。そんなときに重宝するのが、左手用キッチンバサミ。しかも分解して洗えるので衛生的です。

「左利き用のキッチンバサミはこれまでにもあったアイテムなのですが、分解して洗えるタイプというのがかなり少ないんです。オンラインショップを中心に運営している私たちですが、実店舗が岐阜県各務原市にあり、隣には関市という日本刀などの刃物製造で大変有名な地域があるんですが、そこでキッチン用品を手がけるメーカー・サンクラフトさんと共同開発した自信作です」

・3種類の刃でどんなパンもスッと切れるパン切り包丁

サンクラフト「パン切りナイフ〈せせらぎ〉/左手用」
5500円(税込)
左手用に刃つけされたパン切りナイフ。パン切り包丁の波刃は、出刃包丁と同じ片刃なので、右手用を左手で使うと斜めにそれてしまうことがあります。このナイフならまっすぐに切れます。

「キッチンバサミと同じメーカーさんのアイテムです。刃付けが左という特徴のほか、なんといっても、3種類の刃であることが美点。持ち手に近い方から小波(細かい刃)、大波(荒い刃)、ストレート刃(先端)と分かれているので、ふわふわ系からハード系まで用途に合わせて使い分けることできれいにカットできます」

・無理なく気持ちよくあおげる、左利き用の扇子

HIDARI「左ききの扇子(BUTTERFLY)/左手用」3600円(税込)
骨の重なりが一般的な右利き用の扇子と逆になっていることで、左手で開きやすいのはもちろん、だんだん閉じてくることなく楽にあおげます。グレーと黄色のカジュアルなチェック柄はオリジナル。普段着にも合わせやすいので、扇子デビューにもぴったりです。

「扇子って本当によくできているなと思うのが、持ったときに開いた状態を自然にキープできるような作りになっているところです。ただほとんどの扇子が右利き用に作られているので、左利きが使うとあおいでいるうちにだんだん閉じてきてしまうんですね。これは構造上の問題であってけっして自分が不器用なわけではない、と気づくきっかけになるアイテムのひとつです」

左右兼用で誰とでもシェア!ユニバーサルデザインのアイテム

左利き、右利き関係なく使える、誰にでも優しい設計なのがユニバーサルデザイン。つづいて、自分で、恋人や友達、家族とみんなでシェアして楽しい、見た目もすてきなアイテムをセレクトしてもらいました。

・左利きのお悩みNo.1! 一度使ったら手放せないレードル

一菱金属「すくいやすく注ぎやすいレードル/左右兼用」2090円(税込)
一般的な横口のしずく型スープレードルは、右手で使うことだけが想定された形なので、左手で使うときわめて使いづらいのが難点。このアイテムは、注ぎ口が両側にあるのでどちらの手でも注ぎやすいのが魅力です。ステンレス製でさびにくく、食洗器OKでお手入れも簡単。

「左利きさんのお悩み選手権があったとしたら、おそらく1位に登場するであろうアイテムなのがレードル。このアイテムは、イチョウの葉のような左右均等の形。どちらでもっても、汁がこぼれにくく、なおかつ尖った葉先で具をしっかりキャッチしてくれる優れもの。左利きのシェフが監修されたようですよ」

・あるようでなかった理想の定規

HIDARI「HIDARI 15cm定規/左右兼用」330円(税込)
左利き用と右利き用双方の目盛りが定規の表面に設置されているのが特徴の定規。さらに目盛りの0(ゼロ)は定規の端から始まるようにデザインしたことで、使い勝手をよくしています。長さは15cm。ペンケースにもちょうどいいサイズです。全4色。

「左右両用の定規というのは、実はめずらしくないのですが、左利き用だけ目盛りが小さかったり、裏面に配置されていたりする場合が多いのも事実。左利きとして理想の定規を作ってみたくて出来上がったのがこのアイテムです。目盛りの0が端から始まっていると、深さなどを計る時にも何気に便利なんですよ」

・レトロポップなカラーがかわいい左右兼用巻き取りメジャー

HIDARI「ユニバーサルメジャー/左右兼用」1430円(税込)
表は「左利き用」、裏は「右利き用」の目盛りがプリントされている巻き取りメジャー。どちらの手で引いても目盛りが見える快適設計です。カラーは、ブラック・ターコイズブルー・ピンク・オレンジ・イエローの5色展開で、選べる楽しみがあるところも魅力です。

「基本的には一般的なメジャーは右手で本体を持って使うというような設計になっているので、左手で持って使おうとすると、数字が逆さになってしまうので使いづらいんです。このアイテムは、両面に目盛りを印刷しました。テープの色も、左利きは白、右利きは黄色と、一目でわかるようにしています」

・狙った量のバターが取れる! 左右兼用のバターナイフ

燕振興工業「ステンレス バターナイフ/左右兼用」770 円 (税込)
ハンドル部分にほどよい角度が付いたバターナイフ。ナイフの形も左右対称なので、どちらからでも切ったり塗ったりしやすいのが利点です。先端が鋭角なので、固いバターを切り出すときもスムーズ。食洗機も使えます。

「そういうものだと思って使っていらっしゃる左利きの方も多いかもしれませんが、一般的なバターナイフの形は右手用にできていることが多いです。こちらは左右対称なのでどちらの手でも気持ちよくバターを塗っていただけますよ」

・使いやすくてかわいい! 葉っぱ型のトランプ

KIKKERLAND「どちらの手でも見やすい 葉っぱのトランプ/左右兼用」1650 円 (税込)
実は知られていないのが、トランプが右利き用に作られているということ。一般的には、左上隅と右下隅にマークと数字が入っていることが多いので、左手で扇形に広げて持つと隠れてしまいがち。葉っぱ型のこのトランプは葉先にマークと数字が配置されているので、どちらの手で持っても見やすくなっています。

「使いやすいのはもちろんのこと、子どもが持っている姿がとてもかわいい! 男性にも人気です」

今後は、オリジナル商品の拡充や海外展開にも力を入れていきたいという加藤さん。岐阜県各務原市にある実店舗には、遠方から来店されるお客さまもいらっしゃるとのこと。日を重ねるごとに増えていく魅力的なアイテムに目が離せません。

Profile

「左ききの道具店」店長 / 加藤礼

ショップの発案者で自身も左利き寄りのクロスドミナンス。左利き用の道具をメインに、ユニバーサルデザインの道具も扱うほか、品質・デザインにすぐれた道具をセレクトしています。文房具好きを生かした「左ききの手帳」をはじめとしたオリジナルアイテムも開発しています。
左ききの道具店オンラインショップ

取材・文=染谷遥

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