『アンメット』米田孝プロデューサーがラストシーンに込めた思い 続編の可能性は?

杉咲花主演ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系/以下、『アンメット』)の最終回が、6月24日に放送された。本インタビューでは、『アンメット』を成功に導いた米田孝プロデューサーに、クランクアップの様子や、最終回のラストシーンで伝えたかったこと、そして続編への期待などをたっぷり語ってもらった。

ーー最終回も素晴らしかったです。キャストのみなさんのクランクアップの様子は記事でも紹介しましたが、米田さんから見ていかがでしたか?

米田孝(以下、米田):みんな感極まっていました。声を詰まらせて涙を流している人がこんなにもたくさんいる現場は初めてでした。連続ドラマって、スケジュール的にもしんどいから、はやく撮影が終わってほしいはずなんですよ。なのに、みんな「もっと続いてほしい」「終わってほしくない」って。なかでも杉咲(花)さんは、「私はあと90話やれます」と言っていましたね。なので、「俺はあと100話やれます」って言い返して。そしたら、「そこまでやれるのは2人だけだから1回終わろう」という話になりました(笑)。

ーーそれだけ素敵な現場だったんですね。

米田:本当に、こんな現場にはなかなか出会えないと思います。まさに総合芸術だったなと。杉咲さんを筆頭に、全員が一丸となっていいものを作るために同じ方向を向けたこと。それが視聴者のみなさんにも伝わっていたんだと思います。X(旧Twitter)でも「本気度を感じる」などというコメントがたくさんあって、すごくうれしかったです。

ーー最終回のラストシーンも、SNS上で話題となっていました。ミヤビ(杉咲花)が目を覚まして、三瓶(若葉竜也)が「分かりますか?」と問いかける。「分かります」と答えるものの、記憶が戻ったのかどうかは分からない。

米田:そうなんですよね。ミヤビがどこまで分かっているかは、視聴者のみなさんの解釈に委ねようと思います。ただ、最終回では“手を握る”というアクションをかなり重点的に描いていました。つまり、仮に記憶を失っていたとしても、ミヤビの心はきっと三瓶を覚えている。これは、『アンメット』が大切にしてきたことなので、伝わっていたらうれしいです。

ーー余白を大切にしてきた『アンメット』らしい終わり方ですよね。前回のインタビューでは、結末が2年半前から決まっていたという話を伺いました。

米田:ラストシーンは最初から決めていたので、第1話の時点で三瓶に「心が覚えているんです」という台詞を言ってもらって。ミヤビが記憶を失っているのか、いないのかは明言しませんが、どちらにせよ脳の病気は完全な回復には届かないことが多い。ただ、それでも何かの希望を得て、次の人生を始めていくということを描きたかったんです。ミヤビにとっての希望は、心が覚えているということ。もしかしたら、また日記をめくるところから1日がスタートする日々が始まるかもしれないけれど、その希望があれば前を向いて生きていける。どこかに希望が感じられる終わり方にしたいなと思っていました。

ーーSNS上では続編を期待する声も多く上がっていました。

米田:続きが作れる話ではあるので、もしやれるチャンスがあれば、誰ひとり欠けることなく集まってもらいたいですよね。もしかしたら、遠くに転勤しているメンバーがいたりするかも……。いや、いないことを願います!

ーーここからは、米田さんのことを詳しく聞かせてください。どういうドラマから影響を受けられたんですか?

米田:一番影響を受けたのは『北の国から』(フジテレビ系)ですね。僕の根底には『北の国から』があります。やっぱり、人間臭さの代表というか。僕は、吉岡秀隆さん演じる純くんが好きなんですけど、もうどうしようもないじゃないですか。でも、そのどうしようもなさが愛おしいというか。そういう人間臭さって、いいよなって。

ーー米田さんはプロデューサーになる前は別の部署にいらしたそうですが、そもそもなぜプロデューサーをやることになったんですか?

米田:元々は報道記者志望としてカンテレに入社したんです。ドラマ班に来たのは34歳のときでした。営業の仕事をやりながらドラマの企画書を出したりもしていて。それでドラマのプロデューサーをやらせてもらうことになりました。「そんなにやる気があるなら、1回やらせてみるか」という感じだったんじゃないかと思います。

ーー『アンメット』の続編に期待しつつも、米田さんが次にどういう作品を手がけられるのかも気になります。

米田:僕のテーマは「人間をどれだけ人間臭く描けるか」なので、ラブストーリーでも医療ものでも学園ものでも、ジャンルはなんでもいいなと思っています。僕の初プロデュース作品でもある『僕たちがやりました』(カンテレ・フジテレビ系)のような、バカみたいなくらいぶっ飛ばしたエンタメど真ん中の作品をやりたい気持ちもありますね。あとは、ダークサイドにスポットを当てるのも好きなので、人間のいやらしい部分を描くのも楽しそうだなと思っています。

(取材=宮川翔/構成=菜本かな)

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