【今月のSPOTLIGHT】Vol.8 キム・スヒョン

妻の身を案じる一途な夫役がステキ!

本国における放送局・tvNの歴代視聴率第1位を獲得したほか、世界配信を担うNetflixのグローバルランキングでもトップに。今年の春に大ヒットを記録した韓国ドラマ「涙の女王」の立役者の1人と言えば、この人。財閥令嬢との大恋愛を経て格差婚に至った企業弁護士・ヒョヌを演じ、キム・スヒョンは視聴者の心をわしづかみにした。

全16話から成るドラマの冒頭、ヒョヌは大手デパートの社長、ホン・ヘイン(キム・ジウォン)の夫として登場。片や田舎出身の青年、片や財閥令嬢のヒョヌとヘインには、大恋愛の末に結婚の誓いを立てた美しい過去がある。だが、今や夫婦仲はすっかり冷え切り、ヒョヌは密かに離婚を考えているところ。そんな中、ヘインが脳腫瘍で余命3カ月であると判明し、ヒョヌは「あえて離婚しなくても、お別れの時は来るかも?」などと不埒(ふらち)なことを考え始めるが…。

そんなヒョヌが、なぜ視聴者の心をわしづかみに? と思うのはごくごく正しい反応。実際、冒頭1~2話はブラックユーモア調のマリッジコメディーよろしく、立場が弱くて情けなさすら漂うヒョヌと、クールビューティーを通り越して冷淡なヘインの攻防がじりじりと描かれていく。ところが、ささいな勘違いや思惑が入り乱れ、偶然、必然が時に楽しく、時に意地悪く連打し始めた頃から、ヒョヌとヘインの間にくすぶっていた愛が再燃。それに伴い、2人の本来の魅力がどんどん顔を出し始める。不遇の婿としてモヤモヤした日々を送っていたところから一転、妻の身を案じる一途な夫と化したヒョヌのステキなこと! また、愛の再燃ストーリーを邪魔する悪者が現れたり、まさかの陰謀劇が絡んできたりもする怒濤(どとう)の展開の中、大きな危機すら柔軟に乗り越えようとするヒョヌの知力、判断力、身体能力も発揮されていく。

タイトルの「涙の女王」が示唆するものは本編を見て感じ取るべきだが、ひとつ言えるのはヒョヌの涙や泣き顔も作品の大切な要素だということ。瞳の潤ませ方ひとつ、涙のこぼし方一つ、このあたりの繊細な演技にもキム・スヒョンのうまさが光る。今作の特大ヒットはもちろん、兵役からの復帰後第1作となった「サイコだけど大丈夫」もヒットし、続く「ある日~真実のベール」でも高い評価を獲得するなど、もはや“出演するドラマにハズレなし!”の状態となりつつある信頼度100%俳優キム・スヒョン。となると、次はどんな作品に出演するのか、楽しみしかない。それまでは、「涙の女王」を見返して待ちたいと思う。

【プロフィール】

キム・スヒョン(Kim Soo Hyun)
1988年2月16日生まれ。韓国出身。「ドリームハイ」(2011年)などで注目を集め、「太陽を抱く月」(12年)でブレーク。「星から来たあなた」(13~14年)や「プロデューサー」(15年)でも、「涙の女王」の脚本家であるパク・ジウンと組んでいる。映画主演作には「シークレット・ミッション」(13年)など。

【番組情報】

Netflixシリーズ「涙の女王」(全16話)
独占配信中

文/渡邉ひかる

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